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妖精の子守唄  作者: のく太
13/22

思い出の地 2

 空が白み始めた。

 鳥の鳴き声。朝露にもゆる草木。森のほうからは霧が出ている。

 微かな声を上げて目を開いたのはシスリナだった。

 寝ぼけ眼のまま、手櫛で髪を整える。

 焚き火に木をくべていたペイジの姿を見て、驚きのあまり目を見開いた。

「ぺ、ペイジさん!」

「おはよう。まだ寝てていいんだぞ」

 シスリナは慌てた様子で身なりを整えると、ペイジに向き合って口を開いた。

「習慣が抜けなくて……いつも朝は早いんです」

 そうか。と、ペイジは気の無い返事で応えた。シスリナの事をなどまるでいないかのように振舞う。

 クロナはまだ深い眠りについているようだ。

 シスリナの言う習慣とやらは、クロナとは関係ないのだろうか。

 そんなことを考えていると、シスリナが顔を覗き込んで聞いた。

「ペイジさんは休んだのですか?」

「ああ」

「どうして嘘をつくんですか?」

 シスリナの言葉に、ペイジは苦笑しつつ顔を上げた。

「嘘なんてついてーー」

「ついてます」

 シスリナの目は真剣そのものだった。

 まっすぐにペイジを見つめる鳶色の瞳。宝石のように澄んだ色をしたそれは、ペイジの一切の挙動を見逃さないだろう。

「本当のことを教えてもらえませんか? 場合によっては、私はフレデリアさんを許せない」

 怒気を孕んだ声音。ペイジの顔からも苦笑が消える。

「シスリナ、君は何か、勘違いをしているのじゃないか?」

「そうかもしれません。でも、私は妖精が信じられないのです」

 そこにフレデリアに懐いているような素振りを見せていたシスリナはいない。

「あなたは、フレデリアさんに……」

「シスリナ」

 ペイジの静かな声音に、シスリナは我に返ったような表情となった。

「すみません、私……」

 目を泳がせ、俯く。「顔を洗ってきます」

 ふらふらと立ち上がると、そのままペイジと顔を合わせる事なく背を向けて歩き出した。

「許せない、か」

 シスリナの思いもよらぬ強い言葉に、ペイジは思わず呟いた。


 シスリナの後ろ姿が見えなくなるのを確認して、ペイジは苦々しく口を開いた。

「それで、いつまでそうしているんだ?」

 ややあってからもぞもぞと動く影。

「気づいていたの?」

 ペイジは大げさなため息を吐いた。「いつから聞いていた?」

 身を起こしたフレデリアはとぼけた表情で、「ぺ、ペイジさん!から」

「最初からじゃないか」

 苦虫を潰した表情になる。

「あの子、勘がいいわね」

 どこか楽しそうなフレデリア。「昨日、あなたの身体に触れたからかな?」

 死にかけたペイジを治療した時のことだろうか。意識を失っていたペイジにはわからなかった。

「妖精が嫌いみたいだし、帝国の兵士に追われてるのもそこあたりが理由かな?」

「フレア」ペイジが静かに言った。「あんまり深入りするなよ」

「それはあなたじゃないの?」

 悪戯な表情を浮かべ「私たちは出会うべきしてであったのだから」

 それは昨晩、クロナが呟いた言葉だ。

「……趣味が悪いぞ」

 苦言にフレデリアは幾分真面目な表情となった。ペイジの隣に座ると、その頬に両手を添える。

「あなたはこの子たちを、私たちと重ねているのよ」

「そんなことはない」

 くすくすとフレデリアが笑う。

「シスリナちゃんへの態度、まるで私と初めて会った時のようだったわ」

 フレデリアの顔が近づく。「忘れないで。あなたは、私のものよ」

 そっと、唇が重なる。

 ペイジは困った表情を浮かべた。

「シスリナには見せられないな」

「あの子はまだ子供だからね」

 悪戯っぽく言うフレデリア。

 ペイジの首に腕を回し、今度は深く唇を合わせるのだった。

駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます。

この話も後半に差し掛かってきました。今月中に完結・・・したいですね・・・不定期投稿になりますが、頑張ります。

最後までお付き合いただけるどうれしいです。

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