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#12 俺が勘違いをするまで

こんにちは!

明日葉晴です!


言葉っていうのはちゃんと伝えないと、人には正しく伝わらないものだと思います。

勘違い、すれ違い。

その大体が気持ちの伝達ミスだと思います。

皆さんはちゃんと言葉を伝えてますか?


ではっ!本編をどうぞ!

 君のことは最初、本当にただの友達だとしか思ってなかった。でも君の事をよく知って、俺は初めて人を好きになった。


 俺はこれからも、あの夏の暑さを忘れないよ。


 〇


 太陽の光が燦々と降り注ぐ夏。蒸し暑い体育館の中で高校に入ってから初めて大会にレギュラーとして出ていた。

 その時は、応援に来てる吹奏楽部の演奏を気にかける事が出来ないくらい緊張して必死だった。


水瀬(みなせ)!」

「はいっ!」


 決勝戦、残り時間も少なくこっちが僅かに押し負けているとき、先輩からボールが回ってきた。

 相手ゴールを向くと、フリースペースが出来ていた。


 絶好のチャンス…!


 俺は迷わずそこに飛び込み、シュートを放つ。


 ガシャン!パスン!


 俺のシュートはゴールに入って逆転した。会場は大盛り上がりで、中には俺を名指しで叫ぶ人もいた。


「ナイッシュ。お前に出して正解だった」

「よくやった!このまま守り抜くぞ!」

「はいっ!」


 パスをくれてた先輩と部長から褒められ、ポジションに戻る。


 その後、俺が取った逆転をチームで守り抜き、大会に優勝した。

 それから俺は、部活の仲間に加えて、応援に来てた人達…主に女子からやたら大袈裟に()()()褒め称えられた。


 〇〇


 大会がおわって、打ち上げで散々盛り上がった後の帰り道、俺は学校に忘れ物をしたのを思い出して取りに行くことにした。


 もうすぐ日が沈む時間、俺は忘れ物を部室で取って帰ろうとした時、どこからか楽器の音が聴こえた。


 これは…体育館の方かな?吹奏楽部の人でもまだいたのかな。


 気にする余裕もなかったけど、吹奏楽部の人が応援に来てたのは聞いていたから、お礼を言おうと思い音のする方に向かった。


 見当たらないな…裏?


