BELIEVE IN LOVE -1
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今日は連隊の緊急ミーティングで横浜に向かっている。
リョウとスグルと3人で電車で移動中だ。
この8ヶ月間で事態は急速に動いた。
ローテーションメンバーによってエンドオブザワールドは予定よりも早く昇級できるところまできている。
おそらく今日のミーティングは、『その先』のプランがアキラから提案されるであろう。
アキラのプラン通りにここまできた。
凄い人だ。何手も先を見据えた連隊運営をやって見せたのだ。
何よりメンバー15人中、加入時からハイプレイヤーだった7人に加え、さらに5人をハイプレイヤーに仕上げた。
これは念密なポイント管理が成せたアキラの大きな実績である。俺はこの先の展開がどうなるか、まるで人事のような感覚でリョウと共に、『四川楼』へと向かった。
四川楼に集まった14人のメンバー。ツネは沖縄だからもちろんいない。
「今日は今の現状とこれからのプランを提案したい。」
アキラの一声で始まったミーティング。これからのプランとはすなわちトライアルのことだろう。
「まずメンバーの現状だが、12人のハイプレイヤーがいる状況が作れた。
これは各パーティーの努力の賜物である。本当に感謝する。」
アキラが軽く頭を下げる。
連帯発足後にハイプレイヤーになったのは、アツヒロ、リョウ、ダイキ、シゲ、ミオの4人。リョウはハイランダー。
アツヒロとダイキはドラグナーと予定通りのジョブをつけ、シゲはジェネラス、ミオは悩んだあげくハイランダーをつけた。ミオは当初ピグマリオを選択しようとしていた。
【虐殺の門】でアタック部隊の盾になる決意をしていたのだ。協調性があり空気を読めるミオらしい発想だ。
しかしアキラからそれを止められた。なぜならミオこそアタック部隊の一人であるからだ。そして彼女は状況を察しハイランダーを選んだ。ナギサ、リョウ、ミオのハイランダー3人娘がアタック部隊であるというのが、今の連隊の認識だ。
「おそらくスグル、シーナは【虐殺の門】へのトライまでにハイプレイヤーは間に合わない。
だが各人の役割をしっかりこなしてほしい。」
アキラが周りを見渡しながら言う。
アサミはレベル9。もう少しでハイプレイヤーだが時間的にあと数ヶ月かかる。年内トライ可能なら間に合わない。
しかし、アサミもスピード特化の上位プレイヤーだ。アタック部隊に入るだろう。スグルと俺はレベル7。
これは少なくともあと1年はかかるから完全アウトだ。
しかしこの短時間でアサミとスグルと俺が飛躍的にレベルを上げることができたのにはローテーションによる経験値の取得が大きい。1日3回のミッションで獲たパーティーポイントの多くを3人のレベル上げに使ってくれたのだ。だが俺がアタック部隊にはなることはないだろう。
おそらく補助パーティーに属し、アタック部隊を守る盾となるためスピードでついていきガードする役割になる。そう考えると本番での自分のポジションが気になる。だがリョウを全力で守る…。
これだけは揺るがない決意が俺の中に芽生えていた。
「それとエンドオブザワールドとスラムドッグスの資産をすべて出してもらう。」
アキラの言葉にヒデとヒュウガに反論はない。すでに承知の表情でそれに頷く。
もちろん理解していないメンバーのためにアキラは続ける。
「新たにハイランダーをつけたリョウとミオはスピードのパラメータの上限が上がっている。
それを二つのパーティーの資産からポイントを限界まで上げてくれ。」
そういう事か…。アタック二人のスピードを、ジョブをつけた分成長させなければ意味がない。そのポイントはパーティーポイントを使うということだ。
「そしてヴァンダルハーツの資産からは重火器を購入してダイキとアツヒロに譲渡する。」
ドラグナーをつけた二人には【虐殺の門】の城壁を破壊できるランチャーをヴァンダルハーツの資産から購入して装備させる。アキラはすでにラストステージでの戦いをイメージできているのだ。ここでツバサが口を開く。
「アキラ、年内トライは間違いないのね?」
アキラは頷く。ここでツバサがいうトライとはトライアルのことだが、頷くアキラは【虐殺の門】を意識した頷きだった。このあたりでメンバー間の意識のズレを感じたハルカが確認する。
「アキラ、年内にこの連隊で【虐殺の門】へ行くという意味なのね?」
アキラは大きく頷いて言葉を続ける。
「エンドオブザワールドはあと10ミッション程でS級に上がる。その後、順次トライアルへ臨む。
4パーティーのうち3パーティーがクリアしなければならない。
非常に厳しい戦いになるだろう。だが、これで失敗したら、2ヶ月待たなければならない。
だからパーティー構成にも、最適なメンバー選定をしてのぞまなくてならない。みんな心して臨んでほしい。
【虐殺の門】へのトライは…大晦日を目標と覚悟してくれ。」
アキラの言葉に一同緊張感が走る。
「トライアルの順番は?」
ヒデがアキラに問う。
「まずはメインのパーティーであるレイニーデイズのアカウント。
続いてエンドオブザワールドとスラムドッグス。
これで決まればいいが、最後にヴァンダルハーツのアカウントを保険で用意しておく。
