#1 陽キャラ達が俺の話を聞かない
こんにちは!
明日葉晴です!
前回お話した通り、この作品は一章ごとに連日投稿する作品です!
前書きとか毎日は大変ですね。
投稿し忘れにも注意したいです。
では、本編をどうぞっ!
今日も今日とて、俺は愛用のカメラ「美撮」を首にぶら下げながら(気持ちだけ)優雅に登校していた。
俺の家から高校までは歩いて大体30分。普通なら自転車を使うような距離だけど、俺は歩く。自転車だとシャッターチャンスを逃しそうだから。
大体半分くらいまで歩いたけど、この時点ですでに20枚ほど写真を撮っていた。なかなかに豊作の日だ。
「今日は調子いいな。ブログに載せたいのも何枚かあるしな」
俺は学生の傍らで、フォトブログをやってる。まぁ大それたものじゃなく、遊びの範疇くらいの簡単なものだけど。それでも早いうちに名前を知ってもらっていた方が後々に繋がるだろう。
毎日、町の風景は変わる。1日も同じ風景なんてない。どこかしら変わっている。
商店街は毎日人の配置が違うし、公園だって、子どもがいたり、大人がいたり、誰もいなかったり。街角だって、枯れ葉一つでずいぶん違う。
なので今日は気分を変えて、かなり早めに家を出ていた。お陰で豊作だ。たまの早起きもいいな。
そんなことを考えていたら、街角から犬が猛スピードで出てきた。こっちに来る!
「これは…シャッターチャンスか!?」
避けようとするよりも先にカメラを構える。依然として、犬が迫ってくる。そして、前方にいる俺に気付いたのか、犬が急ブレーキをかけた。
「うおっ!」
犬は止まろうとしたものの勢いを殺しきれず、逆立ちの様な状態になった!
カシャッ!
「しゃあぁ!いいもん取れた!素晴らしい!なかなか見れるもんじゃないぞ!」
これは確実に今日一番の大物だ!今すぐ確認したいところだけど、それよりも今は…
「お前、どこから来たんだ?」
目の前でハァハァ言ってる犬は何なんだろう?けっこうデカイな?サモエド?
白くてモフモフのデカイ犬が、何故か俺の目の前でお座りしている。首輪が付いているので飼い犬だろう。
「何がともあれ、ありがとな!お前のお陰で超面白いのが撮れたぞ!」
「ワフッ!」
俺の言葉に反応するように軽く吠える。めっちゃ尻尾振ってる。撫でるか。
「よしよし、お前賢いなぁ。俺の相棒にならね?」
犬の頭を撫でながら勧誘してみた。ふわふわで超気持ちいい。
「ワフゥ…」
心なしか気持ち良さそうな声を出しながら、俺に撫でられ続ける犬。特に抵抗しないので、そのままなで続けていたらどこからか声が聞こえてきた。
「ォーィ…オーイ…ユキー…どこだー…!」
だんだんと声が近付いてきた。
「ワフゥゥ!」
「そっちか!今行くからおとなしくしてろよ!」
犬が来た方向の曲がり角から人が姿を現した。走りながらこっちに向かってきた。
「ハァ…ハァ…ダメじゃないかユキ。勝手にどっか行ったら」
男がユキと呼ばれる犬を叱る。そして俺がいることに気付いて体をこっちに向けた。
あれ?同じ制服…てかコイツって…
「あなたがユキを止めててくれたんですか?ありがとうございます…って、君はもしかして同じクラスの鳥飼君か?」
あーやっぱり…
「もしかしなくても鳥飼 英治だよ。お前はもしかするとこの水瀬だろ」
「ははっ!そうだよ。奇遇だね。こんなとこで会うなんて」
爽やかさ全開のコイツは、同じクラスの水瀬 京弥。成績は学年トップ、バスケ部のエースで運動全般が出来る、爽やか、優しい、気遣いが出来る等々…完璧を現したような奴だ。当然、そんな奴は人気者なわけで…
単刀直入に言えば、俺とは正反対な奴だな。
「ところで何してたんだ?」
「見ればわかるだろ。登校だよ」
「早くないか?」
「水瀬に言われたかない。お前も制服着てんだろうが」
「俺は朝練があるからね」
「俺も写真がある」
「そ、そう…?」
会話終了。とっとと行こう。俺はこんな陽キャラに構ってたら燃えてしまう。
「じゃ、そういうことで」
「待って!良ければ一緒に学校に行かないか?」
「はぁ?なんでだよ。今まで話したこともないだろ」
「だからだよ。何かの縁かもしれないし、話してみたいからね」
くっそ!これだから陽キャラは!
「絶対やだ」
「ふむ…」
よし、俺の硬い決意に口を閉ざしたぞ。
「そういえば、鳥飼君は写真が得意だったよね?」
コイツ…まだ諦めないか!
