#9 被害者のはずなのに何故か事態の収拾にまわる
こんにちは!
明日葉晴です!
自分は被害者なのになんで責められるんだろう。
そんなことが稀にあると思います。
私も先輩とかのミスをなすりつけられて、謝ったりしてました。
でも、そんなことがあっても腐らず頑張りましょう。
いつかソイツらを顎で使えばいいんですよ!
では、本編をどうぞ!
前回のあらすじ
二度目の撮影会。策がはまる。
○
俺が策をめぐらせた翌日。先に水瀬がいることは確認済み。俺は気合を入れ、出来るだけ普段通りを装い教室の扉を開ける。扉を開くとざわめいていた教室が静まり、俺に視線が集中する。
「おっ!英治っ!おはようっ!」
「おう」
うん。ここまでは予想通り。ここ最近の定番だな。
「これ」
「これは…?」
俺は水瀬に封筒を差し出す。中にはもちろん昨日撮った写真が入っている。が、ここでは昨日撮ったことではなく、それより前に撮ったことにする。
「この間撮った写真だ。約束通り持ってきた」
「あっ…!そうか…ありがとう」
そういうと、クラスの視線がより一層集まる。俺はここで最後の一手を打つ。
「みんなにお前の家の犬を見て欲しかったんだろ?みんなに見てもらえよ」
「えっ…!えっ…と…」
気まずそうに水瀬は俺に近寄り、ひっそりと話す。
「英治、いいのか?昨日の写真って…」
「安心しろ。桜の写真は抜いてある。そっちとデータは今度やる」
「そ、そうか。ありがとう」
水瀬はちょっと照れつつ離れた。
「じゃあこれはやる。あとはみんなで見れば」
「わかった。ありがとう」
そういって俺は封筒を渡し、自分の席に戻る。俺が席に戻ると、クラスの奴らが一斉に水瀬に群がる。一応、桜も混じっていた。
いや、お前は写真やるよ。なんで群がってんだよ。
とまぁ思いはしたが言いはしない。言うだけ無駄だとわかっているから。そんなわけでこれで一応の終息を見せると思う。…だといいなぁ…
○○
はて、なんでこうなってんだろう。
「ねぇ。なんであんたが水瀬君と仲良くなってんのよ」
「調子乗ってんじゃないわよ?」
あー…なんでこうなんだよ…
俺は昼休みに、見たことあるギャル達に囲まれていた。なにこれデジャブ?超怖いんだけど。
「ちょっと、黙ってないでなんか言いなさいよ」
「なに?ビビってんの?」
「だっさ。ウケるんですけど」
知らんけど、ウケられてるんですけど。
「なんか」
「はぁ?」
「バカにしてんの?」
「ウケないんですけど」
次はダメだったらしい。ていうか、火に油を注いでしまった。超怖いよ。でもしょうがないだろ?なんか言えって言われたら、なんかって言いたくなるじゃん。でも、今の状況は…
あー…めんどくさ…
「あのさ、昨日の朝の話聞いてなかった?たまたま俺がいたから写真を撮っただけなんだよ。それ以上は全く関係ない」
「あっそ。じゃあアタシ達にも写真ちょうだいよ」
「なんで?」
「なんでもいいでしょ。いいからよこしなさいよ」
あー…もうダメだ。腹立つ。この学校って別に頭悪くないよな?
「写真は水瀬にやったからねぇよ。コピーさせてもらえ」
「そんなの頼めるわけないでしょ」
「なんで?話しかけるいい口実だろ?」
「だって…恥ずかしいじゃない…」
えー…ここでそんな乙女感出すの…?ヤバい。ウケるんですけど。言ったら確実にボコられるな。
相手が急にしおらしくなったおかげで、急速に怖さと腹立ちが収まって行った。
「で?くれんの?」
「いや、水瀬の許可がないんじゃやれない」
「うっ…」
おっ?水瀬の名前出すと怯むのか?