 体育館の裏、ちょっとした庭のようになっているところに同じクラスの人がいた。


 (さくら)さんだ。なんで一人なんだろう…


 気になりはしたけど、ひとまず声を掛けるのを止めて演奏を聴くことにした。


 綺麗な音だな…


 数回遊びに混じったことがある程度で、よく知らなかったけど、綺麗な人だとは思っていたから、ぴったりだと思った。


 ひとしきり演奏が終わると俺は拍手をした。そこで初めて俺がいることに気付いたのか、(さくら)さんは驚いた様子で俺を見た。


「えっ!?水瀬(みなせ)君!?いたなら声掛けてよ…こっそり聴かれるのは恥ずかしいから…」


 (さくら)さんが照れたように言う。クールな人だと思ってたから意外だった。


「ごめんごめん。今度は堂々と聴かせてもらうよ」

「あー…えっと、そうじゃないけど…まぁいいかな。ところでなんで学校にいるの?」

「忘れ物を取りに。(さくら)さんこそ、なんでいるの?」

「バスケ部の大会の後、戻って各自解散だったんだけど、そこから自主練してた」


 意外と努力家なんだな…


「そうなんだ。あっ、そうそう。大会応援ありがとうね」

「お礼はいいよ。学校命令だからね。それに、水瀬(みなせ)君は気にしてなさそうだったし」

「あー…あはは…よく見てるね」

「まぁね。水瀬(みなせ)君、目立つから」


 目立つ…か…


「でもまぁ、普通試合に集中してれば気にしないよね。他の人もそうっぽかったし」

「ははっ!そうかもね。皆集中して活躍したから優勝出来た」


 そう、皆活躍したんだよな…


「あ、言ってなかったね。優勝おめでとう。逆転シュート決めたし」

「あぁ…ありがとう」

「でも、あのパス出した人も凄かったね。よく後ろにいた水瀬(みなせ)君に気付いたよね」

「えっ?あ、あぁ、あれは声の方向で判断したんだよ」


 あの先輩はうちの司令塔だ。


「そうなんだ。あ、あと、腕になんか巻いてた人も凄いと思ったな。水瀬(みなせ)君にボールが向かった瞬間に動いて、スペース作ってたし」

「あぁ、それは部長だね。それは知らなかった。俺はたまたま空いてたんだと思ってがむしゃらに突っ込んだけど…」


 部長はいつも体を張ってチャンスを作る。


「へぇ。あまりに自然だったから作戦かと思った。他の人も…」


 俺は正直、この時また俺だけ褒められると思ってた。でもそれは自意識過剰だったみたいで恥ずかしくなった。


 (さくら)さんはその後、()()()()()全員の凄かった所を挙げた。ひとしきりしゃべると、はっとした顔で俺を見た。


「あっ!ごめんねっ!一人でいっぱいしゃべって!忘れ物取りに来ただけなのにね」

「いや、大丈夫。あんまり話したことなかったから、話せて良かった」


 本当に、良かった…


「そっか。なら良かった」

「じゃあ俺は帰るけど、(さくら)さんはどうする?」

「んー…私はもう少し練習して帰るよ」

「そっか。じゃあまた学校で」

「またね」


 そうして、その日は別れて行った。


 〇〇〇


 大会からしばらくして、今度は一年生だけが出れる小さな大会があった。当然、うちの高校もエントリーし、大会経験のある俺はレギュラーに選ばれた。


 大会当日の土曜日。小さく、特に影響のある大会でもないのにも関わらず、多くの人が観戦に来てくれていた。そのなかには(さくら)さんもいた。


「お前ら、小さな大会だからって気を抜くなよ!」

「「「はいっ!」」」

「よしっ!じゃあおもいっきりやってこい!」


 監督の先生に見送られ俺達は試合に挑んだ。一回、二回とどんどん勝ち進み、準決勝まで勝ち上がった。


 休憩を挟み迎えた準決勝。俺達は気合い充分で試合に挑んだ。しかし相手は更に気迫があった。何故なら、相手は夏の大会に決勝で戦った相手だったから。

 そんな相手の気迫に呑まれ、俺達は押された。それでもなんとか食い付き、奇しくも夏の大会と同じように、残り時間僅かの、僅差でこっちが追う側となった。


「皆!追い上げろ!」

「「はいっ!」」


 監督の先生から檄を飛ばされ、必死に追いすがる。そして、俺にボールが回り、一瞬考える。


 スペースは…ある。けど、俺はマークされてて無理だ…ここは…


吉田(よしだ)!」

「おうっ!」


 俺はフリースペースに近かった吉田(よしだ)パスを出す。しかし…


 しまった…!


 俺は僅かにボールを滑らせ、パスコースが若干狂った。軌道がずれたボールは相手に防がれることはなかったものの、正確に吉田(よしだ)には届かず、難しい位置に行く。


 ダメだ…取れない…!


 その考えは案の定的中し、ボールは敵へと渡ってしまう。そして、そのまま奪い返すことが出来ずに試合は終了してしまった。


「ごめん。吉田(よしだ)…」

「気にすんな。あの状況でベストな俺にパス出したんだ。取れなかった俺が悪い。だって()()()()取ってただろ」

「それはわからないよ…」


 その後、他の人にも同じように謝ったけど、皆似た様な言葉を返した。一応監督の先生は俺に注意したけど、それも吉田(よしだ)より注意されることはなかった。


 明らかにミスしたのは俺なのに…


 俺だけが釈然としないまま、その日は解散になった。


 〇〇〇〇


 大会から二日後。俺は普通に登校すると、教室が騒がしかった。不穏に思い教室を開けると、吉田(よしだ)が女子に囲まれていた。


「あんたのせいで大会負けたじゃないの」

「せっかく水瀬(みなせ)君がチャンス作ったのに」

「私達も応援に行ってたのに」


 違う…!吉田(よしだ)のせいじゃない…!


