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【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
DILEMMA
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DILEMMA -9

その後、4ヶ月間ヴァンダルハーツで鍛えられた俺はさらにレベルを5に伸ばした。

ツバサの3往復には苦戦しているが、ミッションではS級の下位フィールドには順応できるようになった。

この世界に足を踏み入れて10ヶ月。尋常ではない早さでレベルが上がっていく。

スラムドッグスもS級に上がり、エンドオブザワールドもA級に昇進。

着実に【虐殺の門】へと近づいている。

その間もキョウジの捜索は続けられていたが、一向にその姿は捉えられずにいた。

そんなある日突然、アキラがヴァンダルハーツとしてトライアルに挑むと言い出した。しかも今から。

キョウジのプライベートページからメールでコンタクトをとっても一切返答がない状況に、アキラは切り札とも言うべきトライアルの招聘依頼をキョウジに送ったのだ。

現実世界で会えないなら仮想空間に呼び出すという強引な手法であるが、これにキョウジから承諾の返答が来た。

トライアルの端末接続料はほかのミッションステージに比べてかなり高額になる。

S級パーティーが頻繁にトライアルに挑めない理由にこの資金面と期間ペナルティーが大きな壁となっている。

期間ペナルティーとはトライアル失敗後、2ヶ月後でなければ再挑戦できないといった制限である。

だから最良のタイミングで挑まなければ、次の挑戦に2ヶ月待たされるわけである。

この大きなリスクを犯して、やっとキョウジをおびき出すことまでこぎつけたのだ。

そしてアキラはトライアルに挑戦する気はない。ニュートラルフィールドでキョウジに直接交渉することが目的だ。

このミッションに参加するのはアキラ、ハルカ、ツバサ、そしてなぜか俺。だからいつも思うんだ。なぜこういうときっていつも俺が借り出されるのかって・・・。

アキラ曰く「雑魚がひとりいたほうが場が和む」だそうだ。


これは完全に悪口だ!

ハルカのフォローが入る。

「今日は突然決まったことだから、ヴァンダルハーツ主導で交渉することになったの。

だったらあなたも行く義務があるでしょ。それにトライアルに行くのにフルメンバーじゃなかったら怪しまれるわ。」

と。なるほど人数あわせってのが真相か。

ツバサはキョウジと面識があるから今日のメンバーには絶対欠かせないが、俺が行ってなんの役にたつというのか・・・。

「ぶつぶつ言わずに行くぞ!」

アキラに背中を叩かれ、俺たちはブースへ向かった。 


S級ニュートラルフィールド。

いつも思うのだが、ダイブした時、この小さな町のようなフィールドのどこかにランダムに立たされる。

だから毎回、待ち合わせ場所まで歩かなければいけない。

これが実は非常にめんどくさい作業で、目標となる場所は混雑するから仲間を見つけるのに苦労する。

だからプレイヤーたちは皆、それぞれ個性を出したアバターコスチュームを身に纏うのだ。

俺はボディー装備は迷彩レベル4という戦闘服。ヘッドは初期装備のままだ。これのほうが逆に目立つらしい。

もともとヘッドパーツなんてお飾りみたいなもんだし、けっこう気に入ってるからかまわないんだが、S級をこの顔で歩くのは少し恥ずかしい。

いつものように足早に待ち合わせ場所へと向かい、パーティーと合流。キョウジの到着を待った。

そこに現れたひとりの傭兵。

『ヴァンダルハーツだな?』

その声に反応したアキラが、

『よくきてくれた。キョウジ。』

と、返答をした。

『おまえのしつこいメールを無視し続けていたが、さすがにうっとうしいから出てきてやった。

もう終わりにしてくれよ。』

挿絵(By みてみん)

キョウジは穏やかな口調ながら力強さをもつオーラでアキラに言った。

『それはキョウジ、お前の返答しだいだ。俺たちの腹はわかっているんだろう?』

アキラが一歩間合いを詰めて言う。

『ヴァンダルハーツのアキラ、帝国最強の女、スティンガー使い。

そろいも揃ってFRONTIERの亡霊どもが俺にスカウトをかけてきやがった。不快だ。』


アキラはうんざりするような口調で俺たちを見ながら言った。

『亡霊だと?』

アキラが聞き返す。

『未だにこのゲームにとり憑かれ、目的もなにもないゲームをさ迷い続ける亡霊さ。』

キョウジが言うとすぐさまアキラが反論した。

『だったらキョウジ、お前が一番のゴーストだ。』

『まちがいねぇな。』

キョウジは軽く笑った。アキラがさらに言う。

『目的はある。もちろんこのゲームのコンプリートだ。逆に聞くが、お前はなぜ今もこの世界にいる?お前の目的はなんだ?』

『果てが見たい・・・。』

とキョウジ。

『果て?』

とアキラ。

『誰かが俺に果てを見せてくれるかもしれない。その場にいればさらにいい。俺はこのゲームが崩れていく瞬間がみたいんだ。いや、その崩れた後に残るなにかを見届けたい。このゲームにすべてを賭けた者の宿命だ。』

キョウジが言う。


この2人・・・かみ合わない!?


