表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
RAINY DAYS 
47/108

RAINY DAYS -1

3パーティー連隊の話し合いがあった二日後。

その日はリョウの学校の学園祭だ。俺はナギサと待ち合わせをして、聖サイモン女学院へと向かった。

聖サイモン女学院は財界や政界のご息女が集まる私立のお嬢様学校として知られている。かといってただのお嬢様学校ではなく、偏差値も高くかなりの努力と大きなコネがなければ生き残れない実力主義な学校でもある。

そんな学校の中でリョウは才色兼備を武器に、常にリーダー的なポジションを任される実力者として君臨している。

この国を代表する企業である帝都不動産のご令嬢は、この学園祭の実行委員としてこの一週間は忙しい日々を送っていた。女学院ではあるが、学園祭には俺のような男でも入れる。しかし招待状なるチケットが必要で、これは親族など親い男しか門を抜けることを許されないことを意味する。厳しいセキュリティチェックを抜けるだけで緊張の頂点を迎える俺の横で、涼しい顔のナギサ。


頼もしい…。


【虐殺の門】を抜けた彼女にとって、女学院の門など容易いものなのだろう。いや、俺がビビりすぎているだけなのか…。

今日はハルカのアドバイスでシャツに上着を着てよそ行きな格好をしてみた。


よかった…いつもの服装で来なくて…。


リョウに恥をかかせるところであった。

ナギサもシックなワンピースを着て、こちらもどちらかのお嬢様に見える。

さすが、いろいろな世界を見てきたハルカである。俺とナギサを見て、まさか戦争孤児で歌舞伎町のバーの従業員だとは思われまい。

だが油断は禁物だ。ナギサはともかく、俺は喋るとボロが出る。

今日は上流階級の男子を演じるのだ。

そこへ大きな声で俺達を呼ぶリョウの姿が見えた。

「おーい!!こっちだってば!!」

お、お嬢様!?そんな大きな声で…はしたない!!

いや、彼女は本当のお嬢様だ。演じるのは俺ひとりだけなんだった。

ビビりすぎてテンションが上がってきた。

「へぇ~本当の姉弟みたいじゃん。」

リョウが俺達を見て言った。

「本当の姉弟だよ。ね、シーナ。」

ナギサが少し嬉しそうに言う。血のつながりはないが俺達はハルカの里子であり法律上でも姉弟だ。

でもナギサのこの対応は俺も嬉しかった。

「そうだったわね。よし、じゃあお二人さん。今日は私がお世話しますから楽しんでいってね!」

リョウの誘導に俺たち姉弟は学舎の中へと案内された。

リョウの案内で学園祭を楽しんでいた俺とナギサ。とくにナギサがこんなに楽しそうな表情をするのはめずらしく、少しはしゃいでも見せている。ナギサは普段から物静かで控えめ。落ち着いているといえば聞こえはいいが、喜怒哀楽を表情に出さない。しかし今日のナギサは、聖サイモンの制服を纏ったリョウと並んでも違和感がないほど普通の21歳の女性に見える。彼女のあんな表情を見ていると今日は本当に来て良かったと思ってしまう。それほどまでにナギサの笑顔がまぶしかった。

「少し休みましょう。」

リョウが提案し、カフェのテラスに3人で座る。カフェといってもシャーリーズ・カフェという国内ではスタバに次ぐ人気をほこるトップブランドが学園祭に出店しているのだから、さすが聖サイモンである。

「ところで例の話だけど。ナギサさんはどう思う?」

コーヒーをすすってリョウが聞く。例の話とはもちろん3パーティー連隊の事だ。リョウもヒデから直接話しを聞かされている。

「わたしは・・・、とてもいいことだと思うよ。ハルカさんがすごく嬉しそうだった。

それにこのままじゃ悔しい。絶対にコンプリートしたいよ。そのためだったらなんでも受け入れる。リョウちゃん、一緒にがんばろう。」

ナギサのつぶやきのような言葉にリョウは、

「わたしにとってもこれはチャンスだわ。あのラストフィールドに思ったより早く行けるんだもの。ナギサさんとはまたツートップを組むことになりそうだし。よろしくね、ナギサさん。」

と、すでに腹は決まっているようだ。この2人にとって今回の連隊は受け入れやすい理由がある。ナギサは【虐殺の門】を抜けたプレイヤーであるがコンプリートまで至っていない。

ナギサが言った『悔しい』の言葉はまさにもう一度【虐殺の門】へと向かっている証拠である。

リョウにとってもこの連隊によって【虐殺の門】がさらに近くなった。彼女の目的はもちろん兄を迎えにいくことだ。アンデッドして植物人間となってしまったシュウの体に浮かぶリアルダメージ。

今もどこかのフィールドで戦っているとリョウは信じている。そのフィールドこそ、【虐殺の門】を抜けた先にあるといわれているラストフラッグであると思っている。このラストフラッグはこのゲームに数ある都市伝説の中のひとつで、当然実際誰も見たことはない。しかしリョウは本当にそこにシュウがいると信じているのだ。

結局、最終の催しまで堪能して学園祭は終了した。

「ちょっと待ってて。」

とリョウが一緒に帰ると言い出した。

後片付けは?実行委員でしょ?

「いいのいいの。私は臨時の委員だから、後始末は下級生がやるわ。」

と言って荷物を取りに学舎へと走っていった。リョウを待つ間、ナギサがポツリと、

「楽しかった・・・。」

とつぶやいた。彼女にとって本当に有意義な時間であったと確信する一言に、俺もなんだか幸せな気持ちになった。いや、本当に楽しんだのは俺なのかもしれない。この2日間、俺は不安でいっぱいだった。

アキラが「ひとつにする。」と言った連隊。

ヒデは「肩身の狭い思いはさせたくない」といってくれた。

しかし、完全に俺が足を引っ張ることは目に見える。ミスキャストである俺はこの状況に悩んでいた。だから今日は現実逃避に近い思考にむりやり切り替えて楽しむことに集中していた。しかし本当に腹を決めなきゃいけないのは俺なんだ。ナギサが再びつぶやく。

「シーナ・・・大丈夫だよ。わたしが守ってあげる。なにも心配いらないから。」

と。まるで俺の頭の中を見透かしたようなナギサの言葉だった。

そうだ・・・。やるしかないんだ。でないと・・・また居場所を失う。

自分の役目を果たそう。

俺はナギサに向かい大きく頷いた。そこへリョウが合流、一緒に駅へと向かう途中ナギサの携帯端末が鳴った。

電話のようで相手はおそらくアキラだ。

「うん・・・今?・・・リョウちゃんとシーナと一緒。うん・・・わかった・・・。

シーナが知っているのね?じゃあ向こうで・・・。」

といって電話を切るナギサ。不思議そうな顔の俺とリョウに向かって、

「今から横浜に集合だって・・・。アキラとハルカさんは一緒に車で行くって。たぶんヒデさんたちも呼ばれているはずよ。私たちはここから電車で行きましょう。」

と、告げる。その時、俺とリョウの携帯端末が同時に鳴る。パーティーメンバー内で使っているグループメールだ。ヒデからのメッセージには今ナギサが言ったことが書かれてあった。ダイキの車で2人はすでに向かっているとのこと。アサミはなぜか横浜にいるらしい。集合場所は横浜中華街裏通りにある四川楼。スラムドッグスの拠点だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