メンバーはその時の状況で編成していく。
もしトライアルで自分がえらばれなくとも、連隊全体のクリアとして納得してもらいたい。
【虐殺の門】へは全員連れていく。ここまではいいか?」
アキラが皆に問いかけるように語る。
「ちょっといいか?」
ヒデがアキラに発言の許可を伺う。
「なんだ?」
アキラはそれを許可する。
「レイニーデイズとヴァンダルハーツの編成はアキラに任せる。
しかし、スラムドッグスとエンドオブザワールドのトライアルはオリジナルのメンバーでやらせてほしい。」
ヒデがアキラを睨むように言う。ヒュウガが続く。
「やはり、ここまで一緒にやってきたメンバーだ。【虐殺の門】の編成はアキラにすべて一任する。約束するよ。
しかし、トライアルはここまで苦楽を共にしてきた仲間と一緒にやらせてほしい。」
「それでは連隊の意味がない。」
アキラがキツい言葉で反論する。アキラは連隊でメンバーをひとつと考えている。
しかし、ヒデとヒュウガはこの考えに異論を呈した。
トップ同士だと話がまとまらないと判断したアツヒロが口を出す。
「アキラさん、みんな【虐殺の門】への情熱はあんたと一緒だ。
しかし、このゲームはパーティー単位でここまでやってきたメンバー間の繋がりがある。
だからこの大舞台はスラムドッグスで挑みたいんだよ。」
アツヒロの言葉にアキラは腕を組んだ。それは様々な状況を一瞬にして頭脳の中で処理しているのがわかる。
「わかった。そうだな…お前たちの気持ちは理解できる。いや…それが正しい。
スラムドッグスにはツバサを入れよう。これで横浜連合になるだろう。だが…失敗は許さんぞ…。
特にエンドオブザワールド。お前たちが鍵だ。
必ずレイニーデイズ、スラムドッグス、エンドオブザワールドの3つのアカウントで決める。いいな?」
アキラは笑みを浮かべながらそれを認めた。
おそらくヒデとヒュウガの二人によって密に話し合った計画だったのだろう。
何年も一緒にやってきたメンバー大きなミッションを達成したい。
それは至極あたりまえの考えであるのは感情的にも納得できた。
ここでメンバー全員の頭にひとつの疑問が浮かぶ。
それはメインパーティーであるレイニーデイズのメンバーだ。
ミッションをコンプリートするには正規雇用メンバーがセーブすることで成し遂げられる。
今の連隊でアキラ、ヒュウガ、ヒデの3人は各パーティーのリーダーである以上、正規雇用としてレイニーデイズに参加できない。
さらに言えば、レイニーデイズはシュウがパーティーリーダーであり、このアカウントでトライするには、四人の正規雇用メンバーとシュウの枠を埋めるヘルプメンバーでの構成となる。
厳しいトライで正規雇用メンバーを5人揃えられないというハンデがあるのだ。
アキラはすべてを理解した表情でメンバー発表をした。
「スラムドッグスはフィールドNO.2【殺戮の館】にヒュウガ、ミオ、アツヒロ、シゲ、ツバサ。
エンドオブザワールドはフィールドNO.4【デッド・タワー】にヒデ、リョウ、ダイキ、アサミ、シーナ。
レイニーデイズはフィールドNO.3【絶望の橋】にナギサ、リョウ、ミオ、ハルカ…そしてヘルプメンバー枠で俺がいく。」
スラムドッグスとエンドオブザワールドはオリジナルメンバーという概念では理想通りであるが、レイニーデイズの選抜メンバーはまさにアタック部隊のハイランダー3人娘の試験的ミッションである意図がはっきりわかった。
この中で名前を呼ばれなかったスグルとツネ。
この8ヶ月間、連隊に尽くしてきたメンバーである。アキラはスグルを見て、
「スグルは保険的な立場であるがヴァンダルハーツのメンバーに入れる。準備は怠らないでくれ。」
と念を押す。これはどんな状況にも対応できるようにとメンバー全員に告げている。スグルは静かに頷く。
スグル自身も理解しているのだ。自分がこの連隊では、サブメンバーであると。しかし、その表情に落胆はない。
彼はこの8ヶ月間で連隊としての歯車のひとつであるとの自覚が芽生えていた。
むしろ何らかのトラブルでメンバーの入れ替えを余儀無くされた時が彼の出番である。
スグルはアキラに向かって真剣な眼差しを向けていた。
レイニーデイズ連隊が結成されて約一年半。
ヴァンダルハーツを犠牲にして連隊のレベルアップに尽くしてきたアキラ。
横浜連合を破綻にしたが、新たに【虐殺の門】へと道を開いたスラムドッグス。
急速なレベルアップのためにパーティーメンバーのトレードを余儀無くされたエンドオブザワールド。
それを繋ぎ合わせてひとつにしたレイニーデイズ。
様々な状況を受け入れ克服した結果、世界初の3パーティー連隊をトライアルまで進めてこれたのだ。
しかし、本当の戦いはこれからだ。
【虐殺の門】への挑戦権を獲るための戦いトライアル。3ステージあるトライアルは接続上限が1パーティー。
この戦いは極まりなく、この5年間のクリア率は【殺戮の館】が10%、【絶望の橋】が15%。【デッド・タワー】が10%だ。
このトライアルステージをクリアしたパーティーに【虐殺の門】への挑戦権が与えられるのだ。
「3週間後…エンドオブザワールドのS級昇進後にトライアルを開始する。
歴史を作ろう。いや…歴史を壊してやろう!!」
アキラの一声に皆大きく頷いた。




