#11 お前ら、プラス俺
こんにちは!
明日葉晴です!
私は大体どの物語でも、その後ってどうなんだろう、と思ってしまいます。
別に全部の物語の結末に不満があるわけじゃありません。
ただなんと言いますか…よくわからない感覚です。
では、本編をどうぞ!
お前らの話は終わったはずだ…なのに…なんで…
まだお前らは俺を巻き込もうとするんだ!
〇
桜と水瀬が告白をし合って、俺は役目を終えた。そう思って次の日の土曜日は久しぶりに美撮を連れて思う存分写真を撮っていたが…
んー…なんか違う…
どうも二人を撮った時みたいな感覚にはならない。決定的な何かが足りない気がする。
そんなモヤモヤを抱えて日曜日。家族はそれぞれどっか行って、俺は部屋で写真を確認していると、来客があった。
ピンポーン
「どちら様ー…って、何してんの?」
玄関を開けると桜と水瀬がいた。
「やぁ英治。突然ごめんね」
「早く上げてくれない?」
「いや、図々しいわ!何で来たんだよ?」
「それを説明するから早く上げてよ」
「いやいや順序…まぁいいや…入れ」
疲れる…
「「お邪魔しまーす」」
「あ、今誰もいないから」
「そうなんだ。英治の親にも会って見たかったかな」
「そうなの?挨拶して損した」
「桜はもうちょっと水瀬の謙虚さを見習ったらどうだ?」
「私は英治の親にあったことあるでしょ?」
「っ…そこじゃねぇよ…」
桜が俺のことを名前呼びに戻ってたことに、不覚にも驚いてしまった。ちょっと照れる。
とりあえずリビングに通し、お茶を入れる。
「で、なんの用?」
「ははっ!直球だね。突然来たのは謝るよ。まぁその…今日来たのはね…」
「今日、私も京弥君も部活が休みなの。それで初デート行こうかと思ったんだけど、記念に写真欲しいから撮ってくれない?」
「お、おう…」
…一気に言われ若干押された。何気に桜が名前呼びになっている。
とりあえず…
「それなんてプレイ?」
ずっと言えなかったことを遂に言ってみた。
「プレイじゃないわよ!」
「あはは…変なこと頼んでごめん。俺も翔子もどうせ記念でなんか残すなら英治に写真撮ってもらいたいって思ってね」
「あー…なるほど。俺にお前らのイチャイチャを見て写真に収めろと」
「言い方があるでしょ!?」
いや、これ以外にどんな言い方があるんだよ…
若干嫌ではあったが、しかしこれはチャンスだとも
思った。前に二人を撮った時の感覚。あれがもう一度やってくるかもしれない。俺の中にはそんな打算が生れた。
「わかった。引き受けるよ」
「「本当!?」」
「ちょうど息抜きしようと思ってたところだしな」
「ちょっと!手を抜かないでよ!?」
「当然だ。写真を撮ることにおいて俺が手を抜くわけない」
「ははっ!そうだね。英治はそうでなくちゃ」
「そうね。英治はそれだけが取り柄だものね」
「否定しないが、なんか悔しいな」
「まぁまぁ、行こうか」
そうして、二人プラス俺での奇妙なデートが開始されることになった。
〇〇
結論から言おう。はっきり言って、二人の初デートはかなり注目された。
「なにあれ?なんかの撮影?」
「どこのモデルなんだろ?」
「男の人かっこいい…」
「あの女の子、スタイルいいなぁ…」
控えめに言っても二人は美男美女の部類だ。それを後ろからも前からも写真を撮りまくってる俺がいる。そりゃ注目を集めるだろう。
誰もこれがカップルのデートだとは思わんだろうな…
普通に考えれば二人の時間を見られたくはないだろう。なのにコイツらと言ったら平気な顔で撮られてる。むしろ、進んで撮られに来ることもある。
「英治、ちょっとそこのクレープ屋の前で撮ってよ」
「あいよー」
「翔子、この先に公園がある。そこで食べようか。英治、この先の公園でも撮ってもらえないかな?」
「りょーかい」
