ラズルシェーニエ 破壊 -8
ヒデの言う通り、俺がもうひとつレベルを上げるにはトライアル3つのコンプリートボーナスすべてをもらってもギリギリ足りない。てことは、今からのミッションでハイイーターを数多く倒し、その経験値を『持って帰って』こなきゃいけない。
俺のレベルアップは、【虐殺の門】へのトライまでの必須事項となっていて、より高いスピード能力とフィジカル数値を求められている。
頭で様々な事を整理すれば、アキラが俺を指名した理由がわかる。
本来ならリョウやハルカを招聘したかったに違いない。
アキラにとってもこの土壇場で俺を選ぶことは苦渋の決断だったであろう。
ステーションのロビーで大きく深呼吸をする。
深夜3時。こんな真夜中でもロビーには人が溢れていた。
「しっかりね。ここで待ってるよ。」
リョウが俺の手を握る。頷く俺。
「さ、シーナ行こう。」
ナギサに促され俺はブースへ向かった。
「シーナ!!がんばって!!」
アサミの声が背中を突き刺す。腹を決めよう。絶対に生還してやる。
「シーナ、大丈夫よ。私が守るから。なにも心配いらない。」
ナギサの言葉で一気にスイッチが入る。
守られてちゃだめなんだ。自分で勝ち進まなきゃ…!
ブースの入り口でナギサと硬い握手をして隣り同士の扉を開いた。
そしてダイブ。S級のニュートラルフィールドで死神とアキラを見つけた。
『スグル!!』
声をかけるとガイコツフェイスが近づいてくる。
『シーナ、待ってたよ!!』
容姿とは裏腹なファニーな声。そのギャップにいつも笑ってしまう。
『シーナ、やることはわかっているな?』
アキラが俺に釘を刺す。
『はい。』
静かに返事をする俺の隣にナギサが到着した。
『もうひとり。急な招聘だから少し時間がかかっている。待つ間にポジショニングの確認をしておこう。』
アキラが言うとナギサが、
『どこに入るの?』
と聞く。アキラは、
『【殺戮の館】だ。』
と一言。
今、スラムドッグスが失敗したばかりのステージに入るってのか!?
『迎撃タイプの【殺戮の館】なら確実に経験値が稼げるよ。
僕と、特にシーナには一番適したフィールドだね。』
スグルの言葉にアキラの意図を理解した俺は大きく頷いた。
オープンフィールドでポジショニングの確認を始めて30分が過ぎた頃、見慣れたアバターLのプレイヤーが近づいてくる。
『急で悪かったな。』
アキラの言葉に、
『かまわんさ。』
と軽く答える。
『よう、レベル3。』
連隊の中で唯一俺をその名で呼ぶ男、ツネだ。
『【殺戮の館】か…。俺は温存か?それともバックアップか?』
ツネが自分のポジションを確認する。
『ボランチを頼みたい。』
アキラの言葉から意図を読みとったツネは、
『わかった。レベル3と死神のガードって事だな。』
と答える。アキラが続けて、
『ああ、アタックはナギサとスグル。スキッパーにシーナ。俺は状況にあわせて動く。
ツネはバックアップに専念してくれ。』
と個々に指示を出す。俺の装備は、M4(アサルトライフル)とコルト(サイドアーム)。装備3にはイングラム(マシンガン)をつけてきた。狭いフィールドでニホントウを振り回すわけにはいかない。
『さぁ、行くぞ!!』
アキラの一声で、俺たちはニュートラルフィールドに戻り、R-SフィールドNO.2【殺戮の館】へとフィールドチェンジした。
その薄気味悪い外観はまさに趣味の悪いお化け屋敷って感じだ。
長いエントランスを進み、入り口手前でアキラが動きを止めた。
『入ったら一気に来やがる。準備はいいな?行くぞ!!』
アキラは先頭で館へと突入。続く俺たちが入った瞬間から待ち構えていたハイイーターたちとの銃撃戦が開始された。
『広がれ!!お互いの距離を確認しろ!!』
アキラの指示でパーティー間の距離をとる。
『レベル3!!二歩下がれ!!ナギサの射角に入っちまう!!』
ツネが後方から俺に指示する。
射角?そうか!ナギサは左を向いている。その方向へ撃つときに俺が射程内に入るって事か!!
大半を立ち止まって射撃が行われるこの廃墟系は味方の銃口の向きも気にしなければならない。
『死神!!おまえは1メートル前に!!』
ツネの的確な指示でポジショニングが修正されていく。
『いいか!!あとハイイーター3体殺ったら次の扉が開く!!開いたら一気に行くぞ!!』
アキラが連射をしながら次のステージへの準備を促す。
最後の1体を俺が仕留め、次のステージへと一気に走り込んだ。




