六.観光協会
次の日の水曜日。
昼休みになると、僕は観光協会に電話をかけてみる。
「すいません、旧街道沿いの街灯をLED化するという話を聞いたもので、お電話したのですが……」
すると、最初は穏やかな口調で対応してくれていた受付の方の声が硬くなった。
『その件ですが、白熱電球と見た目には変わらないタイプを用いますので、景観はほとんど変わりません。交換作業は最大の配慮を持って行いますので、何卒ご理解いただきたくよろしくお願いいたします』
抑揚が失われ、緊張が追加された声。
きっと、LED化に関する問い合わせが相次いだのだろう。少し棒読みっぽかったのは、対応マニュアルが用意されているからに違いない。
でも、交換するLEDが白熱電球と見た目には変わらないタイプと聞いて、僕はほっとする。
「いや、あのう、苦情とかじゃなくて、ぜひ交換作業のお手伝いをさせてもらえたらと思いまして……」
『えっ?』
受付の方の声が素に戻る。
『あっ、はい。そうでしたか。それは大歓迎です!』
やっぱり女性の声は、明るい方が聞いていて気持ちがいい。
「ありがとうございます。それでは僕は、いつ頃、どこに伺えばよろしいでしょうか?」
用いるLEDは電球色タイプのようだが、念には念を入れることに越したことはない。アルさんにも『責任を持ってこれまでと変わらないようにする』って言っちゃったし。
できれば交換作業に参加して、少なくともあの場所の電球は自分で交換したかった。
『交換作業は今度の日曜日の午後一時から行いますので、その時間に旧街道入口に来ていただけると助かります』
「わかりました。当日はよろしくお願いします」
『こちらこそよろしくお願いいたします』
僕は名前と高校名、そして連絡先を告げて電話を切る。
場合によっては、自分で買ったLEDとこっそり交換することも考えておかなくちゃいけない。そのためには事前に電器店に行って、LEDの下見をする必要がある。
日曜日の交換作業に向けて、僕は頭の中で段取りを立て始めた。