#7 追われた後の追跡調査
こんにちは!
明日葉晴です!
自分の立場が逆転してることって、意外にもよくあると思うんです。
自分が怒っていたはずなのに、いつの間にか怒られていたり。
結構理不尽ですよね。
では、本編をどうぞ!
前回のあらすじ
幼馴染に責められる。色んな人に追われる。
〇
追っ手から逃げ切った俺は、とりあえずカフェで休息を取ることにした。
さて、今日はなんとか逃げれたけど、明日からはどうするか…
明日からの包囲網はもう少し厳しくなることが予想出来る。もしかすると、教室に入った瞬間に取り囲まれる危険もある。
明日は遅刻しよう…
そう心に決め、ひとまず休息に入る。だがしかし、俺は休んでられない事態を目にしてしまう。
なんで…アイツが…?
俺が目にしたのは水瀬が美人なお姉さんと二人で一緒に歩いている姿だった。その姿は実にお似合いという言葉が合っていて、とても仲が良さそうだった。
桜を諦めて他の女の人との仲を進展させる気になった…?いやでも、昨日の今日だぞ…?
考えても仕方ないからとりあえず店を出て、気付かれないように後を追う。
会話は…聞こえないか…
二人は大通りを歩いていく。仲の良さそうな二人をこそこそと付いて行く俺。傍から見ると超怪しいのであろう、すれ違う人たちが俺のことを怪訝そうな表情で見ていく。
ヤバい…俺すっげぇ怪しまれている…?
まぁ客観的に見れば、美人なお姉さんを追っているストーカーだ。無理はない。
「ちょっとアンタ、何してんのよ?」
「いやあのっ、俺は別に怪しいものじゃっ!」
ついに声を掛けられたことに驚き、とっさに怪しい人そのものの発言をする。声の方を見ると、そこには桜が立っていた。
「なんだ、桜か。焦ったじゃないか」
「なんだ、じゃないわよ。アンタ通報ものの行動だったわよ?」
明らかに軽蔑した目で俺のことを見る桜。だがおそらく、知り合いだからこそ声を掛けて止めようとしたのだろう。ホントに律儀というかお節介というか。
「まぁ落ち着け。これはお前の為でもあるんだぞ?」
「美人な人へのストーカー行為の、どこが私の為になるのよ」
どうやら、俺が追っていた相手は片方しか見てなかったらしい。
「はぁ…よく見ろ。美人の隣にいる奴を」
「はぁ?まぁいいけど……カッコいい人ね…って、水瀬君っ!?」
「声が大きい!…が、まぁそういうことだ」
「どういうことよ!?あの人が水瀬君の仲良くなりたい人!?」
いや、昨日聞いた限りじゃお前なんだがな…。俺にもわからん。
「知らん。知るために追ってんだよ」
「早く言いなさいよ!ほら、ぼさっとしないでさっさと追うわよ!」
理不尽だ…
こうして尾行のメンバーは二人になり、後を追った。水瀬達は特にこちらに気付くことなく、歩いて行く。やがて住宅街に入り、辺りに人は減ってきた。ここからはさらに尾行が難しくなるだろう。が。
あれ…?こっちって…
二人を追ううちにやがて見覚えのある所を歩き始めた。そして、二人は同じ家にすんなりと入っていく。俺は見知った家に入ったことで状況が読めたが、全く見覚えのないであろう桜は、二人が同じ家にすんなり入ったということに取り乱した。おかげで俺は一気に冷静になることができた。
「ちょっと!水瀬君達、普通に同じ家に入っていったわよ!?」
「あぁそうだな」
「も、もしかして…二人はそういう関係…?」
「そういう関係とは?」
「その…同棲するような…」
「まぁそうだろうな」
「も、もしかして…その…もう深い仲に」
「あー…まぁ繋がりは深いだろうな」
「つ、繋がりっ!?」
よし、そろそろ落ち着いてもらおう。コイツいつからこんなに妄想が激しくなったんだ?
