#10 俺はただ巻き込まれただけ
こんにちはっ!
明日葉晴ですっ!
問題には常にシンプルな解法があるのだと私は思います。
この章のコンセプトはそういう風にしてます。
シンプルなことばかりじゃない。
という方もいるかもしれません。
まぁこれはあくまで私が勝手に思ってるだけなので、気にしないで下さい。
ではでは、本編をどうぞー!
前回のあらすじ
水瀬、告白するってよ。
〇
昼に水瀬の決心を聞いた日の夜。まぁ予想通りというかなんというか、桜が俺の家に来た。
「写真」
「はいよ」
まぁまずは約束通り写真を渡す。
「で、今日は二人残った時なんの話したの?」
「それは…」
水瀬がお前に告白すると言えたらどんなに気が楽だろう。
「悪いが言えない」
「撮影協力しないと言っても?」
ぐっ…!それを盾にするのは卑怯だろ!だが…俺には水瀬とも約束がある…だから…
「っ…言っ…えな…い」
「そう…」
…あれ?責めて来ない?
「もっと責めないのか?」
「アンタ昔から口堅かったでしょ?写真優先しないってことは水瀬君となんか約束でもしたんでしょ」
ご明察だ。今日の件もだが、水瀬が桜を好きなことが伝わる内容は一切言っていない。
「悪い」
「いいわよ。水瀬君に秘密があるのは私も一緒だもの」
コイツはどこまでも律儀だ。自分に隠し事があれば、相手のも許容する。どこまでも対等であろうとする。多分、そんなとこに水瀬は惹かれたんだろうな。
「でも、これだけは聞かせて。さっき水瀬君から部活が休みの日を聞かれて、この間の公園に呼ばれた。この事と関係ある?」
まったく、時々妄想が激しい癖に、こんなときは頭が冴えるのか。
俺は何も言えずにただ黙った。
「そう…わかったわ。ありがとう」
沈黙を肯定とみなしたのか否定とみなしたのか、俺にはわからなかった。だがおそらく、今の桜は正しく解釈しただろう。
「次の金曜日、夕方6時。この間の公園」
「え?」
「水瀬君に呼び出された時間と場所よ」
「なんで俺に伝える?」
「私、その日、水瀬君に何を言われても、告白だけはするわ」
「何を言われてもって…」
「あぁやって、水瀬君の家に行って、歓迎されて、呼び出された。そりゃちょっとは期待するけどね。でも、今までの子と同じなら、近付き過ぎたら離されるのよ。だから私は、期待も覚悟も持ってくわ」
「そうか…それで?」
「アンタに…見届けて欲しい」
「そう…か。わかった。見届けるよ」
「ありがとう。結果がどうなっても協力のお礼はするわ」
「あぁ、ありがとう」
「こちらこそ。じゃっ、私帰るわ。多分今日で来ること無くなるでしょうけど、ちょっと…その…昔に戻ったみたいで…楽しかったわ。ほんのちょっと…ね」
「あぁ、俺も久しぶりに人と関わって少し…楽し…かった」
「そ、じゃあね。水瀬君にはこの事言わないでね」
「言わねぇよ。じゃあな」
そうして、微笑みながら桜は俺の部屋から出ていき、自宅へと戻って行った。俺は一人、部屋で考える。
ふぅ…
「えっ?なにこれ?」
数分前に思ったことを前言撤回したい。何も正しく解釈してなかった。落ち着いてるから暴走してないのかと思ってた。違った。
「一周回って、静かに妄想が爆発してんじゃねぇか!」
なんだよ、揃いも揃って。何を俺に見せようとしてんだよ。二人して見届けろとか。なんてプレイだよ!?
