ラズルシェーニエ 破壊 -9
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次のステージに入ると再びハイイーターたちの連射が襲ってくる。
我々は布陣を張り約30体のハイイーターに向けて攻撃を開始した。
半数程ハイイーターを倒した時に右方向からゴゴっと言う音が聞こえ、そこにある扉が開いた。
『開きましたよ!!』
俺が叫ぶ。
『行くか!?』
アキラが少し身を引いて言った。
『そっちはダメです!!』
スグルがそれを制止する。
なぜだ!?道は開いたのに…!?
『前の扉なのね?』
ナギサの問いに、
『はい!!あっちが正解です!!』
とスグルが答えた。俺はハイイーターばかりに目をとられ扉が二つあることに気づかなかった。
廃墟系フィールドの特徴として、ルート選択がある。
通常のミッションとは違い、正規ルートが一本ではなく、フラッグステージまでのルートをその場で判断し選択して進む迷路のようなフィールド構成になっている。
ランクが上がる程、その迷路は複雑になり、この【殺戮の館】はその骨頂と言える。
これが難易度を究極に上げている。1度迷えばどんどん深みにハマり、抜け出せないアリ地獄と化す。
極めて難しいフィールドなのだ。
だから初見のパーティーが最短ルートでフラッグまでたどり着くことはほぼ不可能であり、迷えば迷うほど戦いの数が増えていく。
ただ唯一アバターLのジョブであるグランディアをもつプレイヤーならば、オールマッピングの能力で最短ルートを見つけることができる。だから本来ならハルカがのパーティーの案内役として参加するのがベストであるが、通常ではありえない状況が生まれている。
スグルだ。
彼も初見のはずだ。だがスグルはこの【殺戮の館】を完璧にマッピング記憶しているのだ。
ネットなど様々な情報源を駆使して事前リサーチをし、この迷路を頭に叩き込んでいる。
『全滅させないといけないってわけだな!!』
ツネが前に出てモーター式ガトリングガンで一気に殲滅をはかる。
そして前方の扉が開くと共にアキラの合図で5人は次のステージへと飛び込んだ。
次のステージは扉が3つ。ハイイーターは30体程。
『スグル!!次の扉はどれだ!?』
俺が叫ぶ。
『ここは左の扉!!』
スグルの返事に意識を左側に寄せる。
『シーナァ!!余計な事は考えるな!!おまえは殲滅に集中しろ!!指示は俺が出す!!わかったかぁ!!』
アキラの怒号。なんで怒られなきゃならないんだ!?フィールド情報を知っていた方がいいだろう!?
返事をしない俺の明らかな不満な態度にナギサが声を荒げた。
『シーナ!!情報を理解する事と詮索することは違うよ!!
前のハイイーターに集中して。
今、シーナは開く扉に集中してしまっている!!それじゃあダメ!!
シーナの役目は敵を殲滅することだけ!!わかった?返事は?』
ナギサがこんなに怒号を吐くとこなんて見たことない。
『はい…わかりましたよ!!』
俺は返事をさせられた感じだ。次の瞬間、俺の右腕に激痛が走る。右の小指と薬指が無くなっていた。血が溢れ出す。
『シーナ!!大丈夫か!?』
アキラの怒号。ハイイーターの弾が指にかすり、指を二本もっていかれた。
クソ!!痛い…!!自分の愚かさを身をもって知る。
『おいレベル3、まだリタイアすんなよ。』
ツネが呆れた声を出す。
『大丈夫ですよ!!指を2本失っただけ!!引き金は弾ける!!』
俺はここまで激痛にさらされなければ自分の意識の甘さを知ることができないのか…。アキラとナギサが言う意味がやっと理解できた。
『世話が焼けるガキンチョだな。』
ツネが再び前に出て連射。7割程のハイイーターが消えたあたりで左の扉か開いた。
『行くぞ!!』
アキラの合図で左の扉に飛び込む。真っ先に飛び込んだナギサが連射を始めた。再びハイイーター30体。息抜きする間など一切なく、戦いは続く。
『シーナ、大丈夫?』
ナギサが声をかける。
『大丈夫です。すいません、頭が冷めました。』
俺の言葉に、
『うん、いい子。』
と子供を褒めるように言う。
『さぁ!!まだまだ先は長いぞ!!気を引き締めろ!!』
アキラが激にを飛ばす。
『レベル3と死神は、右方向のハイイーターを相手しろ!!』
