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妖精の子守唄  作者: のく太
18/22

再会の地下通路 1

「ローディ!」

 追い求めた女性の影に、フレデリアが手を伸ばした。

 その手が届こうとした瞬間、女性は光の中に溶け込んでしまった。

「待って! 置いていかないでーー」

 閃光が弾けた。四人は元のいた廃屋の近くに座っていた。

「ローディ……」

 あれは幻影だったのだろうか。だか、たしかにクローディアはそこにいたのだ。

 ようやく見つけた手がかりに、フレデリアは自身を強く抱きしめた。

「……悪かった」

 ペイジが呟くように謝罪した。「俺は、諦めていたんだ。もう、二度と会えないと思ってしまったから」

 俯くペイジに、フレデリアは吐き捨てるように言った。

「ローディに言いつけてやるから。ペイジってばローディとの約束破って、遠い遠ーい国で一人で第二の人生送るつもりだったって」

「お前なぁ……」

「なによ。本当のことでしょ」

 フレデリアが顔を背ける。

 クロナは顔を引きつらせながら話題を変えることにした。

「この封剣ってやつが、なんかすげぇのはわかった。それで、もう一本の方は?」

 置かれたままの剣を指差す。

「ああ、これか?」ペイジはおもむろに剣を抜いた。「普通の剣だ」

「え、普通の剣なんですか?」

 あまりにもあっさりした応えに、シスリナが聞き返した。

 ペイジは頷くと、愛用の剣に触れた。

「こいつはもう限界だからな」

 その言葉にフレデリアは目の色を変えた。「ちょっと、限界ってどういうことよ」

 ペイジから剣を奪い取ると、抜剣する。

 ボロボロに刃毀れした剣を見て、悲鳴を上げた。

「私が選んであげた剣……どうして大事に使ってくれなかったの!?」

 剣を振り被ったフレデリアを、シスリナとクロナが慌てて止めるのだった……


 翌日。

 一向に起きる気配のないクロナを叩き起こすと、四人は朝靄(あさもや)に紛れて行動を開始した。目的地が遠目に見えてきた頃、フレデリアは首を傾げた。

「あんな壁みたいなの、あったっけ?」

 かつて王都として栄えていた場所は、変わり果てた姿と化していた。

 幼心にも美しいと感じていた街並みは、そのほとんどが崩れ、倒壊したままの建物ばかりが目についた。

 道端には建物の一部だったであろう石や柱が手付かずのままゴロゴロと転がっている。

 なによりも、あるべきはずの城がなかった。

 国の象徴は、侵略してきた帝国によって無残にも破壊され尽くされたらしい。

「この国にはなんの思い入れもないけど、流石に不憫ね」

 フレデリアがつまらなそうに呟いた。

 城の跡地にそびえ立つ、巨大な壁。帝国はここを関所として、隣国との境界としているようだった。

「この壁はどこまで続いているのでしょう」

 圧巻されたシスリナが思わず口にする。

 少なくとも、見える範囲全て壁に覆われているようだった。

「これは、侵入すること乗り越えるのも難しいな」

 巨大な壁もそうだが、妖精の兵士が目を光らせている。少しでも怪しい動きをすれば、すぐに駆けつけてくるだろう。

「こっちだ」

 目深にフードをかぶり直したペイジが手招きをする。

 他の三人もまた、フードをかぶりなおすと、その後を追って歩き出すのだった。




 崩壊した建物の迷路をペイジは迷いのない足取りで歩く。やがて、比較的原型を留めた建物の前に立ち止まった。

 壊れた吊るし看板が風に揺れている。

「ここはお店、ですか?」

 シスリナの問いに、フレデリアは人差し指を口に当てた。

 ペイジが複雑音頭をとるようにドアを叩いた。

 ややあってから、建物内から「入れ」と、野太く、低い声が聞こえてきた。

 忍び込むように建物の中に入る。

 真っ暗な室内。ひんやりとした空気が肌を刺す。

「ペイジか……随分と久しいじゃないか」

 暗闇の中から声が響く。しがれた声だった。

「ご無沙汰しています」

 ペイジが深く礼をする。

「お久しぶりです。師匠」

 隣に立ったフレデリアが笑う。「みんな相変わらず辛気臭い場所に住んでますね」

「お前は変わらないな」

 フレデリアの暴言に今度はどこか嬉しそうな声が返ってくる。

「お前たちから訪ねてきたということは、厄介ごとか?」

 深い闇の中の声は、どこか楽しげな響きがあった。

「城の地下に隠し通路があるはずです」

「ああ、そんなものもあったな。妖精の輪環(フェアリーサークル)の前ではなんの役にも立たなかったが」

 低い声。闇の中に複数の人がいるようだった。

 微かに衣摺れの音。「外に出て、三つ目の角を曲がれ。その近くの井戸から通じている」

「ありがとうございます」

 ペイジとフレデリアが礼を言った。

「気をつけろ」野太い声。「地下には亡霊が住み着いている」

「亡霊?」

「甲冑で身を包んだ亡霊だ。帝国の兵士が幾度か討伐に向かい、戻ってこない」

「……あいつか」

 ペイジは苦々しく呟いた。

 森で巻き込まれた妖精の輪環。その中で襲いかかってきた騎士のことだとペイジは気がついた。

 もう一度礼を言うと、四人は外へ出た。

 暗闇の中にいたためか、やけに陽の光が眩しく感じる。

「人に見せられる姿じゃないのよ」

 何か言いたげなクロナとシスリナにフレデリアが言う。

「……行くぞ」

 ペイジが教えてもらった井戸へと向かい、歩き始めるのだった。

駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

またよろしくお願いします!

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