 俺はそう思い、教室に入った。


「皆!違うよ!あれは吉田(よしだ)のせいじゃないっ!」


 俺は吉田(よしだ)を囲んでいた女子達に声を掛けた。


「あっ!水瀬(みなせ)君っ!そんな庇わなくていいんだよ?」

「ほら、水瀬(みなせ)君優しいからあんたのこと庇ったじゃない」

水瀬(みなせ)君なら取れたボールを落として」

「謝んなさいよ」


 しかし俺の言葉は届かず、さらに吉田(よしだ)を責める声を強めただけだった。


「違うって…」

水瀬(みなせ)、いい。俺が…」


 吉田(よしだ)が謝ろうとした。その時。


「アホくさ。なんで吉田(よしだ)君しか責めないのよ」


 振り向くと(さくら)さんがいた。


「なによ、翔子(しょうこ)。コイツ庇うの?」

「庇うとかじゃないわよ。私はなんで吉田(よしだ)君しか責めないのって言ったの」

「どう違うのよ!」

「ミスしたって意味なら水瀬(みなせ)君も責めるべきでしょ?って言ってんのよ」

水瀬(みなせ)君が何をミスしたっていうのよ?」

「あんた、ホントに試合見てた?明らかに最後パスは軌道がずれてたじゃない」


 あぁ、やっぱり(さくら)さんはちゃんと見てたんだ。


「だとしても、水瀬(みなせ)君なら…」

「それ」

「はぁ?」


 (さくら)さんは誰もが言っていた言葉を遮った。


「あんた達は“水瀬(みなせ)君なら”って言う。確かに実際に似たような状況で取って、シュート出したよ?でもなおさら水瀬(みなせ)君に言うべき事があるんじゃない?」

「な、何をよ…」

「“先輩ならちゃんと投げてたのに”って」


 (さくら)さんは誰もが言わずにいた事を言った。いや、もしかしたら(さくら)さんだけが思っていたことかも知れない。


「先輩ならって…先輩は年上だし、吉田(よしだ)は同い年だし、違うじゃない」


 女子の一人が勝ち誇ったかの様に言った。しかし(さくら)さんは怯まなかった。


「その年上に混ざってこの間の大会に水瀬(みなせ)君は出たのよ?なら先輩と同じレベルを求めても問題ないでしょ?」

「くっ…」

「この場の正解は二つ。二人を責めるか、二人を労うか。それだけよ。私は後者をオススメするわ」


 (さくら)さんがそう言い放った時、始業のチャイムがなった。


「ちっ…この場は許してあげる」

「そう」


 そう言って女子達は教室を出て行った。


「ほら、水瀬(みなせ)君も吉田(よしだ)君も席に着こうよ」

「あぁ…そうだね」

「お、おう」


 それだけ言って俺達も席に着いた。

 多少の戸惑いや不安は残ったけど、俺はどこかすっきりしていた。


 そして、俺は(さくら)さんの事を気にするようになった。


 〇〇〇〇〇


 一度気になったらなんでも気にしてしまうもので、俺は(さくら)さんがよく視界に入るようになった。それに、不意に聴こえてくる話も。そうして、(さくら)さんの人となりを知るとますます気になっていった。


