カゼヒキ
あんなことがあって、次の日・・・。
「もう。あのどしゃぶりの中を傘をささずにいたなんて、どーいうことかしらね?真友」
「絶対言わない」
真友は今日、38・5度の熱を出してベッドに倒れこんでいた。
「今日はそのまま、おとなしく寝ててね。ほんとにもう、世話の焼ける子だわ・・・」
「なんか言った?」
真友のお母さんは部屋を出て行った。
・・・とまあこんな調子で、今真友は反抗期だ。
「えっと・・・今は4時」
もうみんな帰り始めているころだ。
・・・とその時、「ピーンポーン」と、チャイムが鳴った。
「はーい!って、あなたは・・・音葉ちゃんね!大きくなったわねぇ!久しぶりー!」
「あっ、はい・・・お久しぶりです」
明らかにちょっと困ってる音葉の声が聞こえてきた。
・・・うう、ごめんよ音葉。うちの親が強引で・・・
「えっと・・・もう一人の、あなたは―――――・・・」
「あ、えっと。俺の名前は、木坂幸希です。有岡と最近よく一緒に帰ります」
「えっ!?」
・・・はっ!さ、叫んじゃったよ。
で・・・でも待って。木坂が、うちの前に来てるってことは、お見舞いに来てくれたってことでいいんだろか。それで、音葉と一緒に、真友の部屋に上がる――――――?
「き、きゃあぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
「え?だ、大丈夫⁉真友!」
慌てたようにお母さんがかけてくる。
「あっ!な、なんでもない」
「なによ、ビビっちゃったじゃない。もう」
お母さんは玄関に戻ると、「さあ、上がって。真友の部屋、入りたければ入っていいわよ」って。真友の許可を取らずにそういうこと言うところ、変わってないなぁと音葉が思った。
「やほ。真友、大丈夫?」
「うん。ちょっと熱が出ただけ」
「何度?」
「38・5度」
「全然ちょっとじゃないじゃん」
音葉とそんな会話をして笑った後、あれ?と音葉。
「木坂は?おーい、木坂、おーい」
「じょ、女子の部屋なんて入れるわけねーだろ!入ったこともねーし」
「えぇー。真友、いいでしょ?」
ほら、木坂に届く声で言ってあげて!と、音葉が真友に耳うちする。
「・・・木坂~・・・くん」
「もっと大きく!」
「・・・木坂くん!」
ベッドから、叫ぶ。
「は・・・入ってきていいよ!・・・顔、見たい」
・・・木坂の声が聞こえなくなった。
「真友・・・すごい」
口に手をやって、音葉は真友を見つめる。
「・・・あー・・・」
「き、きさ・・・か・・・くん」
ぱっとベッドから起き上がると・・・、木坂がばたん!とドアを閉める。
「えっ!?」
「や、やっぱ無理!だっておま・・・ぱっ、じゃま」
「え・・?あ・・・・あーーーーっ!!」
自分の格好を慌ててみると、今、真友は、かわいいキャラクターもののパジャマを着ている。
「は、恥ずかしい・・・」
「何言ってんのよ!パジャマを彼に見てもらうって、すっごいいいことなんだよ!?ね、見せちゃおうよー」
「ちょ、音葉、声大きい、聞こえちゃう」
「いいから入って!真友の様子見に来たんでしょ!」
「・・・あぁーーーーもう!!!」
なんやかんやで、木坂は部屋に入ってくる。
「・・・っ。だ、大丈夫かよ」
「え?・・・な、なにが?」
「た、体調!だいじょぶかって聞いてんだよ」
「あ・・・ああ、だ、大丈夫、だよ」
「・・・もう行く!じゃーな、有岡」
ぶらぶらと手を振って、木坂。
・・・一回だけ振り返って、ちゃんと挨拶をしてくれた。「お大事にな」って。
「あ、待ってよ木坂!私も行く!」
「早く来い!!」
「はーい!じゃーね、真友。早く体調直して、学校おいでよー、みんな待ってるんだから。お大事にね~!」
「うん、ありがとう。2人とも」
真友はそう言って、音葉に手を振った。
そして、窓から。
「き・・・さかくん!」
「え?」
「じゃ、・・・じゃーね」
って、木坂にも手を振った。