#6 生まれて一番命の危機を感じる日
こんにちは!
明日葉晴です!
人間、危険を感じるとその人の本性が見えると思います。
私は先日、道端でGを見かけた時、一緒にいた友人Aを盾にしました。
では、本編をどうぞ!
前回のあらすじ
両思いらしい。そして一回振られてるらしい。
〇
その日、キャパオーバーになった俺は水瀬の家から帰ることにした。帰り際、好きなことは桜には言わないでくれと釘を刺されて。
「いったい、何がどうなってんだよ…」
結局のところ、何もわからない。一人自分の部屋で考えたが何もわからなかった。
そういや、友達になる件も何も決めなかったな…
「まぁ今の混乱してる頭で考えても何もまとまらないし、とりあえず保留でいいか…」
目下の問題は、現状の拗れてる話をどう解くかだ。状況を整理だけすれば実にシンプル。
「両思い…か。でも互いに一歩引いてるから、互いに気持ちに気付かん。面倒だ。ホント面倒…」
独り言を呟いていると、問題の一人からメッセージが届いた。
丁度いい。聞くのが早い。
『今日の進捗は?』
『お前、水瀬振ったって本当?』
俺のメッセージにすぐ既読が付いた。
……反応なし?
ピンポーン。
「英治ー!翔子ちゃんが来たわよー!」
えぇ…
俺は仕方なく出迎える。
「詳しく聞かせなさい」
「はいはい。上がれば」
桜を部屋に上げ、向かい合う。何故か桜が椅子に座り、俺が床に正座した。
「で?メッセージはどういうこと?」
「どうもこうも、そのままの意味だけど…」
「その意味がわからないの。いったい何を聞いたのよ?」
意味がわからないのは俺も同じなんだがなー…
「あー…アイツが気になる人を探る為に、色々聞いて、流れでその話が出た。お前がアイツを好きなのは言ってないぞ?」
俺は水瀬からも好きな事は言うなと釘を刺されているため、軽く嘘を交えて話した。いっそ洗いざらい話した方が楽な気がするが、約束は守る質だ。
「全く心当たりがないわ…私、水瀬君に告白した覚えなんてないわ…人違いっていう線は?」
「アイツは、俺の幼馴染の、と言った。俺に幼馴染の桜は一人しかいない」
「ならますますわからないわ…アンタ、面倒だからって早く切り上げたくて嘘ついてるんじゃないでしょうね?」
嘘はまぁついてるが…
「アイツは確かにお前に振られたって言った」
「そう…まぁそこまで言うなら信じてあげるわ。じゃあ、いつ振られたかは聞いた?」
「聞いてない」
「はぁ!?使えないわね!一番重要なところじゃない!」
「いやいや!それどころじゃなかったわ!こちとら、キャパオーバーだったんだぞ!?」
「知らないわよ!謎だけ増やして、情報が全然ないじゃないの!」
「なんで俺が怒られなきゃならないんだよ!?」
「そんなの、アンタが役に立たないからでしょ!?」
俺と桜はしばらくぎゃあぎゃあ騒いだ。しばらくするとお互いに頭が冷えたのか、落ち着きを取り戻した。
「はぁ…はぁ…まったく…騒いでもしょうがないわね…とりあえず、アンタはいつ私が振ったのか突き止めなさいよ…」
「あぁ…ここまで来たらとことん付き合う…正直、なんでこうなってんのか気になるしな…」
そう言うと桜は驚いた様子で、目を見開いた。
「珍しいわね。アンタがここまで人に興味を持つのは」
…確かに自分でもそう思う。
「そうだな…乗り掛かった舟ってのもあるし、写真の件もあるしな」
「それだけじゃないの?」
「あー…俺でもよくわからん」
「そ。まぁいいわ。じゃあ私帰るから」
「おう。下まで送る」
そうして、桜は帰って行った。
今日は何ともまぁ…疲れたな…
○○
翌日。結局、色々保留のまま学校に行くことになった。
とりあえず、現状の勘違いの理由か…
問題を一つずつ潰そうと決意して、それでもいつも通りに教室に入る。が、問題は起こったら待ってはくれないもので…
「おっ!英治!おはよう!」
問題の原因であるクソイケメンが俺に名指しであいさつしてきた。水瀬ショック (今命名)の再来である。途端に周囲がざわつき始める。
くっそ…友達の件は保留になったと思ったが、アイツは察しないタイプだったわ…
しかし、ここで前と同じ反応、もしくは無視をしたら、水瀬は裏切られたと思うかもしれない。そうすると、今後に支障が出る。
はぁ…しょうがない…
「おう」
たった一言、挨拶に応じただけで水瀬は嬉しそうにして、そのあとは特に何も言わなかった。
超いい笑顔すんなっ!
その反応だけでさらに周囲はざわめきを増す。もうどうにでもなれ、だ。
タイミングがいいのか、悪いのか。そこで始業のチャイムが鳴り響く。周りは腑に落ちなさそうな顔をしつつ、仕方ないといった様子でそれぞれの席について行ったのだった。
俺も席に着くと、携帯が震え、メッセージを受信した。携帯をポケットから取り出し、SNSを開く。
『昼休み、昨日と同じところ。タイミングはずらして』
メッセージを飛ばした主を見ると、横目でものすっごく睨んでいた。正直超怖いから行きたくはない。が、無視するのはもっと怖い。
『仰せのままに』
仕方ないから了承の旨を伝える。それと同時に俺は一抹の不安を抱えることになった。恐怖は一周回って落ち着きに変わり、俺は窓の外を見た。
あぁ、今日はいい天気だ…
○○○
昼休み。俺はクラスの奴に絡まれないようにするためと、桜を待たせないようにするためにダッシュで約束の場所に向かう。幸い、俺の方が先についた上に、周りには誰もいなかった。
「はぁ…はぁ…とりあえず…文句は一つなくなるだろ…」
おそらくこの後は、文句ひとつで俺は塵になるだろう。不安要素は一つでも減らしたい。
「分かっちゃいたが、ここまで周りが騒ぐとはな…」
「そうね。説明してくれるかしら?」
「っ!」
妖気…!?