2人のやりとりを聞きながらイライラしてくる自分を感じる。しかし、この2人の考え方はまったく同じなのがわかる。自分じゃなくてもいいから、このゲームの結末を見たいという動機までは一致しているのだ。だからキョウジは上位フィールド専門の傭兵をしているのだろう。

『俺たちと組め。お前の目的を叶えてやる。』

アキラが少し高圧的な態度にでた。こうでもしないと話が進まないことに気づいたのだ。

『レイニーデイズの執念はすごいな。お前のとこのリーダーも未だに戦っているようだ。』

キョウジの言葉にハルカが反応した。

『シュウが!?どういうこと?』

『1年ほど前か・・・S級の上位フィールドで1度見た。相変わらずトリッキーな動きで戦っていたぞ。』

とキョウジ。ハルカは俺を見ながら小刻みに頷く。俺もそれに応える。やはりシュウは今もこのゲームの中で戦っているのだ。

『そうか・・・あいつ今も戦っているか。』

アキラもつぶやく。

『で?どうやってこのゲームをコンプリートするって?』

キョウジがアキラに聞く。アキラはレイニーデイズ連隊の概要を説明した。黙ってそれを聞くキョウジ。ツバサも加わりアキラの説明に補足を入れる。俺の横ではハルカがシュウの手がかりをもっと聞きたくてウズウズしているのが伝わってくる。一通り話が終わるとキョウジは大きく息を吐いた。

『亡霊が生き返る。さ迷う時間というのはそうそう無駄にはならないようだな。』

この人なに言ってんだ?

だがアキラは理解しているようだ。

『そうだ。この長い自縛霊の時代が俺たちをより強固にしてひとつに戻したんだ。』

ツバサも加わる。

『キョウジ、あんたも生き返る時期がきたのよ。』と。


しばらくの沈黙の後、

『俺は誰ともつるまない。』

とキョウジが言った。

『キョウジ・・・。』

アキラの落胆にも似たつぶやきが聞こえる。

『しかし、俺は傭兵だ。招聘されれば受けよう。

お前たちの余興に1度だけ付き合ってやる。その時がきたら招聘しろ。じゃあな。』

キョウジはそういうとプラグアウトするために背を向けた。これは限りなくギリギリの承諾である。連隊には入らない。しかし【虐殺の門】のトライは手伝う。アキラの思惑とは少しずれたが、キョウジを1度だけ使う権利を得たのだ。突然、ハルカが叫ぶ。

『ちょっと待って。シュウの話をもっと聞かせて!どこのフィールドで見たの?』

キョウジは振り返りもせず、

『いつかお前たちも会えるさ。そして絶望する。自分の目だけ信じろ。人の情報こそアテにはならん。』

と言い残し姿を消した。

ひとつの収穫と、ひとつの謎を抱えた俺たちはプラグアウトしステーションのロビーで顔を合わせた。

「とにかく、シュウのことをリョウに教えないと。」

ハルカの言葉にアキラが、

「いや、まだ言うな。」

と強い口調で言う。

「なんでですか?」

俺の問いに、

「今はまだ情報の域に過ぎない。会えればいい。しかし会えなければリョウは本当にさ迷う亡霊になっちまう。キョウジの言った事が本当ならばS級で見つけることができるだろう。

自分で見つけるまで余計な情報は入れないほうがいい。」

アキラが俺たち2人をたしなめるように言った。確かにアキラのいう通りこれを知ったリョウはシュウを探し続けるだろう。しかし納得のいかない俺とハルカ。

「とにかくキョウジの招聘は制限付だが成功した。今日はその収穫だけで充分だ。」

アキラはハルカの肩をポンと軽く叩きステーションの出口へと向かった。俺は2人と別れ、ダイキに連絡を取った。

リョウには言わない。しかしダイキには伝えたほうがいい。アンデッド関係の情報はダイキに集めるのが俺たちの約束だ。今もひとりで戦うシュウ。

いや、アンデッド者が皆そうなのか?

俺の端末を持つ手は震えていた。 


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