あの日の心地よさは
外に踏み出すと、眩い光が私を包んだ。
緊張とワクワクで一杯だった私を包んだのは、プチプチと音がしそうなほど体に突き刺さる日光だった。
太陽とはこんなにも暖かいものだったのか。
その心地よさは、まるで小学五年生の夏休みに行った、焼けるような屋外プールから冷たい水に飛び込んだ時のようだった。
空を見上げればどこまでも続くような青天井。ああ、その青空の美しいこと。絵に描いてもこんなに綺麗な青は出せないのではないだろうか。神様は実にサプライズ好きで、最も恐ろしいものの裏側に最高の贈り物を置くらしい。
その空に突き刺さるように延びたビルのなんと雄大なことか。これが現代日本である。
服装は人をその気にさせるというが、私は例に漏れず、もし本当に武士がこの日本に来たらどうなるだろうかと考えた。
きっと彼らはこの光景を目にして、『なんと立派な城だろうか』と思うに違いない。そして城をとりに行くのではないだろうか。
広場では既に着替えを済ませたコスプレイヤーさんをカメラマンが取り囲んで撮影をしている。
人人人の大変な賑わいで、コスプレをしている人はその中を歩く。ゲームで見知ったキャラクターもいれば、最近話題のvチューバーも普通にいる。
そんな中では私も普通の人間だった。
安心する一方で、ほんのちょっぴり残念な気持ちもある。ここに来た目的は、同じ考えを持つ人と知り合うためではない。退屈な日常を変えるためなのである。
時計を確認すると11時30分ほどを指していた。
ちょうどお昼時。大手のコーヒーショップにはコスプレイヤーさんたちが長蛇の列をなしている。一方で、隣のコンビニは誰もいなかった。
ひしひしと入ってはいけない雰囲気を感じる。というのも、実はこのイベントでは数十を越える店舗が協力してくださり、コスプレのままの入店が認められていた。しかし、しかしだ。そこには普通のお客さんも利用している。
叫ばれたらどうしよう。
怖くなった私は会場の地図を片手にぶらぶらして時間を潰した。そして、どうやら他のコンビニは道路を渡った先にもあるらしいと気がついた。
出てもいいのか。この会場を?
鎧着たまま?
興味本意で道に向かうと、警備員さんが立っていた。しかもこっちをじっと見ている。近づいてくる私がさぞ怖かったのだろう、彼は腰に下げた警棒を探していた。
勿論、確認をとって外に出る。
警備員さんは私の声を聞いてやっと落ち着いてくれた。
決まった道を通るならばお店に行っていいらしい。
そのコンビニは百メートルほど行って交差点を曲がったところにあった。
私は緊張も合間ってずんずんと歩いていった。
歩道には沢山の一般人がいたが、誰も私の姿に気がつかない。それもそのはずで、皆自分が思うほど他人を見ていないのだった。スマホと地面ばかり見ている。だから決まって気がつかれるのは手の届く範囲に入った時だった。
「ええ!?」
子供が親よりも先に気がつくことが多い。この日は休日ということもあって親子連れが多く、ぎょっとした子供は、子供らしい好奇心で手を振ってくる。勿論振り返す。楽しい。