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【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
ラズルシェーニエ 破壊
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ラズルシェーニエ 破壊 -7

スラムドッグスがR-SフィールドNO.2【殺戮の館】にトライを開始して一時間。

横浜ステーションにいるアキラから現在の状況が連隊のチャットに入る。

『シゲとヒュウガがリタイア。非常に厳しい戦況にある。』

と。

早い。この時間帯で二人のリタイア者を出してしまった状況はあまりにも早すぎる。

フィールドにはミオとアツヒロ、ツバサの3人しかいない。

「開始一時間で二人。まだ中盤にも差し掛かっていないわ。」

ハルカが不安を隠しきれない表情になる。

「ヒュウガはなにやってんだ!?」

ヒデが怒りを露にする。俺はネットで知りうる【殺戮の館】のフィールドを思い出していた。

狭い廃墟の部屋フィールドをひとつずつ殲滅していく迎撃タイプのミッション。

通常のミッションならば先へ進む事が自由にできるが、廃墟系のフィールドはその場のイーターをある程度数を倒すことで次のフィールドへチェンジできる。

常に360度を警戒し攻撃を繰り返す難しいミッションだ。この廃墟系においてミオのスピードはまったく機能しなくなり、ツバサの援護を受けながらの戦いとなっているはず。ということは、究極のオールラウンドプレイヤーであるアツヒロがこの先のミッションのキーマンとなるだろう。

しかし…フラッグもあり退路戦もあるこのフィールドで早い時間帯で二人もプレイヤーを失うのは致命的である。

「ミオ…。」

アサミが呟く。俺はヒデの顔を見た。厳しい表情だ。

「アツヒロさんがいる。」

俺の言葉に皆の目線が集まる。俺はエンドオブザワールドのローテーションの深夜シフトでアツヒロと共に戦ってきた。彼のどんな状況でも冷静で的確な戦いかたを熟知している。FRONTIERの歴史と共に歩んできた彼の『経験』こそ最大の武器なのだ。

「ツバサもいるわ。まだ諦めちゃダメ!!」

ハルカが皆に声をかける。

「ミオ…がんばって…。」

リョウの呟きに俺は激しい胸騒ぎに襲われていた。 


俺の端末にスグルから連絡が入る。

『シゲさんのミスでヒュウガさんが巻き添え食らったみたいだよ。』

スグル?

今どこにいるの?

俺の返事に、

『横浜ステーションだよ。』

と。スグル…横浜ステーションに行っているのか!?

皆にそれを伝えるとハルカが、

「あの子はマジメね。もし突然メンバーの欠員がでた場合のために横浜まで行っているんだわ。

スグルはトライアルすべての事前リサーチを完璧に行っている。

いつでも自分の出番が回ってきてもいいようにね。スグルの存在が私たち連隊の土台を支えているのよ。」

としみじみ言う。今回のトライアルメンバーに選ばれなかったスグルだが、それを悲観せず前向きに共に戦っている姿勢に、さっきまでヒデを責めていたエンドオブザワールドの面々はうつ向く。

スグルに今日の宴の事を伝えた時、「その日は無理だよ。」と一言で断られた。

横浜でスラムドッグスのトライアルサポートに行くと決めていたのだろう。彼はこの連隊に入る前は、人気の傭兵として様々なパーティーから需要を獲ていた。しかし、連隊に入ったことでザブメンバーのような扱いをうけている。

もちろん必要なポジションではあるが、スグル自身にしてみれば屈辱感はあったに違いない。

しかし、スグルは常に前向きに我々メンバーに寄り添い共に戦ってくれている。これがスグルの人格の素晴らしさなのだ。スグルは自分で連隊への参加を決めた。その時から彼は自分のポジションを自覚し腹を決めたに違いない。

【虐殺の門】への道程でリョウやミオのようなエースの存在と共に、スグルのような信頼できるサポートメンバーも必要。スグルはすべてを理解して、その時の状況を判断して行動しているのだ。

