RAINY DAYS -3
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「リョウ、シュウの携帯端末まだある?」
ハルカの問いにリョウは「部屋にある」と答える。
「OK。これでパーティー管理もできるわね。とりあえずシュウの端末は私が管理するわ。プライバシーもあるからパーティーページ以外の閲覧はしない。約束するわ。いいリョウ?」
頷くリョウ。
「どう?すべて解決じゃない?」
このハルカの提案が最後の切り札となった。アツヒロは席につき、シゲは表情がゆるい。
ここでヒデがエンドオブザワールドのメンバーに問う。
「お前たちもいいな?」
ダイキ、アサミ、リョウ、俺は大きく頷く。
続いてヒュウガも、
「アツヒロ、シゲ、ミオ。今度こそ必ず成功させよう。」
と声をかける。再び立ち上がるアツヒロ。
「ミオ、手伝え。」
アツヒロがミオと共に人数分のビールを開けた。了承の証だ。ここでアキラが声を出す。
「よし。話はまとまったな。これからこのメンバーで【虐殺の門】を目指す。
2年だ・・・。2年以内にこのクソゲームに引導を渡してやる!」
このアキラの発声がレイニーデイズ連隊の始まりを告げた。
4つある円卓にアツヒロのつくる料理が並べられる。ミオとアサミが給仕係をしている。
「で?これからどうする?」
ヒュウガがアキラに聞く。
「まずは単純に個々のレベルとパーティーランクを上げることだ。
そのためにはまずメンバーの入れ替えをしなくてはならない。
ヒュウガ、お前にはオールスナイパーのポリシーを捨ててもらう。いいな?」
アキラの言葉に
「わかった」
と頷くヒュウガ。
「そしてヒデ。お前のところの下の2人。アサミとシーナを解雇しろ。」
「はぁ?どういうことだ!?」
ヒデが声を張り上げる。
「アサミはスラムドッグスで正規雇用。シーナはうちで預かる。個々の課題でいえばこの2人のレベル上げが最優先だ。」
アキラの言葉にヒデが反論する。
「じゃあうちのパーティーはどうやってランクを上げるんだ?」
「お前のパーティーにはナギサを移籍させる。そして俺とヒュウガ、ハルカが交代でヘルプする。」
アキラの躊躇ない判断にヒデは口を閉じた。
「スラムドッグスはアサミを入れた5人でS級を目指してくれ。昇格までもう少しだろう?
アツヒロとシゲのハイプレイヤー条件をすぐにしたいならうちで預かる。
しかし、焦ることもない。スラムドッグス自身でS級に上がったときに自分たちでやってもいい。その判断はヒュウガに任せる。」
もう黙って聞くしかないヒュウガとヒデ。アキラはすでに様々なプランを考えて今日を迎えている。そこで俺が口を挟む。
「あの・・・俺はヴァンダルハーツってことですか?」
ハルカが俺の肩を抱いて耳元で囁く。
「ようこそS級へ。レベル上げ手伝ってあげる。」
こわい・・・!俺レベル3だぞ!S級でなんて無理に決まってる!
