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2-3.インテバン男爵領

3.



 アジメクは王国のあらゆる補助金の申請方法について熟知していたので、領地に新しい井戸を掘ったり溜池を作る為の補助金や、旱魃でひび割れてしまってガタガタになった道を補修する費用なども王宮から資金を調達する術を余すことなくベスに伝授したし、ただでさえ少ない領地の資金を水増し請求でポケットに入れようと目論む業者や役人を見つけ出してはその金を取り戻す手配をしてくれた。


 セタはベスの下まで届かない領民の声を集めてくれたし、逆にベスの求める人手を集める手伝いをしてくれるなど、ありとあらゆる細かな作業をスムーズにしてくれたのだった。

 このひと月足らずの間に、「川向こうの集落で鍛冶屋の親父が足で古釘を踏みぬいた」だの「インテアン領との境界の向こうっ側に住んでるトウモロコシ農家のランさんが産気づいた!」だのと情報を拾ってきてくれたお陰で、治療院で準備を整えた状態で患者を受け入れることができたのだ。

 他にも、橋桁にはしった裂け目(クラック)の場所、倒壊寸前の大きな朽ち木、夫を亡くして仕事を探す寡婦、逆に妻を亡くして幼い子供の世話に途方に暮れる夫、孤児院の夕食のメニュー、吟遊詩人の新曲等々あらゆることが、セタによって情報として持ち込まれる。

 頼んでいない内容についての情報も多く内容の精査をする必要があるけれど、持ち込まれた情報を基にこちらから行動に移すことは、それまでの事が起こってから慌てて応急処置を施すよりずっと落ち着いて対処できる。

 病院の手伝いだけでなく、領主としての仕事も格段にやり易くなっていった。


 最初こそ、治療院の運営に全く関係ない事までして貰うことを遠慮していたベスだったが、「あの2人は俺が俺の仕事が捗るように雇った人間だ。俺の生活に役立つなら何でも任せて大丈夫だ」というので受け入れることにしたのだが、大正解だった。



 働ける人の数が減っていた。それまで女性や子供が外で工事作業に関わるなど考えられなかったが、ベスはそれも受け入れた。アジメクやセタと働くようになって、女子供であっても事務仕事などいくらでも請け負える仕事はあるのだと判ったからだ。

 なによりこの領地の妻たちは農作業に従事していたのだ。力作業だって男顔負けだったのだ。彼女たちも現金を求めて外に出るようになった。

 孤児院から溢れて街でたむろしていた子供たちや女性の力を結集して、ベスは領地の整備を進めた。


 農作業だけでなく工事による仕事が生まれ、領地で金が動くようになっていく。


 すると、暗かった領民の顔も明るくなっていった。


 雨も定期的に降るようになり、井戸やため池の造成により水の供給は飛躍的に安定した。



 また、セタの提案により、インテアン男爵領に近い農家でしか手がけていなかったトウモロコシの作付けをインテバン男爵領内で広く推奨することにした。

 これは育成期間も短くて済むため、手っ取り早く領民の腹を満たすのに役立ってくれた。

 ただ、トウモロコシ栽培については領内農家では素人同然だったので味がイマイチ悪く取引まではして貰えそうになかった。この地に根付くことはなさそうだ。それでも麦の種まき時期より前に収穫が終わる事、そして乾燥させておけば保存も利くとあって、それなりに続いていくのかもしれない。


 食が満たされることと、いつ倒壊するか判らない橋や穴だらけヒビだらけの道がなくなり、飲み水にも困る生活に対策が施されていくだけでも、領民の生活はこんなに明るくなるのだと、ベスは知った。


 領地に、ベスの領主代行としての力が少しずつ認められていった。





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