RAINY DAYS -5
帰還して報酬を確認。ブースを出てロビーに戻りスグルを待った。
その間、ヒデにコンプリートの報告をメールする。
ん?今の俺のパーティーリーダーはアキラになるのか?
なんか人間関係が複雑になってきた。でも仲間がたくさんできた。嬉しい状況だ。
「ごめん!待った?」
スグルも帰還してきて、場所をスタバに移した。
「今日は久しぶりに楽しかった。シーナくんありがとう。」
スグルが俺にコーヒーをおごってくれた。
「いや、こちらこそ。スグルくんもすごいプレイヤーだね。レベルは一個しか変わらないのに圧倒されたよ。」
俺のこの言葉は本心だ。本当にスグルの動きには感心した。俺は続けてスグルに聞く。
「なんでスグルくんはあのパーティーに入ったの?拠点も大阪と帝都じゃはなれているし。」
「僕はもともと、一人でオープンフィールドで遊んでいたんだ。友達がいなくってね。
ほら、僕ってナヨナヨしてて気持ち悪いでしょ?だから誰も近づいてこないんだよ。ちなみに学校でのあだ名は『オカマ』。笑えるでしょ?」
笑えないよ・・・。
でも俺は初めてステーションで見たスグルに対して気持ち悪いとかいう印象はなかった。
逆に優しそうな感じで安心したぐらいだ。むしろ彼のアバター姿のほうが不気味だ。
「それでね、ハングリースパイダーにスカウトされたってわけ。だから大阪のメンバーは僕の容姿や年齢とかまったく知らないんだ。それにしても酷いパーティーでしょ?」
お上品に笑うスグル。俺と同じ歳でレベル4って事は中学からこのゲームをやってるってことになる。
端末使用料とかどうしてたんだろう?
「もしかしてお金持ち?」
思わず口に出してしまった。
「そうでもないよ。でも経済的には困ってないと思うよ。」
スグルの言葉に、余計な事を口にした自分が恥ずかしくなった。
「そうそう、スグルくんって高校どこ?」
気まずくなる前に話題を変える。
「帝学館だよ。シーナくんは?」
帝学館・・・。けっこう頭いいんだな・・・。
「俺は都立第二・・・。」
中の下ぐらいの高校だ。
「そっか。ところでシーナくんはなんでこのゲームはじめたの?」
スグルの問いに俺はここまでの経緯を簡単に説明した。もちろん自分が戦争孤児だということも。そこでひとつ思い出した。
「あのさ、なんでこんなに早くレイニーデイズ連隊のことが流れたんだろう?」
俺の問いにスグルは、
「昨日の夜、ナイトメアの運営者が速報を流していたんだよ。」
と答える。ナイトメアとはFRONTIERの非公式サイトで、この国の数あるこのゲームのサイトの中ではアクセス数がダントツである。俺もよく使うサイトで、公式より情報が速い時もある。
俺はすぐ端末を開きナイトメアにアクセスする。
トップページに速報とあり、そこをタップ。すると、
『よおテメェら。とうとうこの時がきたぜ!
【虐殺の門】へ向かってあの伝説のパーティーレイニーデイズが再び結集した!
ヴァンダルハーツ、スラムドッグス、エンドオブザワールドの3パーティーが連合するってんじゃねえか!
4年前に壊滅したレイニーデイズの元メンバーが、新たに手下従えてひとつになる。
こりゃ目が離せねえぜ!この馬鹿野郎どもに幸あれ!』
と表示された。・・・。
この語り口調・・・どこかで聞いたことがあるような・・・。・・・シゲだ。
ダイブした時のシゲの口調だ!
状況からいっても、このタイミングでこの情報を流せるのはシゲしかいない!!
え?ナイトメアの運営者ってシゲなの?
これに対する反応を見ると・・・あ!俺の悪口がいっぱい書き込まれている!