そう思えるほどに冷たい声が聞こえた。コイツは声で人に勝てるんじゃないか?
「よ、よぉ…調子どぉ?」
思わず声が上ずる。完全に押し負けている。完敗だ。
「挨拶も茶番も御託もいいわ。質問に答えなさい」
「イエッサー」
「茶番はいいって言ったでしょ?」
いや、今のは恐怖から思わず出たんです。
「で?アンタ、私に隠し事してない?」
ある。が、今答えるべきは…
「昨日言い忘れたことはある。俺は水瀬から、友達になりたいと言われた。それは保留っぽくなったと思ったが、アイツが詰めてきた」
これが今日の騒ぎの発端だ。俺はアイツの友達作り下手を低く見積もっていた。想像以上に不器用すぎる。俺が正直に話すと桜呆れたようにため息をついた。
「はぁ…」
ひぃっ!
俺はとっさに身を守る姿勢になったが、一向に衝撃は来なかった。代わりに、桜は冷ややかな目で俺を見ていた。
「アンタ、何してんの?」
「身を守ってる」
「何から?」
「桜から」
「なんで?」
「いや、てっきり殴られるかと」
「そんなことしないわよ」
そういやそうか。よくよく考えれば、一度も殴られてない。怒られることは多々あったが。いやしかし、人一人消せそうな圧力があったから、暴力を振るわれると錯覚してしまった。
「まったく、恐怖ってのは人の正常な判断を奪うなぁ…」
「アンタおかしいわよ?…あぁ元々だったわね」
それは傷つくぞ?
「まぁいいわ。わかった。それだけなら、私からは特にないわ」
おぉ!生存ルート!
「でも気を付けてね。さっき、クラスの人、特に女子がアンタを血眼になって探してたわよ」
あ、ダメだ。俺、今日で終わる。
「せいぜい頑張りなさいよ。私としてはアンタがいなくなるのは困るわ」
「マジで?心配してくれんの?」
「アンタがいなければ、誰が私に協力してくれるのよ」
「ですよねー…」
知ってたさ。それが目的くらい。
「まぁ…………と………も」
最後に桜がなんか呟いたみたいだったが、よく聞き取れなかった。
「ん?何?」
「なんでもない。じゃあ私行くわね」
えー…
そうして、桜は去って行った。俺は、釈然しなかったが、問い詰めても答えないことは目に見えていたから、諦めて昼飯を食べることにした。
最後の飯になるのかな…はたして俺はこの先生き残れるのだろうか…
そして数秒後、俺は飯を買っていないことに気付き、絶望するのだった。
〇〇〇〇
そして放課後。俺は不穏な空気を感じてすぐさま帰り支度をして席を立つ。しかし、クラスの奴らは恐ろしい連携を見せ、俺を包囲した。
「昼休みは逃げられたけど、もう逃がさないよ」
「さぁ、こっちの質問に答えて貰おうか…」
相手は真剣な表情で俺との距離を詰め始めた。
お前ら昨日まで全然俺に興味なかった癖に手の平返し過ぎだろ!
とは思ったものの、言うわけでもなく。俺は相棒の美撮を手に取る。そして…
「簡単に捕まるかっ!くらえっ!GN35フラッシュ!」
パシャッ!
外部取り付けの強いフラッシュを浴びせ、相手を怯ませる。俺はその隙にクラスの人の間をすり抜け、教室の外へ。
「しまった!逃げられたぞ!追え!」
すぐさま体制を立て直したクラスの奴らが追ってくる。
「ダメだっ!奴は意外と速いぞ!」
「くそっ!運動得意な奴は追え!そうじゃない奴は知り合いに連絡して包囲網を固めろ!」
お前らその執念と連携はなんなんだよっ!
想像以上の連携を見せ動揺するが、足は止めない。もう少しで下駄箱までたどり着く。
外に出てしまえば…
俺は最速で靴を履き替え外に出る。しかしそこにも人が待ち構えていた。
「いたぞ!アイツだ!」
「あの根暗そうなのね!?」
「止めるわよ!」
おいぃ!そこまでするかぁ!?てか一人ナチュラルにディスってんじゃねぇよ!
致し方無く右を向き、グランドの脇を走る。
「逃げたぞ!追え!」
男女十数人に追われ、ひた走る。
「向こうは行き止まりだ!追い詰めろ!」
「観念しなさい!キモオタ!」
さっきからやたら俺をディスる奴いねぇ!?
校舎を取り囲むフェンスも目前に迫り、追う奴らの士気が上がる。しかし、ここに来たのは計画通りだ。
「うおぉぉぉぉ!!」
俺は更に速度をあげ、フェンスに突っ込む。そして一気にジャンプし、フェンス前の植木を飛び越え、フェンスを掴む。
「なんだと!?」
追っ手が驚くのを尻目に、俺はフェンスを乗り越え、無事に校外に出る事に成功した。そのまま更に走り、完全に学校が見えなくなるまで街中を激走したのだった。
6話目の読了、ありがとう御座います!
英治君は別に運動が苦手ではありません。
むしろいい方です。
今回はそんな彼に全力を出して貰いました。
それでは、これからもお付き合い頂ければ幸いです。