「シーナ、スグルってすごいね。」

リョウが言う。頷く俺。そして同時にスグルを誇らしく思う。

彼と親友になれてよかった。そう思わずにはいられなかった。 


スラムドッグスのトライアルが開始して1時間半がたち、オンリーイエスタディの店内は、皆が端末を片手にアキラからの戦況報告を待つ状況となっていた。

ミオもリタイア。絶望的だ。

アキラからの報告に一同ため息が漏れる。俺は簡単な情報しか送ってこないアキラにイラつきを感じ、スグルに電話をかけた。ワンコールもしないうちにスグルが出る。

「もしもし、スグル。詳しい状況を話してくれ。」

俺の問いに、

「ちょっと待って。」

と言い5秒程の沈黙の後、

「場所を変えたよ。みんなの前じゃ話しづらいから。かなりナーバスな状況。

今までの経緯を始めから話すね。」

とスグルは少し小声で話す。

俺は端末をスピーカーにして、スグルの声が皆に聞こえるようにボリュームを最大にした。

ナギサは素早くカウンターに回り、店のBGMをOFFにする。

「まずシゲさんとヒュウガさんが帰還してきた。

シゲさんがポジショニングをミスしてヒュウガさんと重なってしまったらしい。

そこを狙い撃ちされて串刺し状態となり同時にリタイア。

帰還してきたシゲさんは『すまない!!』ってヒュウガさんとアキラさんに謝っていたよ。」

なるほど廃墟系のフィールドで一番やってはいけないミスのひとつをシゲがしてしまったったわけか。

廃墟系はひとつのフィールドが狭い。だからポジショニングが重なってしまうと同時に狙われる。この狭い空間で、どれだけスペースをつくりテリトリーを広げるかがミッションを左右するのだ。

スグルは続ける、

「その後、しばらくしてミオさんも帰ってきた。

フラッグ戦まで3人で到達したらしい。フラッグは陸鳥。しかも2体。

そしてハイイーターの数が多くてミオさんはここでリタイア。今、わかっている戦況はここまで。

その後の状況は帰還者待ちってとこだよ。ごめん、いったん切るよ。」

スグルはなにか慌てた声を出し、端末をきった。

「さすがツバサと言ったところか…。その戦力でフラッグまで誘導して見せるとは…。」

ヒデが腕組みをして口を開く。しかしこれで残りは二人。二人でフラッグ戦と退路戦とは厳しい状況だ。

ここで悲劇的な速報が入る。


スラムドッグス、トライアル失敗


一同落胆の声を出す。フラッグ戦で全滅といったところだろう。

しかも陸鳥2体とは、なんとも腹のたつフラッグ構成だ。


再びスグルから電話がかかってくる。

『残念だったよ。陸鳥1体はツバサさんのスティンガーで仕留めたようだけど、そこで二人はリタイア。

やはり、序盤に二人を失ったのは痛かったね。みんなロビーで落胆しているよ。』

スピーカーから聞こえるスグルの声も暗い。

『おい、スグル。かわれ。』

アキラの声が聞こえてきた。スグルの端末をアキラが取り上げたようだ。

『おい、ナギサとシーナ。今すぐ一番近い…新宿ステーションに向かえ。ミッションだ。』

と言い放つと端末を切った。


はぁ!?今からだと!?


俺は端末を確認するとすでにヴァンダルハーツに異動させられている。まさか今からトライアルに挑むってことか!?

ってかなんでこの切迫した状況で俺なんだ。ナギサは理解できる。

現状ダイブできるメンバーではまず彼女が選抜されるだろう。

俺じゃなくてもダイキやリョウ、ハルカといったハイプレイヤーが今ここにいるじゃないか!?

「シーナ、いこ。」

ナギサが身支度を始めた。

「ちょっと待って!!シーナじゃなくて私が行くわ!!」

リョウが声を荒げる。

「いや、シーナがいけ。シーナが行かなきゃだめなんだ。」

ヒデがリョウをめる。

「なんでだい?」

ダイキも不満を露にする。

当然だ。次も失敗したら3連隊での【虐殺の門】へのトライは破綻してしまう。

ベストなメンバーで挑むべきだ。

「シーナはレベルをもうひとつ上げなきゃならん。今のペースだとギリギリ間に合わん。

ここまで言えばわかるだろう。シーナ、行け!」

ヒデの言葉に皆が様々な思案をしている仕草をする。

だが真っ先に状況を理解したリョウが俺のコートをクロゼットから出した。そして自分もコートを羽織る。

「ダイキ車を出して。私もステーションまで一緒に行く。」

リョウの言葉に素早く反応したダイキは席を立ち扉を開いてパーキングに向かった。

「私も行く!!」

アサミもダイキに続いた。

「俺とハルカはここで待ってるぞ。ナギサ、シーナ。頼んだぞ。」

ヒデの言葉に頷き、店の扉を出た。

ダイキの車は数分でステーションに到着した。


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