「ばっ…!バレなきゃいいじゃない!」
「普通にアウトだわ」
「うぅ…」
あれ?形勢逆転してる。なんだろう、この罪悪感。
「いいから!よこしなさい!」
「もうコイツ、シメようよ」
「ホント、ウケない」
「そうね、そうしましょうか」
なんて強引な!しょうがない…今度こそ助け呼ぶか…
俺はまた水瀬が乱入してくることはないと思い、今回こそは恥をかいて助けを呼ぶかと息を吸い込んだ。その時…
「なにしてんの?」
一瞬、また来たかと思ったけど、この声は違う。この声は…
桜…
「翔子じゃない。なんでここに?」
「まず私が質問してるんだけど。まぁいいわ。そこにいる奴に用があるのよ」
「アタシ達の後にして」
「私の質問に答えてくれた後、内容によるわ」
「ちっ…」
うわぁ…めっちゃ険悪じゃん…この前水瀬が来たときとは大違いだな。
「なに?幼馴染だからって助けようって?」
「全然違うし。そんなキモいやつなんて、用がなきゃ放っておくわよ」
うわっ、ひどっ!
「うわ、ひどぉ」
「ウケるんですけど」
ひどいことに関しては同感だよ。あとウケんな。
「じゃあ、アタシ達先でもいいじゃない」
「さっきの話聞いてなかった?用があるの。だからあなた達の用を聞かせるか、さっさと終わらせて」
ギャルと桜の間に、見えないが火花が散っている気がする。正直怖い。
「じゃあさっさと終わらせるからどっか行ってくんない?終わったら呼ぶから」
「気にしないで。ここで待ってるから」
「見ててもつまらないでしょ?」
「ソイツ以上につまらないヤツ知らないから大丈夫よ」
ひどくね?あと理由になってなくね?
「ちっ…あ…!あんたもしかして、コイツから水瀬君の写真もらう気じゃないでしょうね?」
そりゃお前らだろ。
「違うわ。欲しければ水瀬君に言うもの」
お前もさらっと嘘付くな。真っ先に俺に要求しただろ。
桜とギャル達が静かに戦っている。静かな分怖い。女子の喧嘩マジで怖い。
俺の恐怖が再び沸き起こってきた。ひたすらに早く終わることを願っていると、願いが届いたのか、さらに人影がやってきた。
「なにをしているんだい?」
「「水瀬君…」」
来たよ…やっぱお前はイケメンだよ…
「桜さん…と、君達か。君達、また英治に何かしてるの?」
「えっ…と…それは…」
ちょっ…最初からキレてね?
俺が感心したのも束の間、水瀬が若干お怒りモードなことに慌てた。
「いや、落ち着け水瀬!なんもされてないからっ!」
「取り囲まれてるのに?」
なんでそこは冷静なんだよ!?
「なんもされてないからっ!ちょっと話してただけだ!ほら、円形の方がみんなと話易いだろ?」
「うん…まぁ確かにそうだね」
よし、後一息。
「じゃあお前らも話終わったよな?俺は行くぞっ」
「えっ?あ、うん」
「よし!桜、水瀬、行くぞ!」
「えっ?ちょっ!」
「まぁ英治がいいならいいよ。君達、じゃあね」
そして俺達三人はその場から離れて行ったのだった。
〇〇〇
ギャルのリンチを回避した俺は、水瀬と桜と一度別れ、購買でパンを買い、二人と合流した。
余談だが、合流したとき二人は普通に楽しそうに話してた。俺はもういいかと離れようとしたところを水瀬に見つかり、呼び止められたから仕方なく混ざる。その時の桜の空気読め感が凄かった。お前、俺に用あるんじゃないの?
