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【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
THE END OF THE WORLD
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THE END OF THE WORLD -7

セーブポイントへ向かう中、ダイキからいくつかの注意点を言われた。まずブースで目覚めたら、新規のプレイヤーはIDカードが支給される。

『端末機から抜き忘れない事。』

様々な注意点を聞きながらニュートラルフィールドに戻ってきた我々は、まるで光りの柱のような円に入った。ここに入った時点でセーブ完了となり、現実へと戻るのだ。視界は暗闇になり、意識が飛ぶ。次の瞬間、俺は目を覚ました。


そこはまさに俺がダイブする前に横たわったリクライニングの上。薄暗いブースだ。ヘッドギアを脱ぎ、リストバンドを外す。体を起こした瞬間ひどい目眩と吐き気を感じ、もう一度リクライニングに倒れた。ダイブは脳に直接シンクロするため、初心者のプレイヤーは慣れていないからプラグアウト時に体の異変を感じるらしい。少し落ち着いた俺は、もう一度体を起こし端末機を確認した。すると機械からカードが出てきた。これがIDカードと言われるFRONTIERの個人識別カードである。初心者プレイヤーが初めてセーブを行った時点で支給される。俺はそれを抜き、ふらつく足元でブースを出た。

ロビーに戻ると、先程より人が増えごった返していた。喫煙室の前までくるとリョウとアサミがすでにいた。

「お疲れ!」

アサミが元気に俺を出迎える。やはり現実世界のアサミは俺より背が低い。

「ヒデとダイキはキャッシャーで並んでるわ。」

リョウは俺にそう言い、本を開いて読みはじめた。このFRONTIERのステーションには不似合いな知的な雰囲気を醸しだしている。

「よーし!完了!。とりあえず場所移そう。」

ヒデとダイキも合流し、俺達はステーションを出て、電気街の外れにあるスターバックスへと移動した。

「これがシーナの取り分。昨日カツアゲされた額な。残りは俺達のコーヒー代だ。」

ヒデが俺に金を渡す。それと同時にアサミとリョウが人数分のコーヒーを買ってきた。

「退役者には驚いたが、たいしたことなくてよかったよ。」

ダイキはそう言いながらミルクと砂糖を多めに入れてかきまぜた。

「今日は楽しかったね~!シーナもがんばったね~!」

アサミは笑顔で言う。

「どうしてですか?」

俺はずっと抱えている疑問をぶつけた。なぜ昨日会ったばかりの俺のために、この人たちは親切にも金を取り返してくれたのだろう。何も答えないヒデに代わり、リョウが口を開く。

「この連中はね、戦争遺児って聞いたら世話やきたくてしょうがないのよ。」

次にダイキが言う。

「僕とアサミは君と同じ戦争遺児なんだよ。僕は3年前、アサミは2年前、ヒデに拾われたんだ。」

だからなぜ?俺はヒデの言葉を待った。

「俺の弟が戦争で死んでな。まだ16才だったが国のためって志願兵となって戦地へ行った。そして沖縄基地で死んだ。バカな弟だよ。こんなクソみたいな国の為に命を失ったんだからな。でも…俺にとってたったひとりの弟だった。ダイキやお前を見てると弟を思い出してほっとけないんだ。」

ヒデは静かに言った。

「今まで何人にお節介した事か…。まぁそれがヒデのいいところなんだけどね。」

リョウが優しい目をして言った。

「あっそうだ。無事ミッションも終わったし、シーナをパーティーから外さないとね。」

ダイキが携帯端末を出して、操作をはじめた。

「ちょっと…ちょっと待ってください…!」

俺はダイキに言った。

「俺も…俺も仲間に入れてもらえませんか…?」

俺の搾り出した声に、ダイキは手を止めた。

別にFRONTIERが楽しかったとか、またやりたいとかって感情じゃなかった。この人たちと一緒にいたい。なんだかそう思ったんだ。

この時代、人を信じる事なんてバカを見るだけだと思っていた。でも、はじめて『人と一緒になにかをしたい』と強く感じた。

「は?なに言ってるの?本来レベル1のあんたはE級フィールドから始めるのが本当なの。今日は私達が一緒だからD級でやれただけ。それに私達は普段B級で戦ってるの。だから私達のパーティーにあんたは入れないの。わかった?」

やはりリョウが真っ先に口撃してきた。

「わかってます。でも…俺はあなた達と…一緒に戦いたいんです。」

俺はリョウの目を見てもう一度頼んだ。アサミは不安そうにこのやりとり見ていた。そこにダイキが口を挟む。

「いや、むしろそろそろフルパーティーでやりたいと言っていただろう。パーティーランクも上がって、逆に四人だとミッションがやりづらい。都合よくミッション時に、いい傭兵がいるわけじゃないからね。」

「は?ダイキなに言ってんの?上を目指すにはアサミのレベルも上げていかないといけないのに、今さら新人を養う時間もポイントもないわよ!それに私やあんたもハイプレイヤーまであとレベルを3つも上げなきゃいけない。経験値だけじゃあと1年はかかるわ!パーティーポイントを余計なやつに割り振る余裕はないのよ!」

リョウはヒデを見て言った。

「ヒデ!あんたもなんか言ってよ!私達はS級…R-SフィールドNO.1【虐殺の門】に行かなくてはならないのよ!