「もうやだ。思考的にはアイツら息ぴったりじゃねぇか。さっさとくっつけよ」
行きたくねぇなぁ…でも約束したしなぁ…
そんな独り言と思考ループをしてる最中、携帯がメッセージを受信した。送り主は水瀬だ。
『次の金曜日、18時に』
「知ってるよ!!」
半分八つ当たりのように叫んだ。
〇〇
それから、時間が過ぎるのは早かった。その間、ちょいちょい水瀬に絡まれたりして、いつの間にか、俺と水瀬は話してるのは普通という認識がクラス内で生まれたようだった。
まぁ相変わらず、話し掛けてくるのは水瀬だけだが。
そして、運命の…と言いたくない金曜日。俺は公園の草むらに隠れていた。まだ公園には俺以外誰も来ていない。
「ワフッ!」
訂正。一匹いる。
「なんでお前ここにいるの?」
何故かユキがいた。俺の隣で悠然と座っている。
「ワッフン!」
「水瀬を見届けに来たのか?」
「ワフッ!」
「そうか…でもなにも心配ないぞ?もう両思いが決まってっから」
「ワフゥ!?」
「なぁ?アホらしいよなぁ…」
「フゥウゥ…」
もう普通に会話出来たよ…
「ところで、ユキ、水瀬はお前のこと探してんじゃね?」
「フッ!ワフッ!」
「あぁ、水瀬が出た後に抜け出したのか」
「ワフッ!」
「バレる前に帰れよ」
「ワッフ!」
犬にしとくのがもったいないほど賢い気がする。
「ワフッ!」
「おっ。来たか」
先に来たのは水瀬だ。
「ここからは静かにな」
「クゥ」
「よし。表情は…普通だな。読めん。どう思う?」
「フフゥ…」
「不安そうなのか?」
「ワフッ」
「流石、俺より付き合い長いだけあるな」
「フッ」
ドヤ顔っ!?
「ま、まぁいい。桜は…来たか」
これで役者が揃った。さて、結末のわかる茶番劇を見届けようか。
「やあ。来てくれてありがとう」
「ごめん、遅くなって」
「大丈夫。時間通りだし、俺もさっき来たとこだから」
よし、会話は聞こえる。てかあの台詞言う奴いたんだな。
話し声は問題無く聞こえる。だがしかし、お互いに緊張があるのか、最初の会話以降、沈黙が続いた。
焦れったいな。さっさと告白しろ。結果見えてんだよ。
「「あのさっ!…えっ?あ、どうぞ…」」
願いが二人に届いたのか、二人は同時に声を掛け合い、譲り合った。
息ぴったりかよ。
「じゃあ、俺から言わせて」
「うん…」
「俺、ずっと友達は皆平等がいいと思ってたんだ」
「…うん」
「だから、同じ人とずっと遊ばないようにしたし、人を家に呼んだりもしなかった」
「そう…なんだ。ごめんね。この間押し掛けたりして」
「ううん。違うよ。謝って欲しいんじゃないんだ」
「え?」
「俺にはずっと好きな人がいる。でも特別な人を作ったら、他の人は離れていくような気がして、ずっと踏み出せなかった」
「そうなんだ…」
「でも、英治に気を遣いすぎって言われて、考えて、一歩を踏み出そうと思った」
「そっか…」
「その一歩は桜さん。君に向けた一歩なんだ」
「えっ?」
「好きだよ。桜さん。俺の、特別な人に、恋人に、なってくれないかな」
言った。他人同士が壁を作らないように、自分だけを壁で囲ってた水瀬が、桜に向けて、初めて壁を壊した。
「ダメ…かな…」
「えっと…いや…その…」
あ、ヤバい。せっかくいい雰囲気だったのに、桜がキャパオーバーで鈍くなってる。
アイツ、期待してるとか言っといて…
「やっぱり、桜さんは…」
おい、待て!それ以上は言うな!