ガンガン注文出しすぎだろ。
「おい二人とも、もうちょいくっつけ。光の入りが悪い」
「わかった」
「う、うん…」
俺も大概だったわ。それと桜、今の照れ顔はよかったぞ。
そんな具合で最早撮影が本題のような不思議なデートが進行していった。そして、デートが映画鑑賞に入り、流石に俺が撮影するわけにはいかないので映画館の外で待っていた。
まぁ、二人だけの時間も必要だろうからな。あ、そうだ。
俺は少し買い物をしてから、近くのカフェでパソコンを開き、今日撮った写真を整理していた。その時…
「あれ?鳥飼じゃん。何してんの?」
どこかで見たことあるギャルが現れた。
「あー…確か同じクラスの…?」
「狩屋よ。クラスメイト覚えてないとかウケるんですけど」
あ、思い出した。俺を取り囲んだギャルの一人だ。話し掛けてくるのは意外だ。
しかし今遭遇するのは不味い。非常に不味い。何せ桜と水瀬のツーショットがたんまりとパソコンに入ってる。これを見られると大騒ぎになる…気がする。
「でー、パソコンいじって何してんの?」
ギャル…狩屋が俺のパソコンを覗き込もうとした、その瞬間。
「英治ー!」
「えっ?」
いつもは登場タイミングが神がかってる水瀬京弥が最悪のタイミングでご登場だ。ご丁寧に桜を伴って。
「あれ?水瀬君と…桜?」
「えっ…?狩屋…さん?」
「狩屋…なんで英治といるの?」
「あちゃー…」
最早言い逃れは出来ない…いや、まだ手はあるか。
「狩屋…これはな…俺が撮影させて欲しいと…」
「英治、いいよ。どうせ明日言うつもりだったんだ」
「水瀬…」
「えっ?えっ?どういうワケ?」
俺と水瀬のやり取りに一人困惑する狩屋。そんな狩屋に水瀬が向かい合った。
「狩屋さん、俺と翔子は付き合うことにしたんだ」
水瀬の発言に、目を見開いて驚いた様子の狩屋。やがて震え出した。
これは…相当怒ってるか…?
俺がそう思った時。
「ぷっ…あはははっ!マジウケる!そんな堂々と言われたらウケるしかないってぇ!そっかぁ、良かったじゃん」
「「「えっ!?」」」
まさかの反応に俺達三人は一様に驚いた。
「えって何よ?」
「いやだってお前、俺のこと囲んだじゃん」
「ん?まぁそれはアレよ。ノリ的な」
「ノリで人に恐怖を植え付けるんじゃねぇよ!?」
「あはっ!ごめんって」
そんなさっぱり謝れるとこっちも何とも言えなくなるんだが…
「んー…まぁいいけど…」
「ありー」
かっる!
「ところでお前は水瀬が彼女作ってもなんとも思わないのか?」
俺は色々置いといて、気になってたことを聞いて見ることにした。桜と水瀬も気になっていたのか、興味深げに狩屋を見た。
「へ?別に?ウチには関係ないじゃん?」
えー…
「お前、水瀬が好きじゃないのか?」
「だーかーらー!鳥飼を囲んだのはノリだって!そりゃ好きか嫌いかで言ったら好きだよ?でも何て言うか…アイドル的な感じ?別にそこまで話したことないから友達でもないし、そういう好きが今一番正しいかな?」
なんかずいぶんさっぱりしてんな…
「俺、女子って大体が水瀬が好きなんだと思ってた」
「だから何度も言わせんなしっ!大体、ウチには好きなヤツが…」
「え?」
「っ!ウチの話はいいのっ!とにかく!ウチは別に水瀬君が誰と付き合おうがいいのっ!」
「お、おう…」
なんか盛大に誤魔化したな…
「じゃあウチ行くから!」
「じゃあね」
「また」
「おう、お前意外といいヤツだな」
「意外とは余計だし!」
そう言い残し、狩屋は去って行った。
「なんと言うか…嵐のようなヤツだな」
「そうだね。でも、悪い子じゃなさそうだ」
「そうね。私もあまり話したことなかったけどいい子なのね」
見た目ギャルだけど。
「まぁ…アレだ。少なくとも一人は祝福してくれるみたいだし、良かったんじゃね?」
「「うん」」
