ラズルシェーニエ 破壊 -2
2
フロア1
【デッド・タワー】の門をくぐり内部に入ると50体程のイーターが一斉に襲いかかる。
『さぁ!!始めるぞ!!』
ヒデの声でエンドオブザワールドの戦いが始まった。フロア奥にある階段を目指し、メンバーの連射で一気に駆け抜ける。イーターを倒すのではなく、フロアをひたすら上がる事が重要なのだ。
俺とダイキの援護で道を開きパーティーを階段へと誘導。
ほとんどのイーターを倒すことなくフロアを進める。この繰り返しを150回しなければならない。
気が遠くなる作業だが、極めて忍耐力と持久力が問われるステージである事はわかっている。
『シーナ!!次は僕たちが前だ!!』
ダイキの声で、俺とダイキが前衛の二人を抜かしてフロア2へと駆け上がった。
そこには30程のイーターが待ち構えていた。連射をする俺とダイキ。
『シーナ!!前衛の護衛は俺がやる!!』
ヒデが俺とダイキを抜かしてリョウとアサミの護衛に入った。まだ序の口。所持弾をMAX装備しているが、最後までもつか不安になる。そしてまだハイイーターの姿はない。この後の戦いが予測できないまま、フロア3に進んだ。
最初にフロア3に進出したのはヒデ。ヒデの爆裂音を聞きながら、少し遅れて俺とダイキがフロアに上がった。
その時、リョウとアサミがフロア奥の階段へと走る姿が見える。
『行け!!』
ヒデが俺とダイキに二人を追うように指示する。このフロアの殿はヒデだ。
次は俺とダイキがリョウとアサミの前に出なければならない。
とにかくリョウとアサミを誘導する事が、俺とダイキとヒデの役割なのだ。そしてひたすらフロアを駆け抜けるのがリョウとアサミの役割。この繰り返しを続けて、フロア10までたどり着いた時に、ヒデがメンバーを階段の半ばで動きを止めた。
『みんな被弾はしてないな?リョウとアサミはなるべく弾を使うな。
後半、必ず俺たち援護の所持弾が尽きる。お前たちの戦いはそこからだ。それまではフロアを上がる事だけに集中しろ。』
ヒデの言葉に頷く一同。一呼吸して、
『行くぞ!!』
のヒデの号令で、俺とダイキは先頭でフロア11に突進した。
フロア50
順調すぎだ。ここまでリタイア者をだしていないし、かすった程度の被弾しかしていない。当初の計画通りにミッションがすすんでいた。
『所持弾はまだいいな?』
ヒデが俺とダイキに確認する。順調にきているが弾はかなり使っている。だがまだフロア50。俺の所持弾はライフルで残り半分ってとこだ。あとはイングラムとコルトで凌がなければならず、このペースだと最後までもたない。
アバターSは装備枠が3しかないから、持久戦には不利なのだ。
ダイキはまだ余裕がある。ドラグナーのジョブにより装備重量の上限が大幅に増え、アサルトライフルを二丁装備できている。
ダイキとヒデが最後までもてば、後はなんとかなる。俺は駒として徹する決意でミッションを進めていた。
フロア70
待機の合図を出したヒデが、
『さぁ…ここからが本番だ。』
と意味深に言った。すでにミッションを開始して1時間半を経過している。ここまで一般ミッションと変わらない難易度で進めてきた事に違和感をもっていた。だが常に状況の変化を気にしながら70フロアを上がってきたことより精神的な不安と戦ってきた感がある。
『シーナ、大丈夫?』
リョウが俺を気遣う。前を開くために最前線でメンバーを誘導してきた俺が一番精神的に疲弊している事を察してくれたのだ。
『うん、大丈夫です。』
強がって見せたが、かなりキツイ。残りの弾数にも気をつけていかなければならない。
『ここから残り半分か…。きっと変わるね。』
ダイキの言葉にヒデが頷く。変わるとはもちろん敵の質、すなわちハイイーターの事だ。ここまではイーターの姿しか見えなかった。だから連射でいなして駆け抜ける事ができた。
