#2 俺得の撮影会
こんにちは!
明日葉晴です!
私はあまりNOと言えない人間です。
が、友人AはもっとNOと言えないYESマンです。
みなさんは断る勇気を持ちましょう。
では、本編をどうぞ!
前回のあらすじ
俺、陽キャラ、嫌い。
〇
桜の頼みは実にシンプルだった。
「端的に言えば、水瀬と付き合いたい、と」
「まぁ…そうなる」
「無理。俺には無理」
「なんでよ!?家に行くほど仲良いんでしょ!?」
「さっきも言ったけど、これは水瀬からの依頼だ。俺も犬の写真を撮りたい。利害が一致しただけだ」
「でも、水瀬君が誰かを家に呼んだことなんてないの。あんただけなのよ」
まぁ普通は人を家に呼びたくはないわな。俺だけか?
「どのみち今回のみだ。それ以降はまた元通りになる」
「ならもっと仲良くなりなさいよ」
「嫌だ」
「なんで!?」
「面倒臭い。それにアイツとは住む世界が違う」
「それは否定しないけど…」
そこは否定しないのかよ…
「でもそこをなんとか私に協力してよ」
「絶対やだ」
そもそも他人の恋路に協力とか面倒臭すぎる。
「しょうがないな…」
「諦めてくれるか?」
「なら、ここであんたに襲われたって言ってやるわ。そうすればあんたは学校にはいられなくなる」
「別にもともと学校に執着はない。ダメージはお前だけだな」
「くっ…」
ったく…なんでアイツがそんないいんだか…
「はぁ…わかった。さっき私の写真撮ろうとしてたよね?それでどう?」
「それでとは?」
「それは…その…私の写真を撮ってもいいってこと!それが協力した後のお礼!」
「ふむ…」
桜の写真か…ありだな…いやまて、だが協力は面倒すぎる…だが…
悩む俺を見て好機と思ったのか、桜が畳み掛けてきた。
「エッチ…なのは無理だけど、夏に水着とかならギリギリセーフにしてあげる。あんたが写真を撮りたくなったら、時間が空いてればこれからいつでも付き合ってあげる!これでどう!?」
「よし、乗った」
結局、俺は欲に負けた。桜は被写体として充分な素質がある。撮れるなら撮らねば。
「やったぁ!感謝するわ!」
「ただ、俺に出来る範囲だけどな。情報収集とかそんくらいだぞ」
「いいよ。最終的に決めるのは水瀬君なんだし。だから、私が水瀬君好きって絶対言わないでね」
「言わねぇよ。それと、付き合えなかったからって、被写体にならないとかは無しな」
「そこはあんたの頑張り次第ってとこね」
くそっ!騙しやがったな!
「全力でやらして頂きます」
もちろん表には出さない。
「うむ。苦しゅうないぞ」
あれ?なんか立場逆転してね?
そんなことを思っていたが、俺はどこか懐かしい気持ちになっていた。桜とこんな風に気軽に話すことがしばらくなかったから、昔みたいに話せるのがどことなく楽しく思う。
「じゃ、期待しないでおくわ。私は先に戻るね。あ、因みに教室では話し掛けないでね。友達だと思われたくないから。でも…ちょっと……よ」
最後の言葉は聞き取れなかったが、懐かしく思ってたのは俺だけだったようだ。まぁ元々教室で話すつもりはなかったのだが。
「安心しろ。俺も極力関わりたくはない」
俺の言葉に片手を上げて応え、桜出入口の方に去って行った。
「はぁ…見返りがあるとは言え、面倒なことになったな…」
久しぶりに人と関わったせいでどこか疲労感が出たが、何となく心地よかった。
「さて、俺はもう少し写真撮ってから戻るか」
そうして、校門側とグラウンド側の写真を撮り、俺は朝礼ギリギリに教室へと戻って行った。
〇〇
その日の授業は、何故だか時間がゆっくりに感じた。カメラをいじってなかったからかもしれないし、どこかで、ユキの写真を撮るのを楽しみにしていたのかもしれない。
余談だが、カメラを授業中にいじっていないせいで、全科目の先生から驚かれた。もちろんクラスの奴等からも。
そんないつもとはどこか違う日の放課後、俺は最後の授業の挨拶と同時にダッシュで帰宅した。
今日に限っては片道30分が恨めしいぜ!
