テルテルボウズ
「真友先輩っ、ほんっとうにごめんなさい!!!」
木曜日の部活で、蓮くんはそう言って謝ってきた。
「う、ううん・・・」
あの事を思い出すと、顔がカアアッと赤くなる。
「・・・そ、その、あれは、事故ですよ・・・ね?僕、いくら好きでも、あーいうことの強要は、さすがにしませんからっ・・・」
「わ、わか・・・て・・・よ・・。だ、だいじょ・・・ぶ・・・だから」
真友もそう言って、蓮はほっとしたような表情になった。
「今日は、各自自由に作りましょう、ここにある材料を使って。3年生は、あと一か月もたてば部活は抜けますからねー・・・。うわあん悲しい」
「もー、飛鳥部長!あと、1か月あるんですから。楽しくいきましょうよー・・・!!!」
「わここそっ」
そんなわけで、真友は今、ハンバーグを作っている。
お肉は学校に持ってきてはいけない。でも今日は、学校にあるものを使う日だから、お肉も使えるというわけなのだった。
「まーゆ先輩っ!」
「わ、びっくりした・・・・・あ、あの、いつも、急に現れてびっくりするから、さぁ・・・っ」
「ごめんなさい・・・で、何作ってるんですか?」
「ハンバーグ・・・」
「ハンバーグ?真友先輩が食べるって、イメージないですねぇ」
「・・・木坂くんの話ばっかして、ごめ・・・なさい・・・。これ、今度、木坂くんのバスケの試合に持っていこうと思って・・・」
真友は校庭を見つめた。今日は雨は降ってなくて、快晴。外でバスケ部が行われている。
「・・・今でも木坂先輩のこと、好きなんですか」
「・・・ごめん。だから、私・・・」
蓮くんにもあきらめてほしい――――――――なんて、いう、その先の言葉は出なかった。
「・・・バスケの試合って、いつ?」
「2週間後、・・・音葉も、くるって・・・」
ハンバーグの空気を抜きながら、真友は言った。
「きゃあっ!!!か、カッコいい!!!」
「ほんとにいいなぁーっ、音葉は。木坂くんの試合は、もちろん見に行くんでしょ」
「うん!応援しに行くよ。差し入れ、何がいいかなぁー」
真友はその会話を聞きながら、ティッシュでてるてるぼうずを作っていた。何のためかって、もちろん、バスケの試合の日が、そしてそれまでの練習の日が晴れてほしかったからだ。
真友は、10個作り終えると、ガタっと立ち上がった。
「・・・音葉」
真友は音葉に話しかけた。
「何?真友」
「・・・木坂くん、ポテトサラダとハンバーグ好きだって・・・」
・・・何でこんなこと言ってんの?言いたかったのは、こんなことじゃない。
私にだって、木坂くんのことを応援する権利、あるもん。から、行くもん・・・。
「ありがとう、真友ーっ!やっぱり大好き!」
音葉は抱き着いてくる。耳元で、
「真友がてるてるぼうずつくるなんて、めっずらしいね。雨の日大好きなんじゃなかった?」
という。
「私も行くから、音葉」
「え?・・・だって真友は、あの男の子がいるでしょ?2年生の」
「蓮くん・・・のこと?」
「好きになったんじゃ、ないの?」
私が蓮くんを、好き・・・―――――――?
「ちがうよ。まだ好き。・・・頑張って、振り向いてもらうから!」
真友は叫んで、音葉が「へぇ」と、一言。
「やれるもんなら、やってみたら?」
「・・・うん」
そんな音葉と真友の様子を、木坂はなんだか怒ったように見ていた。