 そして時間は過ぎ、夏休みになった。部活の練習中でも、吹奏楽部の音楽が聴こえて来るとなんだか嬉しくなる。


 きっとこれが人を好きになるってことなんだろうな。


 そんな自覚を覚え始めたある日。俺は部室に忘れ物をした。忘れ物を取って帰ろうとした時、聴き覚えのある音が聴こえた。


 これは…


 俺は真っ直ぐ体育館裏に行くと、思った通り、そこには(さくら)さんがいた。


(さくら)さん。練習聴かせてもらえるかな?」


 俺は(さくら)さんに声を掛けた。声が届いたのか(さくら)さんは演奏を止め、こっちを向く。


水瀬(みなせ)君か。いいよ。その約束だもんね」


 それだけ言って(さくら)さんは演奏を再開する。

 いつかの約束を覚えていたことに嬉しさを感じ、俺はその演奏に聞き入った。

 ひとしきり演奏が終わったのか、(さくら)さんは手を止めて俺の方を向いた。


「どうだった?」

「綺麗な演奏だと思うよ」


 俺は拍手しながら素直に感想を言った。


「ありがとう」

「流石、一人残って練習するだけはあるよ」

「そんな、まだまだだよ」


 (さくら)さんはそう謙遜した。

 俺は実際のプロの演奏は聴いたことないけど、それでも(さくら)さんの演奏は綺麗で、人の心に届くと思う。


 そう思うのは俺が好きだからだろうか。


 俺はその時感じたことにを素直にいうことにした。


(さくら)さんの名前みたいに思ったよ」

「私の名前…」

「うん。桜の中を翔てるような、そんな綺麗で爽やかな感じ」

「あ…えと…ありがとう…」


 (さくら)さんは気まずそうに顔を逸らした。


 んー…ちょっとキザだっただろうか?変な奴と思われなければいいけど…


「ところで、水瀬(みなせ)君はまた忘れ物?」


 俺の気持ちをよそに、話題を変えるためか(さくら)さんは悪戯っぽくそう言って笑う。


「忘れ物だよ」


 (さくら)さんの笑顔にドキリとしつつ、普通を装いそう言った。


「意外と抜けてるんだね」


 そんな事を言われチャンスだと思い、俺はずっと気になっていた事を口にする。


「どう思ってたのかな。俺の事、どう思う?」


 出来るだけ自然に。冷静を装った。そのつもりだった。


 あぁ、俺の事どう思う、なんて告白してるみたいじゃないか。これは完全にミスかな。


 遠回しに告白とも取れる言葉に内心焦りながらも、(さくら)さんの言葉を待った。


 沈黙が辛いな…


 焦りからか長く感じる静寂。そして、しばらく悩んだ様子だった(さくら)さんが口を開いた。


「完璧な人。抜けてるところ知ってもやっぱりそう思うかな。私なんかがちょっと頑張っても、手が届かないくらい高いとこにいるって思う」


 (さくら)さんの言葉を聞いた時、俺は悟った。


 あぁ…きっと(さくら)さんは、俺の事を何とも思って無いんだ。


 俺はさっきより平静を装い、笑った。


「ははっ…抜けてるんじゃ完璧じゃないよ」

「えー…水瀬(みなせ)君がどう思うか聞いたんじゃない」

「そうだね。ごめん」

「まぁいいよ」

「じゃあ、手が届かないって思われて遠ざけられないように、もうちょっと崩そうかな」


 (さくら)さんに意識してもらう努力をしてもいいかな。


 そんな願いを込めて俺は言った。


「んー…いいよ。そのままで。水瀬(みなせ)君はそのままが一番いいよ」


 そっか、意識してもらうチャンスもないんだね。


「わかった。ありがとう」

「どういたしまして」


 チャンスがないなら、せめて(さくら)さんが願う俺でいよう。意識してもらえないなら誰もが見上げる人になろう。


 でも…


「じゃあ俺は帰るけど、(さくら)さんはどうする?」

「なら…私も帰ろうかな」


 今は…


「そっか。じゃあ送るよ」


 これくらいは許してもらえるかな…


「んー…じゃあお言葉に甘えよっかな」


 そんな風に笑う(さくら)さんをずるいと思いながらも、俺は嬉しかった。


 そうして、思いをしまって、(さくら)さんを送って行った。だけど、せっかくの時間だったのに俺は振られた事へのショックで何を話していたかよく覚えていない。


 あぁ、今が夏で良かった。もし涙が出たとしても、汗と言って誤魔化せるから。


 〇〇〇〇〇〇


 今では笑い話に出来るけど、あの時俺は、今もだけど、本当に君が好きで、だから振られたと勘違いしてた。


 諦めようと何度も思った。でも出来なかった。


 そのまま二年生になって、同じクラスになった時も気まずい気持ちと嬉しい気持ちが半分ずつくらいあったんだ。


 それからもう一つ。君の幼馴染が同じクラスなったのを知った。

 未練がましいかもしれないけど、最初、幼馴染と仲良くなれば、また君に意識してもらうチャンスが出来るんじゃないかと思った。

 友達がいなくて変人って聞いたけど、正直どうでもよかった。どうにか仲良くなれないか考えて、散歩して偶然会った時は本当にチャンスだと思った。


 何をしたか、後は知ってるよね。


 でも、最初は利用しようと思ってたけど、接しているうちにいい人なんだって知って、本当に友達になりたいと思ったんだ。

 俺は君がくれた出会いだと思ってるよ。


 俺は君を好きになって良かった。

 君を好きになったから、俺は本当の友達が出来た。遠慮のいらない本当の友達が。

 そして何より、人を好きになるってことはこんなにも嬉しい事があるんだって知れた。


 だから…


 俺を好きにさせてくれてありがとう。翔子(しょうこ)


京弥君の過去編、お読み頂きありがとうございます!


今回は京弥君の視点での話でした。

一人称が英治君と同じなのでちょっと混乱した人がいるかもしれないですねw

すいません。

えー…本編では全く使われなかった、京弥君のバスケ部要素と、翔子ちゃんの吹奏楽部要素をふんだんに使いました!

いや、本当にもったいないなとは思ってたんですよ。


ではっ!引き続きお付き合い頂ければとても喜ばしいです!

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