DILEMMA -12
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「お洒落なお店・・・。」
リョウがつぶやく。
「私のお気に入りのレストランバーよ。」
ハルカが得意げに言う。代官山にひっそり佇むその店は薄暗い照明にステンドグラスがささやかな明かりをともし、客はカップルが多くデートスポットらしい。
「なにげにオンリーイエスタディに似ていますね。」
俺の言葉に、
「バレたか。ここは私が学生時代にバイトしていた店で、そのまま修行もしたの。
だから似ているってよりもパクッたってのが正解。」
とハルカは笑って言う。
「ハルカちゃん、いらっしゃい。」
初老のマスターが声をかけてくる。
「お久しぶりです。」
丁寧に返答するハルカ。
「かわいいお連れさんたちだね。」
「ありがとうございます。今日はいつものコースでお願いします。
食べ盛りがひとりおりますので、ひとつは多めに作ってくださるかしら?」
「シャンパンもサービスしておくね。」
「ありがとうございます。」
なんか・・・大人の会話だな。俺とリョウはだまってそのやりとりを聞いていた。
「ところで2人って付き合ってるの?」
ハルカが突然聞く。
「そんなわけないじゃないですか!!」
リョウが全力で否定する。俺はまんざらでもない感じ。そうなればいいなぁっていつも思ってる。
「そうなんだ。凄く仲がいいからてっきり。」
ハルカは不満そうだ。
「あんたもなんか言いなさいよ!」
リョウが俺に促す。
「まぁ・・・師弟関係です。」
と俺。ハルカはそんな俺を上目遣いで見る。ハルカは俺がリョウのことが好きだって気づいている。
「まぁいいわ。さぁ今日はたくさん食べてね。」
とハルカはこの話を終わらせた。テーブルにブーブクリコが運ばれてきた。価格は驚くほどのものではないが、世界を代表するスパークリングワイン。グラスを傾け一口入れる。なんか贅沢な気分になる。
おいしい食事だ。そして隣にはリョウがいる。最高の時間を堪能していた。
「これからが本当の戦いの開始よ。2人とも気を引き締めて。絶対にリタイアしない事。いいわね?」
ハルカが俺たちに念を押す。彼女にも意地がある。ここまで人生を翻弄させられたFRONTIERにケジメをつける戦いでもあるのだ。
「あと・・・。2人とも素直にね。」
と意味深な言葉を残して席を立ち、カウンターにいるマスターと会話をしにいった。なんか気まずいじゃないか・・・。
「シーナ・・・。」
リョウがつぶやく。
「はい?」
「一緒に・・・一緒に戦ってね。ずっと一緒に・・・。」
リョウの言葉に、
「はい。一緒に戦います。ずっと一緒に・・・。」
と静かに答えた。