今、新人を育てていたら遠回りにしかならないわ。」

ヒデは腕組みをして考えるそぶりを見せていたが、俺に視線を変えて口を開いた。

「三ヶ月…。今から三ヶ月間仮入隊だ。三ヶ月後、今後お前を雇用するか判断する。それでいいか?」

ヒデは優しい眼差しで俺に言った。

「ありがとうございます!がんばります!」

俺は深々と頭を下げた。

「は!?ちょっと待って!どうしてそうなるのよ?」

リョウは納得がいかない。

「三ヶ月間はパーティーポイントからシーナに割り振りはしない。経験値のみでレベルアップしてもらう。ノルマはレベル3。これなら納得してくれるか?」

ヒデはリョウに強めの口調で言った。そこにダイキが反論する。

「ヒデ!?三ヶ月でレベル3はきついって!僕やアサミだって半年はかかったんだ。」

俺にかせられたハードルは高いらしい…。

「三ヶ月後にシーナをパーティーに入れるかは、リョウ…お前に決定権をやる。うちのエースがどうしてもダメって言うならこの話は無しだ。」

ヒデはもう一度、リョウに念を押した。

「それなら…いいわ…。」

エースって言葉にリョウは気をよくしたらしい。ダイキが俺の方を向いて大きな声を出す。

「シーナ!僕も一緒にレベルアップをサポートするからな!」

「ありがとうございます!」

俺も笑顔で言った。

「シーナがはじめて笑った!わたしも助けるよ!」

アサミも笑顔で言ってくれた。だがヒデがそれを遮る。

「ダメだ。シーナの教育係は…リョウ、お前がやれ。」

「は!?どうして私が…!?」

リョウは驚いて言い返した。

「シーナの雇用の決定権をお前が持っているんだ。だからお前が責任を持って教育しろ。」

ヒデの口調はリョウの反論を許さないほどの強さを発した。

「わかったわ…。ただ言っておくけど、使いものにならないと判断したら三ヶ月と言わずにすぐ解雇よ!いいわね!」

リョウは無理矢理自分を納得させるようにヒデを睨み、席を立った。スターバックスの出口まで怒りで肩を震わせながら歩いていったが、すぐに振り返りテーブルに戻って俺に怒鳴った。

「あんた!毎日17時にステーションに集合!一分でも遅れたら承知しないから!」

そう言うとまた踵を返し、スターバックスから出ていった。

「うまくいったな。」

ヒデが笑顔で俺達に言った。

「リョウの性格上、ああなったら引けないんだ。俺の戦略的勝利だ。」

誇らしげに言うヒデにダイキが反論する。

「だがいくらなんでもリョウに新人教育なんて…。」

「そんな事はない。あいつはまさに天才だ。レベル7だが、動きはハイプレイヤー並に戦う。今までいろんなプレイヤーを見てきたが、あいつに優るプレイヤーを見たことない。あいつに任せればシーナは間違いなく育つ。まぁ俺を信じろ。」

ヒデは自信満々な表情だ。逆に納得できない表情のダイキにヒデは、

「もちろんお前だっていいプレイヤーだぜ。うちのパーティーのブレインはお前だ。冷静な判断力と狙撃能力はかなりのもんだ。

お前とリョウがいればS級に必ず行ける。俺はそう確信してるよ。」

と、肩を叩いていった。

「わたしは?ねぇ!わたしは?」

アサミがヒデに無邪気に聞く。

「アサミは…うちのパーティーの…切り込み隊長だな。」

「隊長!?やった~隊長だって~!!」

このやり取りに俺は居心地の良さを感じていた。

「まぁとりあえず…ようこそシーナ、我がパーティーTHE END OFTHE WORLDエンドオブザワールドへ!」

ヒデの差し出した腕を俺は強く握り握手した。


電気街でヒデと別れ、ダイキの車で施設まで送ってもらった。相変わらずアサミは助手席で、携帯端末にイヤホンを挿して音楽を聞いている。

「シーナ。なんかあったらすぐ相談してくれ。レベル3は絶対条件だってヒデが言ってたのはマジだ。なんでも協力するから。」

ダイキは優しい。まるで兄貴のような包容力がある。

「あの…ひとつ聞いていいですか?」

俺はふと疑問に思った事を口にした。

「どうして、パーティーネーム…エンドオブザワールドにしたんですか?」

ダイキは

「ああ」

とはにかみ、アサミのイヤホンを外した。

「なに?」

突然イヤホンを取られたアサミは驚きながら聞いた。

「シーナに聞かせてやってくれ。THE END OF THE WORLDを。」

ダイキの言葉に、アサミは笑顔で携帯端末を操作し、俺の耳にイヤホンを装着した。

イヤホンから聞こえてきたのは透き通る声の女性歌手が歌う英語の歌。おそらく古いアメリカの歌だろう。

「ヒデの趣味だよ。その歌のタイトルがTHE END OF THE WORLD。

『世界の終わり』って意味じゃない。『この世の果てまで』って一途な愛の歌だ。ヒデらしくないだろ?」

うれしそうにダイキが話す。たしかにヒデの風貌からは想像できない優しい歌だ。俺は英語が苦手だからはっきりした意味はわからないが、なんだか落ち着いた気持ちになる。施設に到着し、ダイキとアサミに礼を言い車を降りた。空を見上げると星が幾つか光っていた。現実リアル仮想バーチャル。その境界線とはなんだろう?ただ『生きる』と言う事が苦行に感じる現実。逆に『生きる』と言う実感を味わう事ができる仮想。今日、俺の中でなにか違う価値観が生まれた。

挿絵(By みてみん)

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