#5 人生、都合よくはいかない
こんにちは!
晴です!
本編全く関係ないんですけど、最近おすしが食べたいんです。
で、この間行こうと思いまして、せっかく食べるならいいとこ行こうと思ったんですよ。
いざお店に入ると板前さんに入店断られまして、理由を聞いたら、
ネタ切れだそうです。
では、本編をどうぞー!
前回のあらすじ
イケメンが友達作るの下手。女子怖い。
〇
数日後、俺は水瀬と連絡を取り合って、部活がない日に再び家に行くことにした。
その間、俺への質問攻めはなかったが、明らかに今までとは違うタイプの視線を嫌というほど浴びた為に疲れた。それと、思い出したかのように水瀬が変なアプローチを入れてきて、それを何とか躱す度に注目されてきた。
だが、今日をもって俺は平穏な日々を取り戻す!
そんな決意を胸に、俺は水瀬の家を目指した。本当は関わるのは勘弁なんだが、これも必要なことと割り切って重い足をひたすらに動かす。水瀬の家に近づくと聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。
「ワフッ!ワフッ!」
向こうも俺の匂いを覚えていたのか、門の隙間から顔を出してこっちを見ていた。
「よぉユキ。俺を覚えてたか」
「ワフッ!」
「そうか。お前は飼い主に似て賢いのな」
「ワフンッ」
ユキはホントに人の言葉を理解してるように受け答えをする。若干ドヤ顔に見えるし。少しの間、インターホンを鳴らさずにユキと戯れていると、玄関から水瀬が出てきた。
「声がすると思ったら英治、来てたなら呼んでくれよ」
「悪い。ユキと遊んでた」
「そうかい。ずいぶんと懐かれたんだね。俺も嬉しいよ。さ、中に入って」
「おう」
ユキのモフモフを若干名残惜しく思いつつ、俺は水瀬の家に入っていった。
○○
前に来た時と同じようにやたら広いリビングに通され、ひとまず寛ぐ。
「はい。お茶」
「おう。さんきゅ。これ、この間の写真。プリントしたやつ」
「ありがとう。それで?今日来たのはこれのため?」
俺の向かい側に座り、これだけとは微塵も思ってなさそうな顔で要件を聞いてきた。
「いや違う。それはお前もわかってるだろ」
「ははは。ごめん。今のは意地が悪かったね」
「いいよ。でだ、要件は今後の付き合いについてだ」
「まぁ…このタイミングならそうだよね」
分かってるなら話が早い。さっさと終わらせよう。
「俺の希望は一つ。学校では一切俺に関わらないでほしい」
「なっ!!」
水瀬はずいぶん驚いた様子でテーブルに身を乗り出した。
「それが一番手っ取り早く今の状況を変えられる。散歩で会ったのは人違いだったことにしてくれ。そうすれば今まで通りの状況になると思う。俺の平穏は戻るし、お前も特別扱いしてる人はいなくなる。みんな元通りだ」
「なんでそこまでして…」
「俺は写真だけ撮れれば充分だからだ。今みたいに注目されて変な角が立つと面倒だ。それなら空気扱いされて注目されずに写真を撮りたい」
「そう…なのか…」
俺の決意を聞いて、水瀬は落ち着きを取り戻したのか、ソファに座り直す。物分かりが良くて助かる。
「じゃあ、言いたいことはそれだけだ。わかったなら帰るぞ」
そう言って俺は立ち上がろうとしたが。
「待って」
水瀬が呼び止めてきた。
「まだなんかあるのか?」
「俺は…やっぱり英治と友達になりたい。学校でもこうして話したりしたい」
コイツ…ここまで突き放したのにまだそんなことを言うのか…
「……なんでそこまでして俺にかまうんだ?お前の作ってきた平等とやらが消えるかもしれないんだぞ?」
「英治は優しいよね。自分の平穏のためとか言って突き放そうとするけど、俺のことも考えて離れようとしてる」
「それは結果的にそうなるってだけだ。お互いにメリットがあれば納得しやすいだろ」
「でも、突き放そうと思えばいくらでもできたよね。俺が声掛けた時に無視すればいいのに、ちゃんと一言断ってからどこかに行ってた」
「それは、無視したらもっと風当たりが強くなると思っただけだ」
「何より、最初に挨拶した時点で英治が人違いだと大勢の前で言えば、少なくとも英治は注目されなかったよね」
「それは…今思い付いたからだ…」
「…苦しいね」
「苦しいか」
確かに苦しい言い訳だと思う。最後を除けば本音だし、実際、俺が平穏を求めてるのも嘘じゃない。でも、最後だけは違う。
妙な沈黙がリビングに漂う。ユキの鳴き声すら聞こえない。
「………はぁぁ。参った。降参だ。耐えられん」
重い空気に耐えかねて、思わず負けを宣言する。
「じゃあ俺と友達に…」