「英治が…」
「バカっ!言うなっ!……あ」
堪えきれず、俺は思わず飛び出てしまった。
「アンタねぇ…」
「いや、うん。これは俺が悪い」
「はぁ…いいわ。お陰で頭も整理出来たし」
「そう言って貰えると助かる」
九死に一生を得た。
「えっと…英治がいるのは俺が呼んだから知ってるけど、桜さん、驚かないの?」
「えっ?水瀬君も呼んだの?」
「もっ…って、え?」
「どうも、二人に呼ばれました。鳥飼英治です」
「「えっ?」」
なんとも言えない沈黙が流れる…
「ぷっ…はははっ!なんだ。桜さん呼んでたのか。じゃあやっぱり…」
「ちょい待ち水瀬。桜、お前も言うんだろ?」
「うん…アンタに…英治に言われなくても言うわよ」
「お前…」
「やっぱり…」
桜がちょっと照れながら俺の名前呼ぶから、若干誤解が深まった気がするが、まぁそれもすぐ解けるだろう。
「水瀬君、あのね…」
「うん…」
俺がいるものの、雰囲気は戻り、緊張が二人の間に流れた。
「私…ね…」
「うん…」
「水瀬君が好き…です」
「そうか……え?」
「私を水瀬君の恋人にして下さい」
「えっ…あっ…!はいっ!」
「やったぁ!」
水瀬はまだ若干戸惑っているが、桜は喜びのあまり跳び跳ねた。
「ワッフゥッ!!」
「「「ええっ!?」」」
そして、跳び跳ねたのがもう一…匹いた。俺は草むらから飛び出したというのにずっと隠れていて、そして、このタイミングで飛び出してきた。
コイツ…出来るっ!
ユキは俺の横を通り過ぎ、桜と水瀬の間に入るように飛び、二人を押し倒した。
二人は盛大に倒れた後、起き上がり、ユキを挟んで見つめ合う。
「ふふっ…」
「ははっ…」
「「あはははっ!!」」
二人が同時に笑い合った時、俺の中で何かが走った。
撮らなきゃ…
パシャ!
「「えっ?」」
「あれ?」
俺が気付いた時にはすでに美撮を構え、シャッターを切っていた。撮られた二人は呆然とし、俺は俺で戸惑った。
「あー…すまん。体が勝手に」
俺は苦し紛れに言い訳をする。
「はははっ!英治は本当にカメラが好きなんだな!」
「はぁ…しょうがないわね。英治、あとでその写真も寄越しなさいよ?」
「いいねっ!記念だ」
「そうね。記念に」
「お、おう。ちゃんと印刷しとく」
「「よろしく!」」
〇〇〇
最初は面倒だったが、今は良かったと思う。
最後に撮った写真の感覚。別に良いものを撮ろうとか、そんなことは一切思わず撮ったその写真は、後で確認したら、今まで撮ったどの写真よりも納得がいくものだった。
そうして、俺が巻き込まれた、幼馴染と人気者の、互いに告白するだけだった話は、ひとまず終わりだ。
10話目、かつ第一章の最終話まで読んで頂き、本当にありがとうございますっ!
第一章の連日投稿は今日が最後ですっ!
なので今日はちょっと長めに話ますね。
まず、まぁ最終話とか言ってますが、後日談とか小話とか色々湧いてるんで、厳密に言えば一章の完結ではないです。
すいません。
で次に、今回の話ですが、今回はだいぶ悩みましたっ!
一応の最終話ということで、締めに入るにあたり、話の流れとかをですね…悩みましたねぇ。
主に告白のシーンを。
京弥君の告白部分だけを敬語にするとか、翔子ちゃんをツンデレ風にするとか、まぁ悩みましたよ。
因みにユキちゃんの参戦ですが、第一話に出てきた段階で、最後のシーンはほぼ思い付いてました。
それで、この章全体の話になるんですが、本当に最初の段階では、最後の写真を撮るところは、二人の写真にする予定だったんですよ!
しかも、かなりしんみりというか、泣き笑いみたいな感じで。
それがユキちゃんの参戦により、二人と一匹に変わりました。
で、それでもまだ泣き笑いオチにしようとしたんですけど、途中でこれはラブ“コメ”って言うのを思い出しまして。
あっ、一応泣き笑いオチも書いたんですよ?
でも、私はなんかそういうの苦手っぽくて…
まぁ、せっかく書いたので、途中まで形を残して、今のオチの形になりました。
現在は第二章と第一章の小話等々と制作中ですっ!
それではっ!次章とか次話とか諸々を、引き続きお付き合い頂ければ幸いです!