「落ち着け」
「落ち着いてられないわよっ!私が告白する以前の問題じゃないっ!」
「だから落ち着けって。俺が確かめて来てやるから」
「そうよ、行きなさい!…って何言ってんのよ!二人の愛の巣に!」
「いや、お前が何言ってんだよ」
もう面倒だから桜を無視して二人の入った家に向かう。
「ワフッ!」
「よしよし。今日もモフモフだな」
「ワフゥ…」
もうすっかり懐かれた白モフを撫で、インターフォンを押す。何気にちゃんと訪問するのは初めてだな。
「ちょっと!」
桜が遅れてやってきて俺を連れ去ろうとする。しかし、時すでに遅く、玄関の扉が開かれた。
「どちら様…って英治?それに…なんで…桜さんまで?」
お、桜が居たことでちょっと動揺したな?
「よぉ」
「……ご、ごめんね?」
いつも余裕そうな水瀬がちょっと動揺したのを面白がりつつ挨拶をした。一方桜は気まずそうに顔を逸らす。
「えーっと…何か用かな?遊びに来てくれたなら、嬉しいは嬉しいけど…」
「いや、実はな…」
「な、なんでもない!なんでもない!そう!コイツがそこのワンちゃんを撮りたいって言って、飼い主に許可取るとか言って、インターフォン押したのよ!まさか水瀬君がいるなんて思わなかったなぁ!」
「いや、英治は俺の家知ってるよね」
「あぁ知ってる」
「アンタっ!…って、え?あれ?」
いや、お前も俺が水瀬の家わかるの知ってるはずだろ。今は言わないけど。
「ここ…水瀬君の家なの?」
「そうだよ」
「え?じゃあ…さっきの人は…?」
「さっき…?」
水瀬が疑問を口にした瞬間、奥の方から足音が聞こえてきた。
「京弥、お客さんなの?ならすぐに上げなさい」
凛とした声と共に、玄関からさっきの美人なお姉さんが現れた。お姉さんは俺達を見ると、一瞬驚いた表情をしたが、すぐに笑顔になった。笑顔も素敵だ。
「あら、お友達?こんにちは。珍しいわね、京弥がお友達を呼ぶなんて。この間言ってたの子?」
「そうだよ。こっちの彼がね」
「あらそうなの。いらっしゃい。上がって、ゆっくりしていってね。そっちのお嬢さんも」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「あ、は、はい」
「ふふ。後でお茶を持っていくわ」
「リビングに通すから、お願い」
「わかったわ」
「ありがとう。母さん」
え?
「「か…」」
「か?」
「「母さんっ!?」」
若っ!!
見事に桜とハモった。姉とかと思っていたが、まさか母親とは思わなかった。衝撃の若さだ。モデルっていうのも納得だ。そして、身内とは予想もしてなかったであろう桜も、もちろんかなり驚いた様子だった。
「あらあら。ふふふ」
実に愉快そうに身を翻し、水瀬母は家に入って行った。そして、衝撃が収まらぬまま、俺達も少し遅れて家に上がっていくのだった。
○○
「あははははっ!!」
リビングに上がりお茶を貰った後、俺はここに来た経緯を二人に話した。水瀬母は何故か俺達と一緒に寛いでいる。
「そんなに笑うことか?」
「それは笑うよ。だって、母さんだし」
「いや、見えねぇから」
「まぁ、俺は父さん似だからね」
「そうじゃねぇよ」
全くもってそうではない。
「桜、お前もなんか言えよ」
「えっ?えっと…お似合いです…」
コイツ、いきなりポンコツになったな。
いきなり話し掛けた俺も悪いが、ずっと黙ってそわそわしてたコイツも悪いと思う。誰も何も言わないが、凄い不自然だ。
「あら、ありがとう。どうする京弥。お似合いらしいわよ?」
「母さん、悪ノリは良くないよ」
「あらら。振られちゃった」
水瀬母はだいぶ凄い。冗談なんだろうが、見た目が若いから全く違和感がない。お陰で、隣で桜がだいぶあたふたしてて面白い。
「なら、英治君…だっけ?私と付き合っちゃう?」
「母さん!?」
おっと、こっちに来たか。この人初対面でぐいぐいくるな。やっぱり親子だ。
「いいですね。人妻ってのも危ない感じで」
「英治!?」
「ちょっ!アンタ!」
水瀬と桜に同時に止められた。驚きのあまり、ようやく桜は正常に戻ったようだ。
「冗談だ。ですよね?」
「あら、私は違うわよ?」
おっとぉ…?
