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妖精の子守唄  作者: のく太
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妖精の子守唄

 まるで深い湖に沈んでいくようだった……

 光もなく、真っ暗闇の中で私は流れに身を任せ、沈んでいった。

 昼も夜も区別がない世界は、ひどく静かなところだった。

 耳が痛くなるほどの静寂に、眠ってしまえれば、どんなに楽だったろうか……

 私を呼ぶ声が脳裏に響き渡る。それが幻聴であることはわかっていた。

 それでも、それでも私は手を伸ばさずにはいられなかた。


「ローディ?」

 困惑したような声は、私が知っているその声とは全くの別物だった。

 だが、それでもずっと、待ち焦がれていた声。

「……随分大きくなったな」

 その姿を見て、思わず涙ぐむ。

 ペイジがフレデリアを揺する。

 重たい瞼を上げたフレデリアは、言葉より先に涙を流した。

「大きくなっても、泣き虫は変わらないな」

「ローディのせいだもん」

 顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくるフレデリアのもとに若草色の髪の毛をした少女が駆け寄った。

「フレデリアさん……!」

 あまりの凄惨な姿に息を飲む。

「二人のことを、お願いできるか?」

 私は黒髪の少年に声をかけた。

 少年が頷いたのを見て、私はグラウスに向き直る。

「お前は、確かに殺したはずだぞ!」

 怯えたような眼差しに、思わず失笑する。

「そうだ。私は確かに死んだ。紫蝶(しちょう)に命を吸われてな」

 死の直前、グラウスが斧を構えるのが見えた。この男は、私の死体を辱めたのであろう。

「あなたの手で死ねなくて、残念だったな」

 侮蔑を込めて言った。

「ならば、今のお前はなんだ?いや、そもそもなぜ生きている!」

 私は胸を押さえた。鳴り響くはずの命の鼓動は聞こえない。「今の私は、妖精の輪環(フェアリーサークル)の一部だ」

 黒鞘に収められた剣を拾う。

 ペイジが持ち出したのであろう、この剣もまた、私を追ってきたのであろうか。

「ならば、お前は私の禁呪の事象というわけか」

 グラウスが吠えた。「そのガキどもを殺せ!お前の手にかかって死ぬなら本望だろう」

「……どこまでも哀れな男だな」

 私は剣に問いかけた。

「まだ私のことを、認めてくれるか?」

 手のひらに伝わる、封剣の意思に私は感謝の意を述べ、抜剣した。

「……きれい」

 背後から感嘆の声が上がる。

 淡いエメラルドグリーンの透き通る刃。光を浴びてキラキラと宝石の輝きを見せる。

「なん、だ、その剣は……!」

 グラウスが動揺を隠さずに叫んだ。

 封剣から飛び交うのは、純白の蝶。

 円を描くように、世界を染める。

「行くぞ、エアリーアス」




 決着は一振りでついた。

 もともと半壊していた甲冑は完全に破壊され、身にまとっていたグラウスの体にも裂線が走っていた。

「馬鹿な……」信じられないようにグラウスが膝をついた。「わかっているのか?術師である私を殺せば、妖精の輪環(フェアリーサークル)は維持できないぞ!そうなれば、お前も……」

「だからどうした」

 封剣を鞘に収められたクローディアは、呆れたように言う。

「まあ、あなたには感謝するぞ。こうしてまた妹弟(きょうだい)と会うことができたのだから」

 微笑むと、封剣をクロナに手渡した。

「この剣を、シルヴィア王女に渡してくれないか?」

 剣を受け取ったクロナは、それを見ながら呟いた。「どうして、俺に?」

「この剣の、エアリーアスの意思だ」

 微笑むと、そっとその胸を押した。

「さあ、行きなさい。ここはもう崩れる」

 シスリナが驚いた表情を浮かべた。

「みんなで逃げましょう!」

 シスリナの言葉に、フレデリアが首を振る。

「私たちは、もういいのよ」

「諦めるのかよ!ずっと探していたんだろ!」

「だからだ」

 クロナの言葉にペイジが応える。

「俺たちの長い旅は、終わったんだよ」

 フレデリアが笑いかけた。

「シスリナちゃん、あなたは私のようになっちゃダメよ」

「それは、どう言う意味ですか?」

 寂しそうに微笑むだけで、フレデリアは答えなかった。

 紫の蝶が次々と落ちてくる。まるで花びらが舞い落ちるように……

「行きなさい。さあ、早く」

 クローディアの言葉は有無を言わさない強さがあった。

 歯を食いしばりながら、クロナはシスリナの手を引いて歩き出した。

 何度も振り返りながら、だか、しっかりと前をーー




 私は二人をあの日の、幼いペイジとフレデリアとを重ねて見ていた。

 行かないでほしい……

 もう届くことがない手を伸ばし、その姿を追い求めたあの日……

「……行っちゃったね」

「ああ」

 フレデリアの言葉にペイジが応える。

「でも私は寂しくないよ」

 フレデリアが微笑むと、私に寄り添ってくる。

「俺もだよ……だけど、疲れた」

 反対側からペイジが私に寄りかかってくる。

「まったく、しょうがない子たちだな」

 そんな二人に私は笑いかけた。

「……こうしていると、初めてローディに会った時みたい」

 ペイジが笑った。

「ローディの家にまともな毛布がなくて、三人で震えながら抱き合った日のこと?」

「仕方がないだろう。あのままでいたら、みんな風邪をひいていた」

 咎めるような私の声に二人が笑う。

 私も笑った。久しぶりの、本当の笑顔になれた気がする。

「……やっと会えたのに、すごく眠いや」

 フレデリアが呟いた。「ごめん、ペイジ……私、もう……」

「ああ」

 ペイジが頷くと、フレデリアの手を握りしめた。

「ねぇローディ、お歌をうたって」

 消え失せそうな声。私も二人の手を握りしめた。

「なんの歌がいい?」

「……初めての夜、眠れなくて泣いていた時に歌ってくれたのがいい」

「……わかった」

 私はあの日を思い出しながら歌い始めた。

 それは優しい、優しい妖精の子守唄(フェアリーテイル)

 二人が眠りにつくまで歌い続けるのだった……

最後まで駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

後半急ぎ足で書いたため、かなりと言うか、まあ、最初から最後までグダグダな文書でした。

こんなたちの悪い作文に付き合わせてすみませんでした!

この話はこれで終わりですが、落ち着いたら本編で空気だったクロナを主人公に続きを書こうと思っています。

こんなのでよければ、またお付き合いください。

ありがとうございました。

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