虐殺の門 -4
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トライの時間が近づき、アキラがメンバーを集める。
『いよいよだ…。俺たちの費やしてきた苦労や時間…そして数多くの絶望。
すべてが今からの数分で決着がつく。必ずコンプリートするんだ。
ここにいるメンバーでFRONTIERの歴史に名を刻もう!!』
アキラを囲む14人のプレイヤーは静かにその言葉を聞いていた。
皆が自分自身の人生にある意味、決着をつける戦いになるであろう。
『さぁ…行こう。』
進路を戦いの場に向かいながらアキラが言う。言葉無く皆がそれに続く。
俺は大きく深呼吸をしてそれについて歩く。
今頃、世界中のステーションは人でごっ
た返し、世界中のプレイヤーやマニアたちがPCのディスプレイの前で俺たちのトライを待っているだろう。
シゲのサイトでも虐殺祭なるイベントを開催しているらしく、シゲのLIVEの実況放送なんてのもあるらしい。
いや、世界中のFRONTIER関連サイトがざわついているに違いない。
FRONTIER史上初の3パーティー連隊での【虐殺の門】へのトライが始まる。
そのメンバーの中に、自分が存在している事を改めて思うと不思議でならない。
この世界に足を踏み入れてわずか2年余り。俺は共に戦場に向かう仲間を見渡した。
FRONTIERの歴史と共に歩んできたベテランプレイヤー。レイニーデイズで絶望を味わったアキラ、ヒュウガ、ヒデ、ハルカ。
この国で最初にS級へと踏み込んだブラックダリアのキョウジとツネ。
同じくS級でこの国のプレイヤーに様々な戦略的要素の基礎を作った地球連邦軍のツバサ。
常にパーティーのサポート役として所属パーティーに忠義を尽くしてきたアツヒロ。
その先駆者を信じてついてきたメンバーたち。
施設に収容され激動の生い立ちを経験したダイキとアサミとナギサ。
普通の家庭に育ちながら、この不安定な時代に刺激を求めFRONTIERに飛び込んだミオとスグル。
アンデッドした兄を探して戦い続けるリョウ。
そして電気街でボロボロになっていたところを拾われた戦争遺児の俺。
15人の人生に必ず大きな意味を与えるであろうこの戦い
。様々な覚悟や決意を胸に、レイニーデイズ連隊は【虐殺の門】へとフィールドチェンジした。
このゲームの最後のステージ。
ここに立つことができるプレイヤーは限られる。
これまでFRONTIERを去っていったプレイヤーを含めば世界中で400万人以上のプレイヤーがこのステージを目指し、そのほとんどがたどり着けない最終地点。
一握りのプレイヤーしか経験していない、そしてコンプリートされたことのない究極のステージ。
その場所に俺は今…立っている。
その広野の先には大きな要塞が聳え立ち、まるで全ての外敵を拒むように要塞の高い壁が大きな圧力をプレイヤーにかけている。その壁には幾つもの穴が開いていて、そのすべては砲台となり、幾百機のランチャーや重火器の砲口が我々に向けられていた。
これまで様々なパーティーのトライをモニター越しに見てきたが、いざこの場に立つとその光景に足がすくみ恐怖が襲う。今からあの要塞へ向かうのだ…。
そして気づく…俺がモニター越しに見ていたこのステージが少し変わって見える。
『どういう事だ…!?』
アキラが鼻息荒く言葉を吐く。
『あんなの今までなかったわ。』
ツバサが要塞の一番上を指さし、絶望にも似た声を出した。俺はツバサの指さす先を凝視した。
そこには確認できるだけで10機のキャノン砲が見える。
確かに今までの【虐殺の門】では、あんなモン見たことがない。
『3パーティー連隊の代償ってやつか…。』
キョウジが呟く。3パーティー連隊の代償?
『なるほどな…。本当にバカにしていやがる。』
ヒデが怒りを露にして怒号を吐いた。言葉を発っさないアキラ。いや発っせないようである。
状況の意味がわからない俺はダイキの腕を引っ張り説明を求める。
しかし、ダイキも声を出さない。皆が戸惑っているのだ。
『結局…3パーティー連隊ってのも幻想だったわけか。』
言葉を発したツネに皆の視線が集まる。
『どういう意味だ?』
ヒュウガが詰め寄る。この状況を理解しているプレイヤーはアキラ、ヒデ、キョウジとツネ。
その他のメンバーはただ誰かの確信ある言葉を待つことしかできない。
『こちらの戦力に比例して【虐殺の門】の難易度が上がったって事?』
まずハルカが状況に気づく。
『それじゃあ、連隊なんて逆に不利になるって事か?』
アツヒロも続く。
『なんてことだ…。』
ヒュウガの言葉に、今の状況を皆が理解した。
【虐殺の門】のパーティー上限は3。この設定を発想にして生まれたのが3パーティー連隊という最終構成。
これは世界中がコンプリートに一番近い作戦として認識されている。
しかし、この3パーティー連隊と言うもの事態が難しく今まで、3パーティーでこのステージに挑んだパーティーはいない。そしてやっと初めて誕生した3パーティー連隊でのトライ。
その期待や情熱を一気に変える絶望感。3パーティー連隊は間違いだった…。
トライメンバーが増えたら、ステージの難易度が上がる。
これは世界中の誰も予想しなかった状況である。
【虐殺の門】に配備されたキャノン砲は1機でランチャーやバズーカ砲の20倍に相当する威力があるだろう。
それが10機である。
もう一度…現実を直視してみる。3パーティー連隊は、コンプリートへの作戦として間違いだったと…。
『アキラ…どうする?』
ナギサが不安な声を出す。
『あのキャノン砲ヤバいよ。A級フラッグで何度か経験したけど、被弾範囲が広いんだよ。
直接被弾しなくても範囲内にいたら即リタイアよ。』
ミオも加わる。黙るアキラ。しかし決して諦めている様子でもなければ、絶望感など微塵も伝わってこない。彼は今、様々なことを頭の中で考え、それをシュミレートしているに違いない。
突然アキラが叫ぶ。
『ツバサ!!ポジショニングを変えるぞ。』
そう言うと、アキラは皆を集め【虐殺の門】を見ながら各メンバー一人一人に細かく作戦を説明し始めた。
『私が先陣ね…。』
アサミが決意を込めて呟く。
『頼むぞ。お前にかかっている。』
アキラがアサミを激励する。大きく頷いたアサミは連隊の先頭に立った。
『ツネ、同時に行くぞ。』
ヒデがツネに声をかけ、
『ああ。』
と返答。柄にもなくツネにも緊張が見える。
『さぁ、人生の集大成…。アキラ、共に行くぞ。』
キョウジの言葉がきっかけとなり、アキラは高らかに手を挙げた。
『レイニーデイズ連隊…作戦開始だ!!』
アキラの合図と共に15人は【虐殺の門】のスタート地点であるエネミーラインへと一斉に走り出した。
最後の戦いが始まったのだ…!!