「好きなだけだけど、それが?」
「うちのユキを撮ってくれないか?」
そう言って水瀬は白いモフモフを指差す。
な、なん…だと…!それは魅力的だ。
白モフモフが笑顔?で俺を見つめてる。かわいい。撮りたい。撮りたい!
沸き上がる衝動を抑えきれずに、カメラを構えようとするが、水瀬京弥に阻まれた。
「ただし、俺と一緒に学校行くならね」
コイツ、噂ほど性格よくないんじゃね?
爽やかさと勝ち誇った感じの半々くらいの笑顔で、クソイケメンが俺を見ていた。
「わかった。今日だけだかんな」
俺はモフモフの魅力とコイツの頑なさに、ついに一緒に学校へ行くことを了承した。それと、不思議なことに俺は悔しさとは違うことを思っていた。
なかなかいい笑顔じゃねぇか…
コイツ自体も画になるし、いつか撮ったら面白いかもな。
そうして、行くことを決めたはいいが一つ気になることが…
「こいつ…ユキだっけ?はどうすんだ?」
まさか学校には連れていかんだろうな。
「あぁ、そっか。ユキ、ハウス!」
水瀬がそう言うと、ユキは一目散に走りだし、何処かへ行ってしまった。
「おい!いいのかよ!」
「大丈夫、大丈夫。ユキは一人で帰れるから。じゃあ行こうか」
意味がわからん…が、まぁ元々理解出来ない人種だしいいか。
考えることをやめ、俺は水瀬の隣を歩き出した。
〇
学校に着き水瀬と別れて、俺は早すぎる時間の誰もいない教室で一人、朝撮った写真を確認していた。
普段ならこの写真の確認中は集中出来し、幸せな時間なのだが、今日はいつもと違って集中出来ないでいた。さっきまでの出来事がどうにも頭に引っ掛かっていた。
「いったいなんだってんだ。」
学校に来る道中、基本的には水瀬が質問して、俺が答える感じだった。俺から聞くこともあまりなかったし。
「学年の人気者…ねぇ…」
例え相手がクラスメイトだとしても、道中で話したこともない奴にあったら、一緒に行こうと言うだろうか?ましてやクラスで浮いている奴なんかと。
確かに今回は多少話さなきゃならなかったかもしれないけど、普通は一言くらいで済むと思う。
「友達いねぇからってひねくれすぎなんかなぁ…」
考えてもわからん。まぁとりあえずの収穫はあったし、どうでもいいか。
道中、しれっと連絡先を交換されて、白モフ…ユキの写真を撮りに行くことになった。あの白モ…ユキの写真が好きに撮れるなら些細なことだろう。
「考えんのも飽きたし、そろそろいろんな生徒が登校してくるだろうし、屋上から写真でも撮るか。」
屋上から人を撮ったことはあるけど、この早い時間に撮ったことはない。せっかくだし、早く来たのを活用しておこう。
〇〇
屋上の前まで行くと、楽器の音色が聞こえてきた。
「先客…か?」
良ければ写真を撮らせて貰おうと思い、屋上の扉をあける。そして、そこにいたのは…
「あ」
「げっ」
「よぉ。桜」
「……」
♪~
無視してフルートを吹き始めないでほしい。流石に悲しいから。
この冷たい奴は桜 翔子。家が隣の、所謂幼馴染と言うやつだ。といっても中学上がった辺りから全く話さなくなったけど。
にしても、画になるなぁ。
別に幼馴染だから贔屓してるわけじゃないけど、桜は美人の部類に入ると思う。バランスのいいスタイルだし、カースト上位のグループにいるし、どっかの男共が噂してたが人気もあるらしい。俺とは違って陽キャラに育っている。
まぁそんなだからカースト最底辺にいる俺なんかと話したくはねぇだろうな。
とりあえず解釈をして、相手が無視するならと俺も黙ってカメラを構える。もちろん桜に。
「ちょっと!なんで勝手に撮ろうとしてんのよ!」
「いい写真撮れそうだから」
「そういうの止めて。キモいから」
「許可とりゃいいのか?」
「違うから!ところかまわず写真撮ってんのがキモいって言ってんの!」
「楽器は良くて写真はダメなのか?」
「私はちゃんと許可取ってる」
「やっぱ許可とりゃいいんじゃん」
「くっ…」
「はぁ…わかった。お前は撮らん。普通に風景撮るよ」
「なんであんたが譲歩したみたいになってんのよ!」
俺はやれやれといった風にフェンスの方に向かう。予想通り校門の方は人が現れていた。
実にいい。桜の季節は過ぎたのが惜しいな。来年は絶対撮ろう。
真顔の生徒、眠そうな生徒、勉強してる生徒、友達と笑い合ってる生徒。色々な表情の生徒がいて、それがいい。偏ってないでバラバラにいるのが丁度いい。
バランスってのは大事だな。
まぁ、笑っているのが右で、勉強してるのが左でって感じできれいに分かれても、それはそれで面白いかもしれないけど。今は今の一番を撮ろう。
写真を熱心に取っていると、後ろからフルートの音が聞こえ始めた。音楽のことはわからないけど、綺麗な音だと思う。
俺は一旦写真を撮るのを止めて、フェンスに寄りかかり静かに聴くことにした。
そういや、昔から桜は音楽が好きだったな。
幼稚園の時とかしょっちゅう歌とか歌ってた様な気がする。あの頃はまだ仲が良かった。
なんで喋んなくなったんだっけか…
中学の頃からっていうのは覚えてるけど、きっかけはあっただろうか。中学は男女とかの意識し始めるからしょうがない気もするけど、それだけじゃないような気もする。
まぁ考えてもわからんか…
本日二度目の思考放棄。今日はそういう日なのかもしれない。一度目の思考放棄の原因を思い出していたら、携帯がなった。
画面を見ると、丁度よく思い出していた原因の名前が表示されていた。
いったい何の用だ…?
