表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
RAINY DAYS 
48/108

RAINY DAYS -2

3人で横浜に到着し俺を先頭に中華街の裏通りに入る。この前来たばかりだがゴチャゴチャした道に記憶が曖昧になる。

やばい・・・。迷った・・・。

だが2人に告げる勇気はない。しかし困っている俺の目の前に救世主が現れた。

アサミとミオだ。すぐに声をかける。

「わーリョウとナギサも一緒なんだ。」

アサミが笑顔で駆け寄ってきた。聞くと今日は2人で遊んでいたらしい。ミオが2人に声をかける。

「キミがリョウさんでそっちがナギサさんね。噂は聞いているよ。

とくにナギサさんはこの前の【虐殺の門】も見せてもらった。私はミオ。よろしくね。」

ナギサは軽く会釈し、リョウは

「こちらこそ」

と返答した。まだお互い探りあいって感じだ。だが、

「さあシーナ、行こう!」

とミオがいつもの調子で俺の腕を組み細い路地へと誘導していった。その路地にポツリとある四川楼。なんとかたどり着けてホッとする俺にリョウが、

「あら、かわいい彼女ね。」

と刺刺しく言ってきた。

違います!いや・・・マジで違いますって!!

俺はミオの腕を優しく引き離しリョウの背中を追うように店へと入った。

店は貸切にされており、すでにアキラとハルカ、ヒデとダイキの姿があり、もちろんヒュウガとシゲ、ここの店主のアツヒロもいる。

「よし、全員そろったな。」

アキラの声を聞いて俺たちは空いた席にまばらに座った。

「まず、日曜のこの時間に店を開放してくれた店主に感謝する。」

とアキラがアツヒロに礼を言った。

「気にすんな。これくらいするさ。」

アツヒロは軽く手を挙げて答える。

「今日は3パーティー連隊の件で、一度皆に確認したいことがあるから急遽集まってもらった。

スラムドッグス側からも俺に質問があるようだし、顔合わせのいい機会になる。」

アキラの言葉で一気に緊張感が一同を覆う。

おそらく・・・ヒュウガがメンバーへの説得がうまくいかなかったに違いない。

ミオは受け入れただろう。問題はアツヒロとシゲだ。

だからアキラに直接でてきてもらって話をまとめようって事で開かれた顔合わせなのだろう。

「まず、スラムドッグス側になにか問題があるようだが?」

アキラがヒュウガに聞く。ヒュウガはアツヒロに目線をやる。

腕組みして立っているアツヒロはアキラに近づき口を開いた。

「まずこの連隊の舵取りはあんたでいいんだな?」

「別に俺じゃなくてもいい。スラムドッグスが主導でやってもらってもかまわないさ。」

アキラはまっすぐアツヒロを見据えて言った。

「いや、ヴァンダルハーツからの誘いだ。俺はあんたが舵取りするなら、『話をきいてもいい』と思ったから今日の話し合いを提案した。」

やはりアツヒロはベテランプレイヤーである。レイニーデイズの現役時代も知っている。

この連隊への疑問も生まれるのは当たり前だ。

「で?あんたは何が納得できない?はっきり言ってくれ。」

アキラがアツヒロに促す。けして強い口調ではなく冷静に対応するアキラの姿に俺はさらに緊張感を覚えた。

「納得してないわけじゃない。天下のヴァンダルハーツが一緒にやってくれるってんだからな。

しかも元レイニーデイズが揃っての連隊だ。ただこっちも長い時間かけてプレイしてきた自負がある。

ヴァンダルハーツの神輿担ぎをする気はない。本当に対等な連隊って証拠が欲しい。」

アツヒロの言うことは至極重要なことである。けして間違った考え方ではない。

時間と労力と金をかけてプレイしてきたものにとってこの価値観は本人にしかわからない。

「証拠か・・・。」

考えるアキラ。そこにシゲが加わる。

『我々は連合に失敗している。その理由も理解している。

だからこそ今度は失敗したくはない。そのためにはあんたが信用に足りる人間だという確証が欲しいのだ。』

ここでヒデが口を出す。

「お前たちスラムドッグスはこのゲームをクリアしたくはないのか?

クリアするには連隊以外の道がないことはお前たちが一番わかっているだろう。

だから横浜連合を立ち上げたんじゃないか?

その連隊を確実に遂行できるパーティーは俺たち3パーティーしかない。

わからないのか?」

アツヒロが答える。

「そもそもクリアなんてできるのか?