アキラが再び口を開く。
「これはまだ手始めだ。状況に応じてメンバーを入れ替えていく。その準備だけは怠らないでくれ。
それぞれ仕事や学校もあるだろう。それ以外の時間はこの連隊に費やしてくれ。
2年だけ・・・。この連隊にお前たちの時間をくれ。」
俺はダイキを見た。彼は忙しい。将来生物学者になるための努力をしていることは俺も知っている。彼はマジメだ。無理しすぎなければいいがと心配になる。
ハルカがリョウに、
「明日にでもシュウの端末もらえる?」
と確認した。
「はい。学校帰りにお店にもって行きます。」
リョウは快諾した。
「まずレイニーデイズのアカウントを復帰させよう。明後日ミッションに出る。レイニーデイズとしてだ。参加するメンバーは・・・。」
アキラの言葉を遮るように、
「わたしとアキラとヒュウガとヒデは決まりよね。」
とハルカ。
「そうだな・・・。」
とヒデ。
「分かった。横浜からダイブするよ。」
と続けてヒュウガ。
「もうひとり必要ね。だってアキラとヒュウガとヒデはパーティーリーダーだからヘルプ扱い。
正規雇用のメンバーでないとセーブを更新できないわ。万が一に備えて私ともうひとり・・・リョウ来れる?」
ハルカがリョウを誘う。
「はい、いきます。」
リョウは頷いた。
「一緒にもう1パーティーも同行させる。ナギサ、ミオ、アサミ、ダイキ、そしてシーナ。
お前たちはエンドオブザワールドのアカウントで参加しろ。」
アキラが俺たちに指示を出す。
「てことはB級でやるのか?」
ヒデの問いに、
「最初はそれぐらいでいいだろう。アカウントの復帰が目的だ。」
とアキラは答えた。2パーティー連隊でのレイニーデイズ復帰戦に、俺は期待に胸を膨らませた。
「とりあえず食ってくれ!」
アツヒロの一声で宴がはじまった。
「一緒にがんばろうね!」
とアサミ。
「うん!2人で暴れよう!」
とミオ。先日のミッションで打ち解けた2人は楽しそうだ。こうして俺たちの【虐殺の門】への道が始動した。
今日の決起大会で決定されたことは、
メンバー間での上下関係はない。
パーティー単位の概念を捨て、積極的なメンバー交換を徹底する。
現在活動している3パーティーに加え、レイニーデイズのアカウントを最終のアタック部隊に使用する。
レイニーデイズのアカウントはハルカが管理する。
パーティー間での上下関係はないが、連隊のリーダーとしてアキラが権限を有する。
必ず【虐殺の門】をコンプリートする。
という事だ。
俺は帰りのダイキの車のなかで様々な事を考えていた。
ちなみにダイキの車の中は、エンドオブザワールドの5人で満杯だ。
ヒデはエンドオブザワールドのパーティーランクを上げる事。
リョウとダイキはエンドオブザワールドのランクアップとともに、個人でもハイプレイヤーを目指す。
アサミはスラムドッグスに移籍、個人のレベルアップに集中する。
そして俺はヴァンダルハーツに移籍。個人のレベルアップはもちろん上位ランクでの戦いかたを身につける。
この世界に足を踏み入れて3か月余り。とんでもない状況になってしまった。もちろん期待が大きい。
しかし不安もかなり大きい。これからS級のヴァンダルハーツでアキラやハルカにしごかれることが確実な訳だから。でも、この大きなプロジェクトのなかで自分がどれだけやれるか…。試してみたい気持ちが強くなっていく。
リョウが俺につぶやく。
「しばらく面倒みれないけど、なにかかあったらすぐ言うんだよ…。」
大丈夫…俺は決めているんだ。リョウと一緒に【虐殺の門】へと行くって。
だから必ず一日も速くハイプレイヤーに上がってやる!!
激動の日々が始まる予感が俺の決意を高めた。
家につき、自分のプライベートぺージを確認しみたら、招聘依頼がきていた。
まさか俺に?
と思って招聘されたパーティーを調べてみたらHUNGRY SPIDERという大阪難波ステーションを拠点とするC級パーティーだった。メンバーの平均レベルは5といったところ。
『明日の夕方にミッション参加できるか?
コンプリートボーナス15%。端末使用料はこちらでもつ。
いい返事をまっている。』
という内容の招聘メール。ヒデにメールをしてお伺いをたてる。
なぜ俺に?と思ったが、ヒデから招聘には出来る限り参加するほうが良いとの返答に、招聘を承諾。
明日、夕方に電気街のステーションよりダイブしてハングリースパイダーのミッションにヘルプとして参加することになった。
まったく知らないパーティーからの誘いに期待と不安を感じながらその夜、ミオからのメール攻勢と格闘していた。




