シスリナ
私の膝の上でフレデリアが寝息を立てていた
泣き疲れて眠った妖精の顔を、私は複雑な思いで眺めていた。
「何かあったのか?」
探し物が終わったのか、倒壊した家屋からクロナが戻ってきた。
泥だらけになった顔。私はフレデリアを起こさないようにゆっくりとした動きで布を取り出すとそれを手渡した。
「悲しい妖精もいるんだなぁと思ったの」
クロナが驚いたような表情を浮かべた。
「……お前からそんな言葉を聞くと思わなかった」
隣に座る。「まあ、この人は俺たちの知っている妖精連中とは少し違うな」
ペイジもまた、妖精に恨みを持っていてもおかしくないはずたった。
だが彼は私と違い、それを表に出すことは少なかった。
私は再び眠るフレデリアを眺めた。
サラサラとした赤い髪に同色の綺麗な瞳。あえて気にしないようにしていたが、柔らかい曲線を描く肢体に、私は少し嫉妬をしているのだと思う。
成熟した女性の容姿……だが、心の成長は両親を手にかけたその日から止まってしまったのではないだろうか。
「大丈夫か?」
黙ったままの私にクロナがおずおずと声をかけてくる。
私が妖精のことを案じることに、違和感を感じているのだろう。
「うん」
私はフレデリアの寝顔を見続けながら呟いた。「妖精のことは許すつもりはないよ。でもこの人は、嫌いになれそうにないの。……まあ、今のところ、だけどね」
私の言葉にクロナは苦笑で応えるのだった。
ペイジが私たちの元にきたのは、それからややあってからのことだ。
日は既に傾きそうだった。おそらく、今日はここで一晩過ごすことになるだろう。
眠り続けるフレデリアを見て、ペイジは少し困ったような表情を浮かべた。
「迷惑をかけたな」
「そんなことないです」
首を振る私に、ペイジは少し意外そうな視線を向けた。
「フレデリアさんから、ペイジさんのことを聞きました」
あからさまに嫌そうに顔をしかめたペイジに、私は笑いかける。
「そんな顔しなくてもいいじゃないですか」
「……人に聞かせるような話ではないだろう」
「そう、ですね」私は素直な気持ちで応えた。「でも、私はあなたたちのように、強くなりたいです」
そっと目を伏せる。
私はこの二人の事が嫌いになれそうになかった。
フレデリアとペイジ。歪で、悲しい過去を持つ二人。
だが、二人を結びつける強い絆を知り、私はフレデリアに敵意を向けていたことを恥じた。
隣で気味が悪いものを見るような視線を向けるクロナに、私は大人気なく舌を出してやった。
フレデリアが私なら、そうしたと思ったから。
ペイジが笑った。
クロナは一瞬面食らった表情をしたが、苦々しく笑った。
私は心が、軽くなった気がした。
ペイジとフレデリアの事が聞けたから。
彼らもまた、困難を乗り越え、苦しみに足掻いてることを知ったから。
我ながら酷いと思う。だけど、彼らとなら、一緒にいれたら、私も強くなれる気がした。
……そして、クロナは気がついてないだろう。
だから、私はこのことを心の奥底にしまいこんでしまおうと思う。
ペイジという人間が、既に死んでいるという事実を……
駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
もう4、5話で終わりです。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




