冒険者になってみる
脱出成功だな。さて…此処って何処の国だ?いや、まあ人間いっぱいいるから人間の国なのは分かるんだよ。うん。ただ、人間の国って連合王国って言ってるから、複数の国家が集まってるんだよね。宗教国家とか商業国家、農業国家、学園都市とかあるんだよね。
帰るにしても何処の国なのかだけでも知らないとな。どうするかな?とりあえず、町ブラついてみるか。なんか策が出るかも。
路地裏から少しだけ顔を出して、左右を確認。警戒しながら路地裏から出ると人混みに紛れるように歩き出す。
色んな店があるなぁ~。肉屋、パン屋、ギルド、武器屋、防具屋、薬屋、宝石店、服屋…………ギルド!!!
ギルドなら地図が手に入る筈だ。あわよくば、ギルドで冒険者登録して依頼を受け、
この国のお金を手に入れたい!!
お肉食べたい!!店の前を通った時に見えた店内で、大きなブロック肉を豪快に齧り付いて食べているのが見えた。
弾力のある噛み応え、溢れる肉汁、食欲をそそるニンニクの匂い、甘い脂まで想像して涎が垂れた。
と言う事で早速ギルド内へと入る。正面には受付窓口があり、出口に近い位置には冒険者であろう荒くれもの達が屯している。
依頼書が貼られたボードが壁際に設置されている。
ギルドに新たに入って来た客に荒くれ達が一斉にこちらを見る。恐っ!顔恐!!
表面上は気にしない体を装い、受付を目指して歩く。
受付にいたのは、黒髪の美人だった。口許の黒子が色っぽい。赤いフレームの眼鏡とスーツが似合いそう。
勝手に『黒子さん』と呼ぼう。名前知らないし。
「依頼ですか?」
「いえ、冒険者登録をお願いしたいです」
そう言うと訝しそうにしながらも用紙を渡された。
俺って、そんなに弱そうかな?ま、此方に来るまでは一般人だったからな。彼等の基準からしたら、俺って細いんだろう。筋肉無いしな。
「必要項目に記入してください」
黒子さんからペンを受け取って、書き入れる。名前と年齢位しか書くこと無いけど。
なんか言われるかな?と思って用紙を渡した。
「はい、ありがとうございます」
「名前と年齢だけで良いんですか?」
「弱い者は淘汰されます。そんな相手にいちいち細かくは言えませんから」
辛辣!!黒子さん、辛辣!!え?彼女だけかと思ったら横の窓口のお嬢さんも頷いてる。シビアだな。
「レイ様はランクFからのスタートになります。注意事項などは此方の冊子をご覧下さい」
黒子さんにギルドカードと薄い冊子を渡された。そのまま、ズボンのポケットに入れる。後で読むんだよ。
「俺でも出来る依頼ってありますか?」
「そうですね。薬草の採取とかですね」
「じゃあ、それ受けます」
「かしこまりました」
黒子さんは、依頼書らしき物に判子をペタンと押したり、紙に記入したりと忙しそう。
席を立つと分厚い本を持って戻って来た。徐にページを捲っていく。
「こちらの薬草を15個採取して来て下さい。場所は、この町の外の草原に自生しています」
「分かりました」
二度見してしまったけど、薬草って言ってるのにどう見てもただの雑草にしか見えない。え?どうやって見分けるのコレ?
チラリと黒子さんを見るけど、無表情で『自分で考えろ』って言われてる気がする。気がするだけだけどね。
おっと、忘れちゃいけない。
「地図って有りますか?」
「はい、有りますよ」
「お金とか…」
「こちら無料でお配りしている物です」
小さく折り畳まれた紙を渡された。一応、お礼を言ってからギルドを出た。
地図を広げるのは後にして、この町から出るかね。 ゲームみたいでワクワクするな。
さて、町の門を抜けると見事に草原だな。人が通る所は踏み固められて、道ができている。幅的には車が通れる位かな。この世界には車が無いから馬車か。
さて、薬草は何処に生えてるんだ?見渡す限り、草ばっか。
キョロキョロと雑草と薬草を見分けられないかと考えていると。
【神力:鑑定】取得
新しい神力…もう、スキルで良い気がしてきた。新しいスキルを覚えたな。
これは、説明文読まなくても分かるから良いか。では、早速【鑑定】使ってみますかね。
雑草
雑草
雑草
雑草
雑草
うん。分かってた。ここら一帯は雑草しか無いな。もう少し町から離れないと生えてないかな。
一応、鑑定しながら、のんびりと歩いて移動する。風景は草原から森へと変わる。
すると、
薬草(普通)
有った。有ったけど? 普通って何?普通以外も有るって事?
キョロキョロと見渡す。また見付けたが、これも普通の表記だった。
薬草(普通)
雑草
薬草(普通)
雑草
雑草
薬草
違うのキタ!レア?普通の薬草とレアの薬草を採取して見比べる。レアの方が葉っぱの色がほんのり赤い気がする。
薬草【鑑定】
普通の薬草よりも効能が高い。この薬草でポーションを作ると作り手にもよるが、中級以上のものができる。
ほほう。ポーションなんて、あるんだ。まだ、他にも有るから普通とレアと半々位で採取するか。
それにしても、黒子さんから聞いた草原に生えてるって言ってたのに生えてないじゃん。生えてんの森の中じゃんか!
その後、俺は無心で薬草を探して採取した。依頼個数達成して、ふと思ったのが、なんか草抜きしてるみたい、だった。
ギルドに薬草を持って帰ると黒子さんがまだいたので、依頼達成の報告をした。
「はい、確かに。では、報酬の銅貨3枚です」
レアな薬草も金額が一緒だったんだ?じゃあ、別に普通のでも良かったかも。
黒子さんから銅貨3枚を受け取ってギルドを後にする。
この世界で流通するお金は鉄貨、銅貨、銀貨、金貨とある。
鉄貨1枚→100円
銅貨1枚→1,000円
銀貨1枚→1万円
金貨1枚→10万円
の貨幣価値がある。だから、俺の今の所持金は3,000円だ。
これで、肉が食える。ウキウキしながら肉屋へ急ぐ。至高のお肉様が俺を待っている。久々の肉に俺のテンションが天井知らずに上がっていく。
読んでいただき、ありがとうございます。