「待て。その前にちゃんと理由を話せ。さっきのは理由とは認めないぞ。いろいろ考えるのはそれからだ」
「ははっ!やっぱり英治は優しいよ。考えることが前提になってる」
「茶化すなら帰るぞ?」
「ごめん、ごめん。でも、その優しさも理由の一つだよ」
「さいで。他は何なんだよ」
茶化しはいらん。
「英治は同世代で二番目に、最初から特別扱いしなかった」
なんだそれ。
「してたぞ?コイツは俺とは違って特別なやつなんだろうなぁって」
俺は素直にそういうと、水瀬は苦笑した。
「はは…そうじゃないよ。嫌味とかじゃないけど、俺は人からよく好かれてると思う」
「喧嘩売ってんのか?」
もう帰ろうかな。
「まぁ待って。俺は誰かと特別仲良くっていうは特にないって言ったよね?」
「あぁ、言ったな」
「でも他の人は違うとも言ったよね?」
「あぁ、なるほど。わかった」
「わかった?」
「やっぱお前嫌味だろ」
「分かってないね!?」
お、コイツ突っ込んだの初めて見たかも。
「冗談だ。お前を優先しようとしないからってことでいいか?」
「まぁ、ざっくり言うと」
「お前が人間関係で苦労してるのは聞いたから、まぁわかるけど。本当にそれだけか?」
「あー…えっと…」
俺はさらに踏み込むと、目に見えて動揺した。
まだあるのか…
「はっきり言えよ。それとも、言えないのか?」
「いや、うん。すごく言い難い。けど言わないのも失礼だよな」
「失礼?」
「そう。なんていうか、多分言っても失礼になるんだけどね」
「もったいぶるなよ」
コイツがここまで言い渋るのは何なんだろう。
「さっき、英治のことを、特別扱いしなかったのは二番目って言ったよね」
「あぁ、言ってたな」
「一番目の人とも仲良くなりたいんだ。友達じゃなくて、その…恋人に」
「女なのか。それとどう関係があるんだ?」
「一番目の人っていうのが…桜さんのことなんだ」
「………はぁ………は?……はぁ!?」
ちょっと待て。理解が追い付かない。
「今、なんて言った?」
「だから、俺は桜さんと恋人になりたいんだ」
「えーっと…てことは…いや、マジか…そんなことあるか…?」
「英治が桜さんの幼馴染だって知ってたんだ。だから、色々知りたいと思って。…やっぱり嫌だよね。幼馴染っていうのを利用しようとするのは…」
「いや、そこはいい。むしろ、お前も人なんだと再確認できたから好感が持てた」
「ほんと?よかった。普通は嫌いになると思ってたから。ていうか俺は最初から人だよ?」
聖人君子かなんかだと思ってたけど、コイツも人を利用しようとするくらいには人の子だったんだな…
「まぁその普通が分かって、馬鹿正直に言うあたりが普通じゃねぇよ」
「いや…隠し事はよくないと思って…」
「わかったから。まぁとりあえず置いといて」
「置いとくんだ…」
まぁいい。問題はそこじゃない。本当に訳が分からん。
「一つ…いや二つ確認したい」
「何?」
「お前は特別扱いしないから桜を好きになったと言う。じゃあ恋人になったら特別扱いすると思うんだが、そこはどうなんだ?」
「全てにおいて優先ってわけじゃなきゃいいかな。節度って言うか、優先すべきことは優先してほしいかな。桜さんはそのあたりは大丈夫だと思うけど」
まぁアイツは割と現実主義者だからな…線引きもちゃんとできると思うから、そこは同感だ。
そう納得しつつ、俺はもう一つの確認したいこと、本当に重要なことを聞くことにした。
「じゃあもう一つ。お前は桜と他の人より仲良くなって、恋人になりたいんだよな?なら仮に、桜が告白してきたとしたら断らないんだな?」
「そうだね。仮に桜さんが告白してきたとしたら、もちろん断らないし嬉しいよ」
「本当か!?」
「あぁ、当たり前だよ。でも、それはないね…」
は?なんで?
「どうしてそう思うんだ?」
桜が告白することはない…?
俺は、水瀬の確信を持ってるような態度に納得できずに聞いた。そりゃ、相手が好きなことを知っているのに告白されないと断言するのは納得できない。
「だって、俺は一回振られているからね」
……は?…………………はぁ?
「はぁぁぁぁぁぁ!!??」
俺は今までで、この日より驚いたことはないだろうというくらいに驚いた。
5話目を読んで頂き、誠にありがとう御座います。
最初に、前書きはすいませんでした。
ただ、茶番が書きたかったんです。
自分で面白いと思っても、他の人はそうじゃないことがあって、逆も然り。
なかなかうまくいくことが少ないんです。
人間関係はそれが顕著で、恋愛に関しては本当に難しいですよね。
では、これからもお付き合い頂ければ幸いです。