ツネの指示で俺とスグルは銃口の向きを変えた。その方向にはハイイーターが10体。アキラとツネとナギサは逆方向のハイイーター20体への攻撃を開始した。
『あと3フィールドでフラッグステージです!!』
スグルが新たに開いた扉を確認して叫んだ。すでに10の扉を抜けてきた。
パーティーの被弾状況は俺が指を2本を失い、スグルは脇腹に数発。お互い致命傷ではないため順調と言える工程で進んでこれているのだろう。
ただ一番被弾を受けているのがアキラである。我々四人の盾となり、そして囮にもなりハイイーターの攻撃を引き付けてきた。ナギサとツネがほとんど無傷なのもアキラの力が大きい。
しかし、ここで、
『アキラは下がって。私が引き付けるから!!』
常に30体程度のハイイーターが放つ嵐のような弾の数を避けなからナギサが勝負に出た。
『俺がスキッパーに入ろう!!アキラはバックアップに下がれ。』
ツネが前に出る。まだこの後にはフラッグ戦もあり退路戦もあるのだ。アキラをここで失う訳にはいかない。
アキラはバックアップの位置に下がり、俺とスグルの援護についた。
このフィールドもハイイーターを殲滅。
次のステージへと進む扉が開き飛び込んだ瞬間、ナギサが倒れ込んだ。
『ナギサさん!?』
俺の叫びの後、ナギサは態勢を変えて立ち上がり連射を開始。しかし顔の半分が血で真っ赤に染まっていた。
『ナギサ!!右目!?』
アキラがナギサの顔を見て驚きの声を出した。
『大丈夫、かすっただけ。』
気丈に振る舞うナギサだが、完璧に右の視界が失われている。
『ちっ…お前も下がれ!!』
アバターLのツネが前衛になるという異例のポジショニングに替わった。
ツネがガトリングガンを激しい機械音と爆裂音を響かさせながらハイイーターを殲滅していく。
『シーナ!!行くよ!!』
スグルの言葉で、俺は一気に前を詰めスグルと共にテリトリーを広げた。
『おい!!死神とレベル3。フラッグ前にガトリング部隊がいやがる。援護してやるからお前ら二人で殲滅してみろ。』
新たな扉が開いた時、ツネが俺たちに言う。もちろんそのつもりだ。俺はスグルと顔を合わせて目で頷いた。
真っ先に俺とスグルがガトリングステージに飛び込んだ。
その瞬間、15機あるガトリングが一斉に起動し激しい機械音を放つ。
『スグル!!』
俺が叫ぶとスグルはエクリプス(大鎌)を抜くとガトリングに飛びかかる。
ハイイーターが操るガトリングが一斉に火を吹き始めた。スグルにガトリングが集中しているすきに俺はアサルトライフルでハイイーターを狙う。ツネの援護でスグルはまずセンターの一機を潰した。
そのまま裏に入り一機ずつハイイーターを切りつけていく。
負けじと俺も立て続けに3機潰した。ガトリングにはガトリングをと言わんばかりにツネもガトリングガンで破壊的な攻撃を始めた。
しかし、ガトリングの裏に入ったスグルが孤立してしまう。
『スグル!!いったん引け!!』
アキラが叫ぶが、180度ぐるりと向きを変えた最後のガトリングが射程内にスグルを捉えた。
『クソォ!!!!』
スグルが叫んだ瞬間、ガトリングから放たれた数百発の弾丸がスグルを貫き、そのまま消えた。
俺はアサルトライフルを乱射してガトリングを殲滅。辺りは気持ち悪い程の静寂が訪れた。
ちくしょう!!スグルがリタイアしてしまった…!!
『悲観するなレベル3。死神はひとりでガトリング7機も潰したんだ。これ以上ない成果だ。』
ツネがスグルを労う。
『さぁ、切り替えろ。フラッグステージだ。』
アキラが俺の肩を叩き、意識の切り替えを促す。
『シーナ、行くよ…。』
ナギサの言葉で俺は必死に頭のなかを整理し始めた。
『フラッグはおそらく陸鳥2体。さっきのスラムドッグスと同じはずた。
じゃなきゃすぐさまトライした意味がない。』
とアキラが意味深な事を言う。不思議そうな顔をしている俺に、
『フラッグがわかっているのと知らないでは雲泥の差ってことだ。』
ツネの言葉で少し理解できた。スラムドッグスがトライを失敗してからそんなに時間が経っていない。
きっとフラッグは変わっていないとアキラは思い、すぐにトライを決めたのだ。
『行くぞ!!』
アキラの一声で残った四人でフラッグステージへと入った。




