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妖精の子守唄  作者: のく太
15/22

思い出の地 4

「大丈夫ですか?」

 シスリナがフレデリアに声をかけた。

「……大丈夫じゃない」

 生気のない表情でフレデリアが応えた。

 崩壊した家の一部で、ペイジとクロナが何かを探しているようだった。フレデリアの瞳は、その姿を映すことなくただただ虚空を彷徨(さまよ)っていた。

「わかっていたの。ここはもう、私たちの居場所じゃないんだってことが」

 だから、来たくなかった。

 ここにはもう、幸せだった頃の思い出すら風化してしまっている。

「あの人はたまに、強情なところがあるの。私の言うこと、聞いてくれない時がある」

 フレデリアの表情のない瞳から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。

 顎を伝い、服を濡らす涙をそのままに、フレデリアはペイジを指さした。

「ペイジね、あれは私の家の奴隷だったの」

 突然の告白に、シスリナは息を飲んだ。

「私の家は……まあ、それなりに裕福でね。帝国の中にあったの――」

 当時、帝国内では人間を奴隷にすることが一種のステータスとなっていた。

 奇しくも戦争のさなか。奴隷にする人間なんぞ、掃いて捨てるほどいた。

 フレデリアの両親もまた、例外なく人間を奴隷として扱っていたのだった。

 それが残酷な行為であることを、幼いフレデリアは理解していなかった……

「ペイジは戦争孤児でね。まあ彼の両親は、私の父が殺したんだけど」

 絶句するシスリナにフレデリアは苦笑いを浮かべた。

「戦争だったからね」

 シスリナは絞り出すように呟いた。

「戦争、の一言で済ましていいのですか」

「そうね。でも、戦争の意味も、ペイジの憎しみも悲しみも、あの時の私には理解できなかったのよ」

 それどころか幼いフレデリアは、傷つき、憔悴しているペイジに一目で恋に落ちていた。

 理由をつけてはペイジを連れまわし、命令し、従わせ、一緒の時を過ごした。

 幸せだった、と思う。少なくともあの時は。

 ペイジもまた、親の仇であるフレデリアに徐々に心を開いていったのだ。

「でもね、私の両親はそれを快く思わなかったの」

 人間と妖精が対立する世界で、幼いとはいえ、自分の娘が人間に恋をしたとなると気が気でないだろう。

 そして、フレデリアとペイジは引き離された。

「いっぱい、いっぱい泣いて、怒って、苦しんで……気が付いたら、私は炎の中にいたの」

 感情による魔力の暴走--シスリナは思わず自分の腕を抱いた。

「おかしいでしょ。炎の妖精が、火にまかれて苦しんで死んでいくの。私はね、灰になるまで焼かれていく両親を笑いながら見ていたの」

 両親を殺し、住まいを焼いたフレデリアを連れ出したのは、ほかでもないペイジだった。

 炎の中で笑うフレデリアの手を引き、いたるところに火傷を負いながら、それでも手を放すことはなかった。

「私の父親、あれでも戦争で貢献していたからね。死にもの狂いで追われてね」

 暗い笑みを浮かべる。「あの時、捕まって、殺されていればこんな思い、しなくてもよかったのに」

 子供の足だ。逃げるにも限界があった。

 右も左もわからない森を抜け、山を登り、追いかけてくる大人たちの手から抜け出そうとして、崖から落ちた――

「気が付いたらローディ……クローディアに抱かれていてね。それこそ有無を言わせずにここで一緒に暮らすこととなったの」

 だから、とフレデリアが続ける。

「ここは、私たちの思い出の地。辛いことも、悲しいことも楽しいことも、いろいろなことがいっぱいあったけど、みんなで笑って乗り越えてきたの。あの、きれいな思い出のままでいたかった――」

 こらえきれず、声を上げて泣き崩れたフレデリアを、シスリナは複雑な感情で抱きしめるのだった……

駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。

いよいよ新生活に片足突っ込みました・・・なんとか忙しくなる前に完結させたいです(´;ω;`)

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