PYGMALIO -5
5
その夜、市街地で飯を食っていたら、アキラの端末が鳴った。
それを確認したアキラは、
「行くぞ。」
と俺を促した。豚足を貪り食っていた俺は、アキラに引きずられるように店を出された。
「どこいくんですか?」
俺の問いに、
「那覇ステーションだ。」
とアキラ。
「ミッションですか?」
「呼び出しだ。」
なんだかわからないがとにかくアキラの後を追ってステーションにたどり着いた。
那覇ステーションは古民家のようなたたずまいに風土的な飾りが見える外観。
新宿や電気街のような近代的な装いとはだいぶかけ離れていた。
しかし一歩中に入るとそれは一変して横浜ステーションのような最先端のデザインで広いロビーには人がごったがえしていた。
「S級のオープンフィールドで落ち合うぞ。」
そういうとアキラはブースへと向かった。俺も人ごみを掻き分け空いているブースを探しダイブした。ニュートラルフィールドからオープンフィールドへ移動。S級のオープンフィールドは人もまばらですぐにアキラを見つけることができた。
合流して2人でバトルフィールドへ向かう。俺はなにがなんだかわからないままアキラについて行く。
『呼び出して悪かったな。』
バトルフィールドに立つ一人のアバターL。声でわかる、ツネだ。
『いや、かまわんさ。』
アキラが答える。
『お前たちにひとつ警告しときたくてな。』
とツネ。
『警告?』
アキラが聞き返す。
『これ以上、キョウジに近づくな。』
『どういう意味だ?』
『キョウジはもう長くない。【虐殺の門】をコンプリートするなんて夢物語をキョウジに見せないでくれ。』
『お前なに言っているんだ?意味がわからん。』
『穏やかに余生を過ごして欲しいんだ。それなのにお前たちがキョウジの気持ちに火をつける。
これでコンプリートはおろか、ステージに立つ前に命尽きちまったらキョウジは無念の塊であの世に行くことになる。
だからこれ以上キョウジに期待を持たせるのはやめてくれ。』
『なるほど。それで腕ずくで俺たちをあきらめさせようって腹で、ここに呼び出したってことか?』
『その通りだ。アキラ、勝負しろ。』
そうか・・・。この人・・・本当にキョウジのことを慕っているんだな・・・。
『わかった、ツネ。よしシーナいけ。』
はぁ!?あんたが指名されてんだよ!
『おい!アキラ!俺はお前と勝負するためにきたんだ!舐めてんのか!!!』
怒るツネ。
そりゃそうだ。
『お前が呼び出しといて勝手なこと言うな。それにお前こそ舐めてるだろ。
うちのアタッカーはスティンガーのツバサに仕込まれたプレイヤーだ。
この世界から足を洗ったブランカーに引けはとらん。』
とアキラが言い放つ。
おいおい・・・相手はハイプレイヤーだぞ・・・。タイマンで勝てるわけないだろう。
『アキラ・・・お前後悔するぞ・・・!』
ツネがライフルを構える。
ちょ、ちょっと待て!
アキラが俺の後方につき耳打ちする。
『いいかシーナ。やつのジョブはコーネリアスだ。
ある程度スピードもある。まあ、言うまでもないがすべてにおいてお前より上だ。
だがな・・・タイマンならお前にも勝機はある。陸鳥を経験しているな?
あいつを陸鳥だと思え。陸鳥を相手にしたときなにをした?思い出せ。必ず勝てる。』
そういうと俺の背中を押した。
俺はアサルトライフルを構え、まず右に旋回した。それについてくるツネ。
ツネの連射をかわしつつツネの足元を狙う。だがツネも早い。
しかしスピードだけで言えば俺にもチャンスがある。スピード特化のパラ振りがここに生きている。
しかし命中率のパラ不足がここで邪魔をする。なかなか的を得ない。
とにかくスピードでツネを揺さぶりながら距離を縮める。
『詰めすぎるな!』
アキラの言葉に足が一瞬止まる。ここでツネが一気に攻撃してくる。
俺は全力で後方に引き30メートルほど距離をとった。
『逃げてばかりじゃつまんねーぞ!レベル3!』
ツネが挑発してくるが、俺は次の手を必死に考えていた。陸鳥のとき・・・俺はどうやって戦った?
逃げてばかりだった・・・そんな時、陸鳥が一気に間合いを詰めてきた。
そして・・・。俺は腹をくくった。
アサルトライフルをしっかり相手に向け、正面からまっすぐツネに突進していった。
『ようこそ!レベル3!死ねやぁ!』
俺はツネの連射を際どく避ける。アタッカーやってるとこういう連射には対応できるようになってくる。
少しひるむツネの連射の隙を見極めて俺はスライディングする態勢で低い位置を取った。
そしてツネの膝を狙って渾身の連射を放った。
『このクソガキがぁーーー!』
崩れ落ちるツネ。俺の連射がツネの両膝を打ち抜いたのだ。
『てめぇーーー!!!!!やりやがったなレベル3!そこを動くな!死ぬほど苦痛を味わらせてやる!』
ツネが叫ぶ。ツネは両膝を地に着け俺に銃口を向けた。
俺はもう動けない。すでに苦痛を味わっているからだ。
今の突進で肩と脇腹に数発被弾した。
痛い・・。
燃えるような熱さの中に襲う激痛。
『よし、シーナ。お疲れさん。リセットしていいぞ。』
アキラが言う。
はい。お言葉に甘えて。
俺はリセットして強制帰還した。
ブースに帰還するとリアルダメージの影響で肩と脇腹に少し痛みが残っていた。
リセットしなくてもじきにリタイアしていただろう。だが痛みは短時間で済ませたい。
アキラの言葉は救いの声だったが、よく考えてみるとこうなったのはアキラのせいだ。
文句のひとつも言わなければ気がすまない。ブースを出て、ロビーでアキラを待つ。
すると先に足を引きずったツネが出てきた。
「あ、どうも。」
ちょっと気まずい。
「レベル3。俺を相手に真正面から突っ込んでくるなんてバカか?しかし・・・なかなかの根性だ。見くびって悪かった。膝撃ちくらっちまったんだ・・・俺の負けだ。」
ツネが穏やかな表情で言う。俺はツネに肩を貸してロビーのベンチに誘導した。
「いい勝負だったじゃないか。」
アキラが帰ってきた。
「ちっ・・・とんでもないヤツを飼ってやがるな。」
ツネがアキラに皮肉を言う。俺がリセットして帰還した後、なんらかの話が2人でなされたようだ。
「アキラ・・・。本当にキョウジを【虐殺の門】へと導いてくれるんだな?」
ツネが問う。
「もちろんだ。その約束をするためにわざわざ沖縄まで来たんだ。お前も準備しておけ。もしかしたら招聘するかもしれん。」
アキラが答える。ツネもスグル同様に『ストック要員』とするようだ。
「2人ともついてこい。俺の店で飲んでいってくれ。」
ツネは立ち上がり俺たちを繁華街へと誘導する。
アキラは、
「どうだった初のタイマンは?」
と俺に聞く。
「最悪ですよ。」
の俺の言葉に、
「本当にいい戦いぶりだった。成長が見れてよかったぞ。その調子で今後も精進しろ。」
と笑いながら言う。
このあと俺とアキラはツネの店で酒をのみ、翌日帝都へと帰還した。