「で、さっそく本題だけど桜、俺に何の用?」
「例の如く、女子達がアンタを血眼で探してたから気を付けてって言おうと思ったけど、もう手遅れだったわね」
「そうだな。それだけなら俺もう行っていい?」
「待って!…あ、いや、その…」
空気を読んで立ち去ろうとした俺を桜が呼び止める。どうも気まずそうに水瀬の方をチラチラと見ていた。
「なに?」
「いや、えっと…み、水瀬君!私も昨日撮った写真貰っていい!?」
「え?…うん、いいよ。そもそも昨日は桜さんもいたでしょ?貰える権利はあるはずだよ。ね?英治」
「あ、あぁ。俺は別にかまわんけど」
「本当?ありがとう!」
あー…わかった…
おそらく桜はさっきギャル達に、写真貰うなら自分で言うと言った手前、昨日貰おうとしたことに罪悪感を感じたんだろう。
…律儀な奴。
「じゃあ写真はお前の家に持ってくよ」
「いいわよ。私が取りに行くわ」
「そか、わかった」
まぁ、要するにいつも通りだな。
「やっぱり、幼馴染だと家知ってるんだ」
ここで水瀬が食い付いてきた。
「あぁ、てか隣」
「ちょっ!アンタ!なんで言うのよ!?」
「隠しても意味ないだろ。幼馴染なのバレてるし」
「いや、アンタねぇ!」
「ははは!二人は仲いいんだね!今まで学校で見たことなかったから知らなかったよ」
「えっ!?いや、全然そんなことないよ!?」
「隠さなくてもいいのに。俺は二人が羨ましいよ…桜さん、ちょっと英治と二人で話させてくれないかな?」
ん?そういやコイツも俺を探してたのか?
「えっ?いい…けど…私の用は終わったし」
「じゃあ、お願い」
「わかった」
そう言って、桜は去っていく。影が見えなくなったあたりで、俺と水瀬は向かい合った。
「で、桜をどっか行かせてまでなんの話だ?あのまま二人で話してればよかっただろ?」
「いや、さっき話してわかった。やっぱり桜さんは俺をなんとも思ってなさそうだ」
おぉっとぉ?
「なぜに?」
「俺と話す時普通なんだ、それこそ他の人と話すみたいに。英治には全然違う態度なのにさ」
そうくるかぁ!?
確かにアイツは俺に対して違う態度だが、照れ隠しとかじゃない。ガチだ。ガチで俺をキモがっている。それをコイツはわかっていないらしい。
「桜さんは、英治に気があるんじゃないか?」
そ、れ、は、ないっ!
「えーっと、じゃあ、仮に、万が一、何かの間違いがあったとして、桜が俺を好きだとしたら、諦めるのか?」
それは俺としても桜としても、だいぶ不本意だろう。
「いや、お陰で決心が付いた。今度、桜さんと部活の休みが合う時に、あの公園で告白しようと思う。それが例え自己満足でも。いいよね?」
「俺は全くもってかまわないし、桜が俺を好きだというのもあり得ない」
「それはどうだろうね」
いやねぇよ。お前が告白するなら結果が見えてるよ。
「それに、俺は一回振られてるしね。ダメ元だよ」
「あ、そうだ、それ。いつ振られたんだ?」
「あー…去年、ちょっとね。今は嫌な記憶は話したくないから、また今度ね」
「そうか…」
それが何か知りたかったが、無理には聞けないだろうな。
「まぁ、頑張れよ」
結果がわかりきってるけど。
「それで、相談なんだけど」
必要ないだろうけど。
「…なに?」
「俺が告白するのを見届けて欲しいんだ」
「……は?なんて?」
「だ、だから…俺が桜さんに告白するのを、見届けて欲しい」
え?…えぇ!?
「えー…」
それ、なんてプレイ?
「ダメ…か?やっぱり…」
そんな寂しい子犬のような顔するな!
「いや、あのさ、恥ずかしくねぇの?」
「恥ずかしい…けど、告白しようと思えたのは英治がいたから。だから、最後まで見届けて欲しい」
俺がいたからって…割と勝手に巻き込まれた感あるけどな。まぁしょうがない…か。
「そこまで言うなら。日時が決まったら教えてくれよ」
「ありがとう。やっぱり英治は優しいよ」
「るっせ…」
「はははっ!桜さんには内緒ね」
「言わねぇよ」
そうして、ついに水瀬が告白の決心をした。結果は見えているが、何故か最後まで見届けなければならなくなってしまったが。まぁいいとしよう。
9話目を読んで頂き、ありがとうございました!
さて、ついに京弥君が決心しました!
翔子ちゃんは本当にOKするのか。
英治君はどんな心境で見守るのか。
次回、第一章最終回です!
ではでは!最後まで見て頂けたら幸いですっ!