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「わ~、ねっこがいっぱい!」
根っこ広場へとやってきた一行。そこは名前のとおり、大きな木たちの根がたくさん入り組んでいました。
「眠い…」
大興奮のゆうくんですが、ヘビは眠そうにしています。
来る途中で食事をしたのですが、ゆうくんからもらったお菓子など珍しい食べ物を食べられたことでヘビは大満足なのでした。
「んじゃ、さっそく試そうよー」
リスが楽しそうにはしゃいでいます。
「でも、きっと根っこが伸びてくるよ!」
クマは青ざめて震えています。
「それ見たことないんだもん。楽しみ~」
「男は度胸だ。ホラ、根っこに向かって母親への思いをぶちまけてみろ」
アライグマはリスと同様に楽しそうです。ゆうくんを焚き付けました。
対照的に心配そうに見ているキツネにコマドリが囁きます。
「大丈夫。相手は幼い子なんだから、ひどいことにならないよ」
「そうですよね…」
キツネの心配に気づくこともなく、ゆうくんは大きく息を吸い込み、大声で叫びました。
「ぼくのおかあさんは、ぼくのことがキライー!」
すると、ゴゴゴという大きな音と共にとても低い声が動物たちの耳に響きました。
《嘘じゃな》
ゴゴゴ、という音は大木が動いた音のようです。根っこが伸びたと思ったら、いつの間にかゆうくんを捕らえていました。
「うわあっ!!!」
ゆうくんが驚いて悲鳴を上げていると、根っこに持ち上げられます。
「うわーん!」
恐怖のあまり泣き出したゆうくんにキツネが慌てます。
「長老、お許しください!まだ幼いニンゲンの子なのです」
長老と呼ばれた大木はキツネの声に反応しました。
《ニンゲンか…しかし、この子は嘘をついておるぞ》
ゆうくんには長老の言葉が聞こえていません。
コマドリが代わってゆうくんに伝えました。
「君が嘘をついてるから、根っこに捕まったらしいよ」
「うそじゃないもん、いつもおこってばかりだもん!」
泣きながらもゆうくんは主張します。
《それは怒るじゃなくて、叱るの間違いじゃな》
長老の言葉に頷いて、キツネが続けました。
「お母さんは君がちゃんとした大人になってほしくて、叱ってくれているのですよ」
ゆうくんは目を瞬かせます。
「おかあさんは、ぼくのことがほんとうにキライじゃないの?」
長老は呆れたように溜息をつき、ゆうくんを解放しました。
《早く帰れ》
ゴゴゴ、という音と共に再び静寂が戻りました。
「いや~、木が伸びたとこ初めて見たー!面白かったー」
「俺も初めて見たぜ。すごかったな!」
「おかげで目が覚めた」
リス・アライグマ・ヘビはのんびり会話してますが、クマは震えて言葉も出ないようです。
「うわぁ、怖かったぁ」
安心して再び泣き始めたゆうくんをキツネが優しく抱きしめていました。