表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
DILEMMA
57/108

DILEMMA -4

それから2ヶ月。ツバサの猛特訓と過酷なミッションの日々の中、オーストラリアのパーティータスマニアデビルの【虐殺の門】へのトライが決まった。

その日、俺たちは横浜中華街にある四川楼に集合。店にある大きなテレビに回線を繋ぎ、LIVE中継を皆で見るのだ。タスマニアデビルも長年このFRONTHIRを牽引してきた歴史あるパーティーで、【虐殺の門】へのトライはこれで3度目。過去のトライはいずれも1分ももたずに全滅している。海外の有力パーティーに多くの見られるメンバーローテーションを取り入れていて、状況に応じたメンバー構成を可能にしている。

メンバーローテーションとは、1パーティーに対してミッション可能最大人数の5人をその時のレギュラーとし、その他『ミッションに参加しない』正規メンバーも存在しているということ。例えるならば1パーティーに10人の正規メンバーがいて、ミッションごとにそのステージにあったメンバーをチョイスして5人のレギュラーを作るといった作戦のことだ。他のメンバーはどこにも属さないフリーランスの立場になる。しかし他のパーティーに正規雇用されるわけではなく、あくまでもそのパーティーの控えメンバーであるのだ。

今、レイニーデイズ連隊も似たような状況にある。3パーティーが状況に応じたメンバーの入れ替えを積極的に行っているからだ。ただこのメンバーローテーションとはまったく意味が違う。あくまでも1パーティーでのコンプリートを目指したパーティー環境であり、連隊ではない。

しかしこのパーティー体系が今の有力パーティーの主流のスタイルとなっている。パーティーランクを早く上げる手段にもなるからだ。メンバーがミッションを終えてプラグアウトしてから20時間は再ダイブできない。

だが5人がプラグアウトした後、違う5人が同じアカウントでミッションに出れば、そのパーティーは1日で2回分のミッション成果を獲られる。20時間ルールとは個人への規制であってパーティーへの規制ではないからだ。

こうやってオフィシャルとはまったく違う、様々なパーティー形態が誕生しているのもこのゲームの醍醐味といえるだろう。

「おい、これ見てみろ。」

ヒデが端末をアキラに見せる。

「キョウジだと!?」

アキラの言葉に一同ざわつく。アキラは今日のタスマニアデビルのメンバーを見て驚いているのだ。キョトン顔なのは俺とリョウとアサミ、ミオとナギサだ。

「やっぱりあのキョウジだわ。」

ハルカが自分の端末を見ながら言うと、横からツバサがその画面を見て「うそ・・・。」と驚きを隠せない表情になった。

「誰?」

リョウが俺に聞く。もちろん知るわけもなくダイキへ振る。

「おそらくブラックダリアのキョウジのことだろう。」

ダイキも半信半疑の返答。

ブラックダリアって、レイニーデイズの時代に3つあったS級パーティーのひとつだったあのパーティーのこと?

俺も自分の端末を開き検索をかける。リョウも俺の端末を覗き込む。この距離感がいい。

たしかに日本人で、接続サーバーがJAPANとなっている。この国のどこかのステーションからダイブしているってことだ。

「キョウジのやつ・・・。まだこの世界にいたのか。」

ヒュウガが感慨深くいう。

「なるほど、時差のないオーストラリアのパーティーにいたってことか。これならミッションに支障はない。」

アツヒロが言う。


そんなに有名人なの?


「世間の連中はこの国でレイニーデイズが初めて【虐殺の門】へとトライしたことをクローズアップしているが、この国で最初にS級に上がったパーティーはブラックダリアであり、そのリーダーがキョウジだ。

そしてこの国で最初のハイプレイヤーもこの男だった。」

アキラがキョトン顔メンバーたちに告げる。ツバサも口を開く。

「最初にブラックダリア、次にレイニーデイズがS級に上がって、地球連邦軍は3番目だったわ。

あの時のブラックダリアは誰も近づけないほどピリピリした雰囲気で、新宿ステーションの中でも異才を放っていたわね。レイニーデイズと真逆のパーティーだった。」

「キョウジ、トモ、ツネ、マコ、リサの5人。今でもメンバーを覚えているわ。

リサは病気で死んじゃった。トモは傭兵やっててたまに名前だけ見るわ。ツネとマコはなにやってんだろう・・・。」

ハルカが記憶を探りながら話した。

「キョウジは孤高だった。」

ツバサか言う。一度、ブラックダリアとレイニーデイズ、地球連邦軍の3パーティー連隊の話が出た時があったらしい。しかし、キョウジはそれを拒否。同じくシュウも難色を示して破綻したらしいが、とくにキョウジのパーティーに対する想いは大きく自分のメンバーで【虐殺の門】へと行く決意で固められていた。