「もしもし」
『やぁ、出てくれないかと思ったよ』
ふざけてんのかコイツ…
「じゃあ切るぞ」
『待って。ごめん、ごめん。今どこ?』
「屋上」
『そうなんだ。何してたの?』
「写真撮ってた。お前は朝練じゃないのか?何の用だ?」
『朝練は終わったよ。ユキの写真撮ってもらう日を決めようと思ってさ。教室にいると思ったけど居なかったから連絡したんだ』
それは重要だな。
「空いてる日はいつ?部活あるだろ?合わせるぞ?」
『じゃあ早速で悪いけど、今日とかどう?』
願ったり叶ったりだ。
「いいぞ」
『了解。じゃあ放課後一緒に帰ろう』
一緒に帰るのは嫌だな…それに準備もしたい。
「いや、準備したいから俺は先に帰る」
『準備ってなんの?』
「カメラ」
『カメラは持ち歩いてるんじゃないの?』
「美撮だけでも素晴らしいものは撮れるが、より良く撮りたいだろ?お互いに」
『うーん…よくわからないけど、いいものにしてくれるなら任せる』
「あぁ、そこは任せてくれ。じゃあ後でお前の家の住所送っておいて」
『了解』
よし。これで一緒に帰るのは回避した。
『ところでさっきから楽器の音が聞こえるけど、誰かいるのかい?』
「ん?あぁ、同じクラスの桜がいる。いるだけだけど」
『え?桜さんが?そうなんだ』
「じゃあ切るぞ」
「あ、あぁ。じゃあまた後で」
通話終了。そういえば家族以外で電話したのは久しぶりだった。珍しいこともあるもんだな。
珍しいと思っていたのは俺だけではなかったようで、桜も不思議そうに俺を見ていた。
「あんたに電話するような友達いたんだ。仲良さそうだったけど」
失敬な。まぁ電話するような奴いないのも事実だったんだが、それはさておき…
「友達でもないし、仲良くもない」
「仲良くないのに家の住所聞くんだ」
「利害の一致と成り行きだな」
「利害…?ま、まさか、あんた…!」
コイツ急に赤くなりだしてどうしたんだ?
「あんた、え、エッチなことを…!?」
「待て待て待て待て!発想飛び過ぎだろ!相手は男だぞ!?」
「男!?あんたモテないからって、そんな…!?」
「おいこら待て!違うわ!犬の写真の撮影依頼だよ!お前の頭どうなってるんだ!?」
「えっ…犬?なんだ…驚かせないでよ…」
こっちが驚きだけど!?
「お前の頭は思春期男子かよ…」
「あんたが紛らわしいこと言うからでしょ?」
俺のせいか?
「まぁいいわ。ところであんたに写真の依頼するような稀有な人って誰よ?同じクラス?」
「んあ?あぁ、水瀬だよ。知ってるだろ?」
「知ってるも何もたまに遊ぶ…って、え…?ええっ!?な、なんであんたと水瀬君が!?」
そういや、一緒にいるの何回か見たことあるかも?まぁ、どう考えても俺とは接点ゼロだからそりゃ驚くわな。
「成り行きだって言ったろ」
「どうなったらそうなるのよ!?私だって水瀬君の家に行ったことないのに…」
なんだかよくわからないけど、桜が一人でああでもないこうでもないと考え始めた。そして、何かを決意したように俺と向かい合う。
「その…あんたに頼むのも癪なんだけど…こうなったらあんたに頼むわ」
癪なら頼むなよ。
「え?やだ」
「お願い!私に協力して!」
俺の話を聞いて下さい。
1話目、ありがとうございますっ!読んで頂いて!
さてさて、記念すべき第一章は幼馴染展開です。
私がよく聞く話としては、幼馴染とはくっつかない、ということです。
それを文字通り、文字で表そうと思います。
あ、面白くないですか?ごめんなさい。
こんなんでも、お付き合い頂ければ幸いです。