そんなちょっと意外な一幕はあったが、それ以降も概ね順調なデートが行われた。
〇〇〇
日も落ちてきた頃、今日はもう帰る事になり、俺の前で二人が楽しそうにして歩いている。
「んー…!ずいぶん遊んだわね!」
「ははっ!そうだね」
もうすっかりカップルらしい距離感で平然と歩くようになった。
あー…超絵になる…
正直な話、最初はイチャイチャを見せ付けられるって何なんだとも思ったが、意外とこれはこれでありかもしれない。
コイツもだんだんとカメラを意識しないようになって来たしな。
概ねいい撮影ではあったが、しかし俺はいまいち満足出来てはいなかった。
結局、あの時の感覚はわからなかったな…
あの時の感覚。二人が告白した後に撮った時の感覚。それが今日、二人を撮影することで解ればよかったが、そう簡単にはいかなかった。
まぁ、いいか。
二人が楽しそうに歩いているのを見て、割とどうでも良くなった。
「英治、今度は三人でちゃんと遊ぼうな。な、翔子」
「そうね。というか、今日も混ざりたければ混ざってもよかったのよ?特に映画とか」
それはそれで俺が居たたまれなくないか…?それに…
「いや、どうせ今日みたいな感じになるだろ。俺も充分楽しめたぞ」
どうせ俺は終始美撮を構えるだろうし…
「あははっ!確かに。英治らしいと言えば英治らしいね」
「それもそうね。写真撮らずに遊ぶ英治は想像出来ないわ」
「そういう事だ。俺は写真を撮ってるだけで充分混ざってる気分だよ。あぁそうだ…これ」
俺は二人が映画を見ている間に買っていた物を、二人に差し出した。
「これは…写真のフレームか?」
「惜しい。これはデジタルフォトフレームだ。そこに今までの写真のデータをピックアップして入れたから、お前らにやる。記念だ」
「いいの?それなりにするでしょ?」
「自慢になるが、俺はコンテストでそれなりに稼いでる。それくらいなら問題ない」
「ほんと自慢ね!なら、ありがたく受け取るわ」
「そうだね。ありがとう」
そう言って、二人は笑顔でフォトフレームを受け取った。
あ…
パシャッ!
「「あっ…」」
俺は再び不思議な感覚が来て、無意識で写真を撮る。
「もう!撮るなら言いなさいよ」
「ははっ!まぁしょうがないよ。英治だし」
「はぁ…そうね。英治だものね」
「すまん。ありがとう」
俺は謝りつつも素直に感謝した。
またか…なんなんだろう…まぁいいか…
結局感覚の正体はわからないが、まぁそういうモノなのだと自分の中でも結論付けた。
「あ、そうだ。このタイミングで言うのもアレなんだが…ちょっと相談いいか?」
俺は少しいい淀みつつ、二人に問いかける。
「なに?言ってみなさい」
「あぁ、遠慮しなくていい。英治には充分感謝してるんだ。何でも言ってくれよ」
「そうか。なら遠慮なく言うが、お前らのこの間撮ったユキとの写真、今度のコンテストに出していいか?」
今度ある動物がテーマのコンテスト。俺は今のところ、アレ以上出来のいい写真を撮れる気がしない。
「えぇっ!?えーっと…」
「あははっ!俺はいいよ。それほどいい物なんだろ?」
「あぁ、今俺が出せる全てだ。それは間違いない」
「英治がそこまで言うなら俺は止めない。元々、コンテストに協力するって話だしね」
「私も、京弥君がいいならいいわよ」
「ありがとう。恩に着る」
そうして、コンテストに出す写真も決定し、二人プラス俺は家に帰るのだった。
後日談を読んで頂き、ありがとうございます!
二人と一人の奇妙なデート、如何でしたでしょうか?
私としては二人らしいデートになったと思います。
それとお気付きかと思いますが、狩屋ちゃんは現在制作中の2章のメインです。
フルネームは後程。
また、息抜き(笑)がてら過去の話も現在制作中です!
では、次回もお付き合い頂ければ幸いです!