『エンドのシーナってなに?レベル3とか身の程知らずもいいとこだな。』
『ENDのこのレベル3は何者?』
『いまさらレイニーデイズってWWWてかひとりミスキャストが混じっているが?』
『クソがWWWシーナって誰だよWWWW』
すべて読むと失神してしまいそうなんで端末を閉じる。
「もう世界中のこの手のサイトに拡散されているよ。」
スグルが言う。てことは世界中で『レベル3』の悪口を言っているわけね・・・。
そして、スグルが俺に電気街のステーションで連絡してきた理由が分かった。
通常、特定人物のダイブのステーションの場所なんてわからない。だけどレイニーデイズ連帯ならばその場所は関東圏に限られる。スグルはそれを予測して俺にミッション前にコンタクトをとってきたのだ。
うな垂れる俺にスグルが、
「シーナくんは胸張っていいよ。今日でもわかったはずだよ。シーナくんが並外れたプレイヤーだってことが。
だってハングリースパイダーのレベル5のプレイヤーよりキミの方が圧倒的に強かったんだからね。」
と慰めてくれる。
優しいなスグルは・・・。その後、2人でいろいろ話した。同じ歳のプレイヤーと語り合うことが初めてだった俺は夢中になってスグルと話していた。
ふと俺は仕事の時間が迫っていることに気づく。
「そろそろ行かなきゃ。」
立ち上がる俺にスグルが、
「また今度いろいろ話そうよ。」
と、少し寂しそうに言う。
「もちろん!」
俺は端末を出しそれをスグルに見せる。スグルも端末を出しナンバーを交換した。
「そういえばフラッグの勝負はどっちが勝った?」
俺の問いに、
「う~ん…途中からわからなくなっちゃったね。」
とスグル。二人で大笑いした。
スグルと別れ店へと急ぎ、着いた時にはすでに仕込みが終わっていた。
「おはようございます。」
俺の挨拶に反応したハルカが、
「おはよう。さっきまでリョウがいたのよ。」
と端末を見せながら言った。シュウの端末だ。リョウが学校帰りにここへ寄り、約束通り端末を届けに来たのだ。
「よし、ちゃんと起動する。パーティーページもログイン状態のまま。これでパーティー管理ができるわ。」
ハルカがシュウの端末を触りながらつぶやく。俺はナイトメアによって連隊の話がすでに流出していることを話した。
「知ってるわよ。」
ハルカは軽く受け流す。ナギサも加わり、
「さっきまでリョウちゃんとその話をしていたの。スラムドッグスのシゲって喋れない人。
シーナは一度一緒にミッションに出ているんだよね?」
と静かな口調で言う。俺は2人に彼がスラムドッグスの頭脳的な存在であり、腕も確かだと伝えた。
「まあ、いい広報役ってとこね。別に流されて困る情報なんてないわ。」
とハルカ。
俺・・・ネット上でめちゃめちゃ悪口書かれてますけど・・・。
「それで今日はどうだった?」
ナギサが聞く。
「それがすごいプレイヤーに会ったんですよ!ボランチの位置から一気にトップの位置に・・・!」
俺が少し興奮状態でスグルのことを話すと、
「いい友達ができたみたいね。」
とハルカ。
「はい!」
まさにそれだ。今日、少しの時間だったがスグルとスタバで話したときは本当に楽しかった。
同じ価値観を共有できる仲間などなかなかいない。
また今度遊ぼうと約束したが、ただ俺が戦争孤児だってことを気にしてくれなければいいが・・・、と願うばかりだ。スグルは普通の家庭で育っている。俺のような孤児とは関わりたくないって考えてる人も多い。すると端末が鳴った。スグルからのメールだ。
『今日は本当に楽しかったよ!今度また近いうちに一緒にミッションしようね!』
・・・よかった。嫌われていないようだ。ハルカが俺の頭をくしゃくしゃっと撫でる。
「あんたはもう孤児じゃない。今は私の子供なの。もっと胸張って堂々としてなさい。」
この言葉は本当にありがたい。俺は頷いて厨房へと入った。