どこにも属さず、誰の影響をも受けないキョウジは、この国のFRONTIERプレイヤーの憧れの存在であった。

「リサの死がキョウジを変えてしまった…。」

ハルカが悲しい目をしていう。その頃、ツバサを中心にしたFRONTIER女性プレイヤー会なる『女子会』が頻繁に行われていた。キョウジと愛し合っていたリサはいつも幸せそうな表情だったとツバサが言い加える。

「突然、リサをステーションで見なくなった…。ブラックダリアの男メンバーとは話したことないけど、リサとはいつもステーションで喋っていたわ。」

ハルカが言う。

「あの頃ね、リサが白血病になったのは。早かったわ…2ヶ月で死んじゃった…。」

ツバサも悲しい目をして思い出しながら言う。その頃からブラックダリアはギクシャクしはじめた。

サブリーダーのトモが自立を主張。フリーの傭兵としてやっていきたいと脱退を申し出た。キョウジはそれを止めずに承諾し、ブラックダリアは結果解散となった。彼自信も自暴自棄になっていたのかもしれない。

その後、忽然とキョウジの存在はFRONTIERから消えた。それが今になって海外パーティーのメンバーとして再び姿を現したのだ。キョウジはシュウと似ていた。性格的にはまったく違っが、常にパーティーの先頭に立ちミッションを引っ張る姿は『カリスマ』の言葉がピッタリ当てはめる。

アバターMでスピード特化のピグマリオ。アタックをし、メンバーの盾にもなる究極のプレイヤー。

キョウジこそ、この国のプレイヤーを代表する第一人者なのだ。

アキラが腕組みをしながら、

「今までどこのステーションにいたんだ?新宿では見たことない。電気街は?」

ヒデに聞く。

「いいや、キョウジはみない。だがトモはたまに見る。下位パーティー相手に小銭稼ぎをしているみたいだが。」

続けて視線がヒュウガにいく。

「横浜でも見たことないぜ。」

とビール片手に答える。

「まあ、いいじゃない。今でも元気にやってるってわかったんだから。」

ハルカの言葉でこの議論は終焉となった。突然、テレビから轟音が鳴り始めた。タスマニアデビルのミッション開始だ。

「あのアバターがキョウジね。変わらないわ。」

ツバサが言う。地球連邦軍時代に一度バトルをしたらしく、ブラックダリアに秒殺されたらしい。

5人のメンバーが一斉に走り出す。そしていつもの光景。ひとり、またひとりと姿を消す中でひとりの兵士が怒涛の前進を続けていた。キョウジだ。すでに片腕を失い、残った腕一本でライフルを前方に向けている。

「ピグマリオ・・・ああなってもリタイアできないのか・・・。」

アツヒロが目線をアキラに向け、溜息を吐きながら呟く。

画面ではキョウジの片足が吹き飛んでいた。その場から動けなくなったキョウジ。

普通のプレイヤーならとっくにリタイアして帰還となるが、ピグマリオのジョブをつけていて、さらに無限と化したフィジカルのパラメーターを最大に成長させていればこのように四肢をもがれても死ぬことができない。

それでも残った腕で攻撃を続けるキョウジ。すでに他のメンバーはリタイアして姿がない。

「もう見たくないよ。」

ミオの呟き。確かに残酷な光景だ。しかし誰も目線を離さない。最期は無数のランチャーが一斉にキョウジに向かい、大爆発を起こしてミッションが終わった。真っ暗になったモニターを見ながら、アキラが立ち上がる。

「キョウジの居所を探すぞ。やつを引き入れる。」

それを聞いたシゲが

『彼は我々の招聘を受けるのか?』

と聞く。

「たぶんキョウジはわたしたたちと一緒にはやらないわよ。」

ツバサが言う。

「うん、海外のパーティーに属していることがその証拠。彼は仲間としか組まない。

仲間がいないからしがらみのない外人と組んでいるんだわ。」

ハルカも続く。

「とにかく情報を集めてくれ。俺が必ずこの連隊に連れてくる。」

アキラの言葉に皆、迷いの表情を見せていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