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 とうとう、ドングリ池へとやってきたゆうくん。池は澄んでいてとてもきれいな水です。


「ここにドングリをなげておねがいすればいいんだよね?」


 尋ねるゆうくんに動物たちはゆっくりと頷きます。

 動物たちにはゆうくんが何を願うのか予想できました。


「まあ、これからも元気でやれよな。おまえ、マチコの孫だろ?」

「え?うん、おばあちゃんのなまえ、まちこだ」


 ゆうくんはおばあちゃんの名前を知っているアライグマに首を傾げました。


「マチコもこの森にやってきたんだよねー。あの子も楽しませてくれたな~」

「マチコからもうまいお菓子もらった!」


 リスとヘビが思い出したのか、楽しそうに笑います。


「マチコ…かわいい女の子だったなあ」

「ああ、君…鼻の下伸ばしてたね」

「そ、そんなことないよ!」


 コマドリにからかわれてクマが真っ赤になりました。


「マチコは優しい女の子でした。おばあちゃんにみんな元気でいるとよろしく伝えてくださいね」

「うん!おばあちゃんに伝えるよ!」


 なぜ『逆さ虹の森』に詳しかったのか…それはおばあちゃんも幼い頃に森にやってきたことがあるからなのでした。


「さあ、お願いは決まってますよね」


 キツネに促され、ゆうくんは頷きます。

 えいっとドングリを池に投げ込み、いま心から思っていることを大声でお願いしました。


「おかあさんにあいたいです!ずっとおかあさんとなかよくしたいです!」


 途端にゆうくんの身体が光に包まれ始めました。動物たちは安堵した表情を浮かべています。


「おにいさん、おねえさん!ありがとう!」


 また会いに来るよという言葉までは紡げず、気がついたら家の玄関にいました。


「どこに行っていたの!?」


 お母さんは涙を流しながら、ゆうくんに駆け寄り抱きしめました。

 いなくなったゆうくんを心配して探し回り、まさに警察に通報しようとしたその時だったようです。


「おかあさん…ないてるの?」

「ゆうくんが誰かに連れて行かれたかと思ったの!」


 安心して大泣きするお母さんにゆうくんは愛情をたっぷり感じとりました。


「ごめんね、ごめんね…ぼく、これからはいいこでいるから」


 お母さんが泣いているとゆうくんも悲しくなってきて、同じく大泣きしました。




 あれから何度かチャレンジしましたが、ゆうくんが『逆さ虹の森』に行けることはありませんでした。

 おばあちゃんにも尋ねてみましたが、一度しか行ったことがないそうです。

 一度でも行けた自分たちは幸運だったね、と動物たちの伝言を伝えた時におばあちゃんは感動で涙をこぼしていました。


 そして月日が流れ、目まぐるしく忙しい日々を過ごす大人になったゆうくんにも孫が産まれた時、ふと『逆さ虹の森』を思い出しました。


「おじいちゃんがとっておきのお話をしてあげよう」

「どんなおはなし!?」


 目を輝かせる孫におじいちゃんになったゆうくんは、嬉しそうに『逆さ虹の森』を話して聞かせるのでした。






童話の難しさを思い知りました…読んでくださった方、ありがとうございます。

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