俺も長い時間このゲームをやってきたが、クリアできないことが前提のゲームなんじゃないかと最近思い始めてきたよ。

正直・・・もう気持ちは切れちまってんだ・・・。」

おそらくこれが本音だろう。今まで幾多のプレイヤーが挑んだ【虐殺の門】ですべてのパーティーが秒殺で壊滅させられるのをアツヒロやシゲは見てきた。

挙句の果てにはヴァンダルハーツのトライ時のガーディアンの出現。悪意の塊にしか思えない運営側の思惑はクリアできないゲームと結論づけされても仕方がない。この概念に思考を犯されたら【虐殺の門】が見え始めるランクのプレイヤーは目標を失う。

A級あたりが一番パーティー運営が難しい理由がここなのだ。『どうせクリアできない』と感じる一番近く現実的な位置がまさにA級なのだ。

「俺はそろそろ足を洗おうとも考えている・・・。」

アツヒロがポツリと言った。学生のころと違って、社会にでてしまうとミッション時間も限られる。これが原因でFRONTIERから去るプレイヤーも多い。アツヒロもそんな状況を抱えている。そのアツヒロにとってクリアの見えない無駄な時間を過ごすには高いモチベーションが必要となる。

それも横浜連合の破綻によって粉々に砕かれた。もう一度、あのステージを目指すには確たる根拠が必要である。今、アキラに求めているのはその部分である。対等である証拠を出せという言葉は真意ではない。

アキラの覚悟を聞いているのだ。

これはシゲも同じである。彼は横浜連合の破綻をいち早く悟っていた人間だ。クリアには連隊しかない。しかし連隊はうまくいかない。このジレンマがシゲにもう一度連隊を組むという決意を渋らせていた。そしてなにより連隊を組むことによって発生する労力を彼は知っている。

自分のパーティーとは別に他のパーティーのヘルプもかってでなければならない。声を失った彼は『障害者年金』が支給されているからアツヒロのように仕事に追われることはない。だからその分多くのパーティーへと借り出される。

そしてその結果、破綻を迎えた時の絶望感は想像に耐えないものであっただろう。シゲが口にした『信用』という言葉はまさにそのままの意味である。こいつは絶対に裏切らないという確信が自分の中に欲しいのだ。


しばらく沈黙していたアキラが口を開く。

「わかった。対等と信用。ここをクリアすれば俺のバカげた構想に付き合ってくれるんだな?」

アキラの問いにアツヒロは無言、シゲは頷いた。

「ヴァンダルハーツのアカウントではクリアしない。これでどうだ?」

アキラは簡単に言ったがこれは問題発言である。

今まで【虐殺の門】をクリアするために熟成してきた自分のパーティーを自らその役目を終わらせることを意味する。

「どういうことだ?」

ヒュウガが身を起こしてアキラに問う。

「そのままの解釈でいい。【虐殺の門】へ至った時、ヴァンダルハーツはアタック部隊にはならない。

スラムドッグスかエンドオブザワールドがその任についてくれ。」

アキラの言葉で一同ざわめきたつ。

これまでこの国のFRONTIERを牽引してきたパーティーであるヴァンダルハーツ。

本来ならばこのアタック部隊はこのパーティーが行うべきなのだ。

コンプリートした時、連隊であっても世界から賞賛されるのはこのアタック部隊、すなわち1パーティーだけなのだ。アキラはこの名誉を捨てる覚悟を見せた。これはアツヒロの要求した対等以上の答えを示した。そしてシゲが臨んだ信用すら掴んだに違いない。

「まってくれ、それじゃあヴァンダルハーツになんのメリットもない。対等を超えちまってる!」

アツヒロは焦った表情でアキラに言った。

「いや、メリットはある。俺はこのクソゲームの終りが見たいんだ。

そのためにはあんたらスラムドッグスが必要だ。これを呑んでくれなければ俺はこれ以上のものは出せない。」

アキラの目線はアツヒロから一瞬も離されることはない。すでに着地地点に自分がいることを自覚しているアツヒロ。

しかしそれはなんとも居心地の悪い足場であった。

ここで沈黙を続けてきたハルカが立ち上がった。

「もっと対等な方法があるわ。」

11人の目線がハルカに集中する。

「3パーティー、どのアカウントもアタック部隊にしないってこと。」

この言葉にアキラが反応する。

「お前、なにを言っているんだ?」

まさにアキラの言葉は皆の代弁であった。かまわずハルカが続ける。

「S級にひとつ遊んでいるパーティーのアカウントがあるわ。それをアタック部隊として各パーティーから均等にメンバーを入れる。

これで対等になるわ。」

さらにハルカが続ける。

「残りの援護役の2パーティーは、その時の状況で3パーティーのいずれかがやればいい。

結局3パーティーでトライするわけだからメンバーはかわらないわ。だからどのパーティーでもかまわないってわけ。」

未だ意味が分からないハルカの提案。

だがこの11人のうち数人がハッとした表情を見せた。アキラとヒュウガとヒデだ。

「まさかお前・・・。」

アキラの言葉にハルカが答える。

「そう、レイニーデイズのアカウントよ。

オフィシャルでは最終更新から5年データ更新がなければ消滅するはず。まだギリギリ使えるアカウントのはずよ。」

レイニーデイズが活動をやめて4年。未だにS級をさまよっているひとつのアカウント。栄光と地獄を味わった伝説のパーティーがまだ生き残っているのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