狩人の基地・熊狩村
異世界の村、熊狩村に連れてこられてしまった燈志。
そこで出会ったのは・・・
燈志は生まれて初めて檻に入れられ、引き廻される罪人のような屈辱を感じていた。
1時間ほど檻で運ばれると、小さな集落に辿り着いた。土の壁で囲まれた集落の門には「狩專門地 熊狩村」と書いてあった。狩り専門の地・熊狩村と読むのだろうか。
村の大通りを進むと、一際大きな家の前に着いた。
「里長、幸い捕りたん」
「幸?此奴ふぁ人にやーらんや!」
言葉の響きから日本語だとは思うのだが、全くわからない方言を話しているようだった。
「少つぃき前、此奴に覚ゆ娘ふぃとり迷ふぃて来たり。衣緒、此奴を伴ふぇ」
「えい、父君」
脇に控えていたおかっぱの少女、衣緒に来るように手招きされ、奥の座敷牢のような小屋へ案内された。
小屋に入ると、そこには長髪の少女がいた。
「はじめ・・・まして」
「は、はじめまして!?」
「驚きましたか?」
「そ、そりゃそうだろ?いきなり訳の分からない土地に飛ばされて、訳の分からない言葉を聞かされて、それでこの小屋でいきなり知ってる言葉が聞こえてきたんだから!」
「まあまあ落ち着いてください。慣れないのはわたしも同じですから」
「まあな。ところで、名前は何と言うんだ?」
「瑠音よ。あなたは?」
「燈志だ。好きに呼んでくれ」
「はい…」
「燈志くん、ここがどこなのかわかる?」
「どこって…わかるわけがないだろう!」
「ここは… 別葦原よ」
「こ、別葦原?」
「そう、わたしの家系で古くからあると教えられてきたもう一つの日本よ」
「そんなものがあるのか…」
「あなたもここに来たということは、何かのお導きかも知れないわ」
「そ、そんなこと言われても…」
「ここに来た以上、あなたにも旅について来てもらうわ。明日、衣緒ちゃんとそのお兄さん、通門さんが旅に出るみたいだから、何とか燈志くんも同行させてもらえないか頼んでみる」
「そ、そんな…」
「わたしたちは、行かねばならないのです」
かなり強い口調で返されたので、何も言い返せなかった。
翌日、部屋から出るともう3人の若者が旅支度を終えて立っていた。
「燈志、いざ来よ! 汝も行きてよしとぞなりけり!!」
長髪の青年が叫ぶように言った。
何を言っているかは全くわからなかったが、ついて来ていいということだと解釈して、一行に合流した。
言葉が通じないのにどうすればいいのか、不安に感じながら。