予想外の発言に、流石の俺も驚いた。その表情に満足したのか、水瀬母はクスクスと笑う。
「ふふっ。冗談よ。英治君を盗ったら、そちらのかわいい彼女さんに怒られちゃうもの」
「「違います」」
「あら、そうなの?」
どうやら桜を、俺の彼女と勘違いしてたらしい。
「私はこんなヤツの彼女じゃないです。あり得ないです」
「そこまで言われると、俺も流石に傷付くんだが」
「キモいわ」
ちょっと泣きたくなってきた。
「ふふふ。でも仲良しなのね。京弥ともそうやって仲良くしてくれると嬉しいわ」
こんなやり取りでも、仲良しに見えたらしい。不思議な感性を持ってる人なんだろう。
「ホントにね。俺も羨ましいよ」
どうやら不思議な感性を持っているのは息子も同じだったようだ。やっぱり親子なんだな。
「えっ!いや、そのっ!」
「嫌…かな…?」
コイツ、本当に仲良くなりたいからこうしてるのか、それとも普段からこうなのだろうか。後者だとしたらかなり罪な奴だ。そう思うくらいにこちらの罪悪感を煽るような表情をしてきた。
「いや、えっと…嫌じゃ、ないよ…」
こっちはこっちで顔を真っ赤にしている。見ている方が恥ずかしくなってくる。というか、桜が本気で照れているのは初めて見た。
「ありがとう。英治は?」
「俺か?あー…昨日の話保留にしてたな。まぁ好きにすれば?」
「本当かい!?」
なんで俺の方が食い付きいいんだよ!ほらぁ、隣がめっちゃ睨んでるじゃん!
「ただし、俺は明日、質問責めに合うのは嫌だ。だからなんとかしとけ」
「わかった!」
何となく嫌な気がするけど、まぁ面倒だしもういいか。
「京弥良かったわね。素敵なお友達が出来て」
「あぁ、本当にいい人達だよ」
本人の目の前で言わないで欲しいんだが。
そんなことより、俺はずっと気になっていたことを聞くことにした。
「あの、失礼を承知で聞きますが、いくつ何ですか?」
「ちょっと!本当に失礼よ!?」
「あら、いいのよ。次で三十七かしら」
見えなっ!
「見えないですね」
「それは老けてるように見えるってことかしら?」
「いや、断然逆です」
水瀬母が老けてると言うなら、この世のほとんどがおばあちゃんに見えることになるだろうな。
「あらそう?ありがとう」
「やっぱり、モデルをしてるから何か特別なことでもしてるんですか?」
「そうね…普通に生活してるだけね」
いや、普通に生活してそれは、もう反則級だぞ…
そう思ったのは俺だけじゃないようで、黙ってた桜も驚いた様子で水瀬母を見た。
「ふ、普通にしててそんな美人で若く見えるなんて…ちょっと羨ましいです」
「あら、私には桜ちゃんは美人に見えるわよ?」
「あ、ありがとうございます…」
確かに桜は美人だ。が、水瀬母は群を抜いてる。
「モデルで写真取られる時は何を意識してますか?」
「取材かしら?お金は出る?」
がめつい!
「えっと…そんなつもりじゃ…」
「ふふっ。冗談よ。何かを意識してるわけじゃないわ。カメラマンさんの指示を良く聞いてるだけね」
「じゃあ緊張とかは?」
「今でもするわ。カメラ越しでも、見つめられるのは少し恥ずかしいからね」
「モデルになったきっかけは?」
「スカウトよ。ファッション誌のモデルを頼まれて、それから」
「えーっと…じゃあ…」
俺は水瀬母に聞きたいことを色々聞いていった。実際に撮られる側の人はとても参考になる。
「ありがとうございました。参考になります」
「こんな話で良ければいくらでもいいわよ。いつか英治君が私を撮るのを楽しみにしてるわね」
またさらっと恥ずかしいことを。
「が、頑張ります」
「はい。その時はよろしくね」
その後は、全員で色々雑談をしつつ、のんびりとした時間を過ごして、夕方頃に帰っていった。
7話目を読んで頂き、ありがとうございます!
水瀬君のお母様登場!
登場予定は今のところないですが、お父様もカッコいいです。
美男美女の夫婦っていいですよね。
憧れます。
それでは、これからもお付き合い頂ければ幸いです。