とか思っても心はウキウキしていたから、これっぽっちも悪い感情はなかった。因みに、水瀬の住所は朝のうちにメッセージが来ていた。
そうこう考えているうちに自宅へ。どうせ今は誰もいないから自室に直行、カメラセットが入ったカバンを学校のバックとチェンジして即行で自宅を出て水瀬の家に向かった。
〇〇〇
水瀬の家は割とすぐわかった。家の門の隙間から、ユキが顔出していた。
「ワフッ!ワフッ!」
ユキが俺に気付くと吠えてきた。ふわふわの毛が家の門の格子に押されてシュッとしている。思ったより太ってはないみたいだ。
「ユキ、吠えると近所の迷惑に…って鳥飼君か。いらっしゃい。門を開けるからちょっと待って」
「オーケー」
ガラガラと水瀬が門を開け敷地内へ。庭がちょっと広いけどあとは普通の家って感じ。
「とりあえず中入る?」
「いや、さっさと撮りたい。どこで撮ってほしい?」
「こういう時は決めてくれるんじゃないの?」
「今来たばかりで撮るのにいい場所があるかわかると思うか?」
「なるほど。ならまず裏の庭で撮って貰おうか。良さそうな場所があったらどんどん言って貰ってかまわないから」
「なら遠慮なく見せて貰うよ」
と言うわけで裏に移動。正面も庭なのに裏にも庭があることに少し驚きつつ、水瀬の後について行く。
案内された裏の庭は、軽くキャッチボールが出来るくらい広かった。
「お前、もしかしてボンボンか?」
「基準はわからないけど、不自由はしたことないかな」
その台詞はもうボンボン確定みたいなもんだろ。
「親何やってんの?」
「父親は弁護士で、母親はモデルを時々」
「そりゃ稼げるわな。モデルの母親は少し話を聞いてみたいな」
「生憎、今日は二人ともいないよ。都合が合えばまた来るかい?」
それは願ってもないな。俺としても、桜の依頼としても。
「ふむ…頼む。本職で撮られてる人の話は興味がある」
「わかった。今度聞いて見るよ」
「助かる。じゃあまぁ始めっか」
「どうぞ、好きなように」
俺は準備してきた荷物を置いて、愛用カメラの美撮を構える。
まずはいつも使ってる標準レンズで取り始めた。
とりあえず、自然体をっと…
「水瀬、ユキになんか指示してくれ」
「えっと…なんかって?」
「何でもいい。とりあえず動きを加えたい。一緒に遊ぶとかでも構わん」
「わかった。ユキ、おいで!」
水瀬が呼び掛けるとユキが反応して、駆け出す。
「おぉ!いいぞ!可愛い!ナイスだ!いい動き!今の目線は最高だな!」
ユキは被写体の才能あるな。いい感じに明るいポイントに居てくれるし、適度にカメラ目線をくれる。それに比べて…
「水瀬被り過ぎ。もうちょいユキの顔見えるスペース取って。影に入り過ぎ。後カメラ意識すんな」
「えっ?あっ!ごめん!ここ!?」
「今度は離れ過ぎ、左前一歩」
「ごめん、ここでいいかな?」
「まぁ、おっけ。その距離感でユキと戯れるように。抱きつくのはあり。ただし、斜め後ろから自分の顔がカメラ側に来るように」
「あ、あぁわかった。頑張る」
まぁなれないのはしょうがないが、俺は依頼されたからには妥協しない。
「オッケー。一旦休憩な」
「ふぅ。なんか疲れたな。もう終わりでいいの?」
「いや?休憩って言っただろ?レンズ変えてもっかいやるよ?」
「お、おぉ…わかった。頑張る」
あ、流石に引かれたか?このままでは桜の依頼が完遂出来ないな。印象をちょっとよくするか。
「嫌なら止めるけど?」
とまぁ譲歩の姿勢。
「いや、頼んだのはこっちだから、納得の行くまで任せるよ」
コイツ、なかなか根性あるな。
「なら遠慮なく。ただ疲れたら言ってくれ。適度に休憩入れよう」
「わかった」
「じゃ、再開するぞ」
そうして、レンズを交換して撮影会を再び始めた。水瀬も慣れてきたのか、なかなかいいポジションを取るようになってきた。
「オッケー。とりあえず庭はこのくらいにしとくか」
「ふぅ。流石に疲れたよ。いつも撮る時はこんな感じなの?」
「いつもは俺が撮りたいもん撮ってるから人とか気にしてない。てか、友達とかいないからこうして依頼されて撮ることがそもそもない」
うん。言っててなんか悲しいな。
「あ、うん。なんかごめん」
謝れるとなんか逆に悪くなるな。
「謝んなくていい。引かれてんのも、引かれるのもわかってて、やってるから。選んでこうしてる」
「そっか…じゃあ俺が初の依頼人ってことなのか?」
「まぁそうなる」
「そっか、そっか。じゃあ鳥飼君が有名になったら自慢出来るね!」
お、おう。なんて純粋なんだコイツ…こっちが照れるわ。
「まぁ…うん。お好きにどうぞ…それはさておき、その『鳥飼君』っての止めてくんね?むず痒い」
「わかった…じゃあ英治だね!」
「え?」
一気に距離詰めてきたなぁ…
「ダメ…か?」
そっちの趣味はないけど、お前がそんな悲しい目をするのは反則だろ!