しかし、ハイイーターともなれば、簡単には抜けさせてはくれないだろう。無視してこれたイーターとは違い、相手にしなくてはならない。ここまでかなりの弾を消費してきた。精神的にもギリギリ。だが本番はここからなのだ。今日ほどこのFRONTIERをクソゲームと思ったことはない。しかし…行くしかない。
『シーナ!!がんばろ!!』
アサミの声に背中を押され、俺は先陣きってフロア70へ駆け上がった。
フロア78
フロアに上がった俺はアサルトライフルを構えた。ハイイーターが30体。こちらに迫ってきている。
『やっとおでましか!!』
ヒデの声でメンバー全員が一斉に連射を始めた。ここからは総力戦だ。上のフロアへ上がる階段の前にも20体程のハイイーターがその通路を塞いでいる。
『態勢を整えろ!!』
ヒデが叫ぶ。まずは目の前の迫るハイイーターを殲滅する事。
これに集中だ。リョウとアサミが左右に飛びハイイーターを散らす。
ダイキの乱射でハイイーターの動きを止めた。散らされたハイイーターは的を失い、逆に的へと変わった。そしてパーティー全員が一気にハイイーターに向かって攻撃。我がパーティー得意の戦術だ。この形に持ち込めば後はスピード勝負だ。一気に殲滅にかかる。半分のハイイーターを倒した段階で、リョウがニホントウを抜いて斬りかかる。リョウにハイイーターが集中したところで、背中を向けた敵たちにトドメの連射を浴びせる。
『よし!次だ!!』
ヒデの号令で階段を占拠しているハイイーターに意識を変える。ヒデとダイキの連射を三人で援護。
『シーナは弾を温存!!』
リョウが俺の前に出た。アサミが一気に淀みない乱射をするハイイーターの裏に入り挟み撃ちにする。普段の一般ミッションでガトリング部隊に使う戦術だ。それぞれが自分に与えられたポジショニングを確実にこなす。
これがFRONTIERの醍醐味なのだ。
フロア112
押し寄せるハイイーターの攻撃を総力戦で倒しながら、なんとかここまで上がってこれた。しかし、すでにメンバー全員が満身創痍。ミッション開始から2時間半を経過している。
戦うハイイーターもフロアごとに様々なバリエーションを見せ、その場の判断に翻弄される俺たちはかなりの精神的な疲弊を見せていた。だがギリギリのところでフロアを重ねる俺たちに大きなアクシデントが待ち構えていた。いや、アクシデントではなく、これが本当のトライアルの姿である。
フロア110でダイキが脇腹に被弾した。致命傷ではないが、傷は深い。ここまで前衛と後衛のバックアップに走り回っていたダイキが一番危険にさらされていた。時より振り返りダイキを気にするアサミをヒデが厳しく注意し前に集中させていた。あくまでも我々バックアップは死ぬための存在なのだ。
それが最適なタイミングでなければならない。脇腹をおさえて痛々しく戦うダイキの姿に、彼がまだそのタイミングではないと自覚している事に胸が締め付けられる。しかし、前を行くアサミも肩に被弾しているし、俺も身体中にかする程度の被弾をしていた。アサミも俺も傷は深くないが出血の量から、ミッションが長引けばリタイアの可能性も高い。特にアサミはフィジカルが低い。残りのフロアをどうこなすか…ヒデの判断が左右する。
『ポジショニングを変えるぞ。』
ヒデの言葉を黙って聞くメンバー。
『ダイキは殿に。スキッパーには俺が入る。シーナは俺のバックアップだ。』
ヒデの判断はリタイア者を出さないことを選択した布陣だ。ダイキもなるべく上に連れていきたい。これは理解できる。最上階のフラッグ戦までメンバーを減らしたくはない。しかもアサミの被弾状況を考えれば時間をかけられないし、俺の弾も残り少ない。しかしこれにリョウが反論する。
『ヒデ!!私がスキッパーに下がる。シーナをトップにして弾を温存させて。』
比較的メンバーの中では被弾がなく弾にも余裕があるリョウがアタックを志願した。このミッションはトップがアタックではなくバックアップがアタックという特殊なステージ。
『わかった。リョウまかせるぞ!!』
ヒデは了承し、リョウを誘導役に終盤戦に突入した。