「いや、いいよ」
「よし!俺のことも京弥って呼んでよ!」
「あぁ…まぁうん。追々な」
よくもまぁそんなこと堂々と言えるな。
「ふむ…わかった。とりあえず、このあとは?」
「そうだな…ユキは家に上げていいのか?」
「大丈夫」
「なら、家の中見させて貰っていいか?良さそうな場所があれば撮る」
「構わないよ、でも先に休憩にしよう」
「わかった」
と言うわけで水瀬の家の中へ。家は豪華かと思ったら、少し広いだけで普通の家庭のような物しかなかった。
「シャンデリアとかねぇの?」
「ないよ。英治の中では俺はなんだと思ってんの?」
「弁護士のボンボン」
水瀬が苦笑しつつ聞いてきたから、思ったままを口にした。
「弁護士って言ってもそんな溢れるほど稼いでないと思うよ」
「でも母親はモデルだし、金に困ってねぇって言ってたし、それくらいはあるかなと」
「ふむ…成金趣味は多分ない。ってくらいなのかな。俺も親がどれだけ稼いでるかはわかんないよ」
「普通なんだな」
「普通だよ。まぁお茶入れるからその辺座ってよ」
「おー。さんきゅ」
リビングのソファに遠慮なく座る。すっごいふかふかだった。
「お待たせ。寛いで…るね」
「変に遠慮しても仕方ないだろ」
「その方がこっちもありがたいよ」
「だろ?」
お茶で一服。なんか落ち着くわー。
ほのぼのとした時間は過ぎるけど、お互いほぼ初対面みたいなものだから、特に会話はない。そんな時間を打開するように水瀬が口を開いた。
「とりあえず…このあとはどこで撮影するの?」
「ん?んー…そうだな…思ったより家が普通だったからなー…」
「ほんとにどんなの想像してたの?」
「豪華な感じ。シャンデリアとか」
「シャンデリアにこだわるね…」
豪華=シャンデリア、程度の庶民だからな。
「とりあえず今日はもういいかな。あとは…どうすっか…」
「ほんとに撮影しか考えてなかったんだね」
「俺の生き甲斐だからな」
「カメラが本当に好きなんだね。そんなにこだわれることがあっていいな」
「お前もバスケしてんじゃん。ダメなのか?」
「ただの部活だよ。バスケでずっとやってこうと思うほどじゃない」
「ふーん。エースとか言われてるからてっきりそっち方面なのかと思ってた」
「まぁそれはそれ、これはこれだよ」
「そんなもんか」
「そんなもんだよ」
こんな人気者にも悩みはあるんだな。なんか意外だ。
「どうしてカメラが好きになったの?」
「ん?どうして?んー…まぁきっかけは…」
なんだったろうか…あれは…あぁそうか。
「桜知ってるだろ?隠したがってるみたいだから内緒にして欲しいんだけど、幼馴染でさ、家が隣で子供のころから知ってて、ある日、親父のカメラ借りてふざけ合いながら写真取ってたんだよ。それがすっごく面白く感じてさ。それ以来かな」
「幼馴染…そっか…じゃあ実は付き合ってたりするのかな?」
「まさか。今はこれっぽっちも付き合いはねぇよ。じゃなきゃ向こうも隠したがったりしねぇだろ」
いや、今は協力関係か。まぁこれ言ったらだめだろうし多少の嘘はしょうがないか。
「今の俺の付き合いは、親友兼恋人の、この『美撮』だけだ」
俺は愛用のカメラを掲げる。
「ははっ!ならそこに友人として俺も追加しといてくれよ」
コイツ…よくもまぁ恥ずかしげもなく…
「あー…まぁ…考えとく」
「よろしくな。ところで、そのカメラはさっきの話に出てたお父さんのカメラ?」
「いや、『美撮』は俺が小遣い溜めて買った」
「あ、そこは普通なんだね…」
「語ると長くなる。ぶっちゃけ自分でも引く程長い」
「そ、そうかい…ならまた今度にしようか」
その今度は来ないな。その社交辞令は流石にわかるぞ。
「あぁ、そうしてくれ。さて、お前パソコン持ってるか?」
「え?まぁ持ってるけど、それがどうかした?」
「なら貸してくれ。今日撮った写真を見よう」
「そういうことか。わかった。俺の部屋に来て」
「おう」
水瀬に付いていき、部屋まで移動することにした。ぶっちゃけ、普通の家より広いと思う。部屋の数めっちゃあるし。
さて、そんなことはさておき、楽しい楽しい写真整理の時間だ!
2話目を読んで頂き、ありがとうございまっす!
私は二次元では、男の子はツンデレ、女の子もツンデレが最強だと思ってます。
あ、二次元の話ですよ?人は素直が一番です。
まぁさておき、要するにツンデレが最強だと思うんですけど、皆さんはどんな属性が好きですか?
では、これからもお付き合い頂ければ幸いです。