REGIMENT -連隊-8
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翌日、学校が終わりステーションへと急ぐ。ヒデとダイキ、アサミともう一人…ミオがいた。
「オッス!シーナ!!」
元気よく挨拶するミオ。
「今日はスラムドッグスからミオにヘルプしてもらった。今日はリョウがミッションに出れないからな。」
ヒデの言葉に俺のテンションが上がる。またミオとミッションできると思うと気合いが入る。彼女の動きはリョウ並みの突破力と後方を導く牽引力だ。ミオが小声で俺に言う。
「シーナ、メールくれないじゃん。ちょっと寂しいよ。」
ふてくされた顔で俺の耳元で囁く。なんだろ…。ちょっとドキドキする。
「ごめん、忙しくて…。」
俺の言い訳に、
「暇なときでいいから返信してよ。」
と笑顔のミオに戻った。確かにミオからのメールはもらっていたが、忙しかったのは本当だ。
しかし、返信するぐらいの時間がなかったわけではない。まさかこんなにすぐに一緒にミッションするとは思わなかったから、少し反省した。
「今日はミオとアサミをツートップに置いて、シーナとダイキでバックアップ。そろそろB級も卒業だ。しっかりコンプリートするぞ。」
ヒデの激で一堂、ダイブした。
R-BフィールドNO5。ありふれた市街戦。しかし広めの路地には多目のイーターが待ち受けていた。エンドオブザワールド初参戦のミオは、あくまでも自分らしく先頭にたちイーターを殲滅していく。アサミもそれに触発されたのかいつもより早めの仕掛けで張り合っていた。その後方で俺はミオとアサミの中間の位置を取り援護。ダイキは左右に動き状況に応じたバックアップをしている。やはりミオとアサミの距離感が合わない。もちろん初めてのコンビであるからしかたがない。ここをカバーしているのがダイキだった。ダイキの巧みな連射で、イーターと彼女たちの距離を作る。そこに俺の誘導で2人をあるべきポジショニングへと導く。まさに理想の戦い方であった。ダイキと練習を重ねた横のバリエーションが機能している。
『それにしてもミオ!いい動きだ!』
殿で援護射撃に徹しているヒデが叫ぶ。この言葉でアサミがさらに前に出た。これはミオを褒めたのではなく、アサミを煽った言葉だった。ミオの動きは確かに素晴らしい。質は違うがリョウと同じく、この前衛でのアタックには目を見張るものがある。ただ彼女は普段、ワントップとして戦っている。今日のように誰かとツートップで戦うことに慣れていない。ならば普段からコンビで戦っているアサミがミオに合わせる必要がある。ヒデの思惑通りにアサミはミオの前に出て張り合っている。アサミだってレベル6のアタッカーだ。スピードではミオに負けない。ヒデの性格分析能力によって競い合わせることでアサミとミオの戦いを修正しているのだ。同じ年齢の2人の女戦士はいつの間にか最高の位置取りで、ガトリング部隊まで到着した。
『アサミ!私は右からいくわ!キミは左から!どっちが多く潰せるか競争よ!』
突然、ミオがアサミを挑発する。ガトリングは7機。
『のぞむところよ!』
もちろんアサミは乗る。
『どうする!?』
ダイキが俺に聞く。
『とりあえず援護しましょう!』
俺は彼女たちの争いを少し楽しんでいた。2人の競争を邪魔しないように援護に徹することをダイキに提案。
『OK!』
ダイキも同じ考えのようだ。ガトリングを俺たちに引き付け、その隙に2人は素早く一機づつガトリングを潰していく。それにしてもアサミの動きがいつもより増して素晴らしい。本来、エンドオブザワールドの前衛での主導権はリョウが握っている。だからどうしてもアサミは2番手として戦わなければならない。だがその鎖から放たれたアサミは荒々しくも華麗な戦いを見せていた。
『これは新たな発見だ。』
後方警戒をしているヒデも同じ事を考えていたようだ。
『時間がかかりすぎている!後ろからイーターの援軍がくる!僕たちもガトリング潰すぞ!』
冷静なダイキの言葉で、2人の競争に終止符が打たれ、俺とダイキで2機のガトリングを潰した。
結果、アサミ3機、ミオ2機。軍配はアサミに上がった。
『アサミやるじゃん!』
ミオがいつもの口調でアサミを労う。
『ミオもね!』
アサミの返答に、この2人の性格を思い出した。フレンドリーで裏表なく、気の利く明るい女の子。間違いなく仲良くなれる2人なんだ。
ガトリング部隊を殲滅しフラッグステージの入り口が開いた。
『今日もシーナが残れ。』
ヒデの指示で俺は退路ルートに移動する。退路確保はアバターSの役目だ。
現在、アサミのレベルアップを優先させているため、ここ最近は俺が退路確保に固定されている。
もちろんフラッグ戦に行きたい。しかし、俺にとってこの退路ルートこそ自由時間でありニホントウの練習の場になっている。
この退路ルートのイーターの数はミッションルート(本線)に比べて少ない。だからと言ってここでちゃんとルートを開けておかなければフラッグ戦から帰ってきたメンバーをスムーズにセーブポイントへと導けない。時にはリタイア者を出し、所持弾数を使い切ったメンバーを誘導しなくてはならないからである。極めて重要な役目でもある退路確保を任されていると思うと、やる気も出てくる。
無事フラッグ戦を終えたメンバーの姿が見えた瞬間、俺はニホントウをしまいアサルトライフルに持ち替えてセーブポイントへ走り出した。それに続くメンバーたち。ひとりもリタイア者は出ていない。退路ルートでの殿はいつもダイキの役目だ。
無事、セーブポイントへたどり着きミッション・コンプリート。現実世界へと帰還した。
ブースで目覚めた俺はリクライニング横の端末からIDカードを抜き、集合場所である一階ロビーの喫煙所前へと向かう。するとそこにはキャッキャとはしゃぐミオとアサミの姿があった。もう仲良くなっている。
「ミオって速いよ!すごいよ!」
アサミの甘ったるい声に、
「アサミこそなんなのあのスピード!フラッグの裏に入るとかありえない!」
と体育会系の返答。この2人は初対面である。今年18になる同じ歳の2人の距離は一気になくなった。
「お疲れ。ミオさん、さすがだね。フラッグ戦でのハイイーターの引き付けはA級での戦いの参考になるよ。」
ダイキも帰還してきてミオを労う。
「キミも抜群の射撃能力ね。ヒュウガがきっと欲しがると思うよ。あとミオでいいよ。次、さん付けしたら怒るよ。」
ミオが笑顔で答える。ダイキも笑顔で頷く。ミオは性格がいい。そして誰とでもすぐ打ち解ける。だから誰もがミオを好きになる。俺も恋愛感情ではなく人間としてミオが好きだし、そんなミオを尊敬している。
「みんなお疲れ。ミオ、今日はありがとな。また頼むわ。」
ヒデがキャッシャーから帰ってきてミオの頭を撫でる。そしていつものようにスタバに移動。そのときもミオとアサミはベッタリくっついて話が止まらない。話っていってもミッションなんて関係なく、俺たちの存在など見えないかのようなガールズトークに花を咲かせていた。ひとしきり話が終わるころ、俺は仕事の時間が迫っていることに気づく。
「ダイキ、悪いがミオを送ってやってくれ。アサミも一緒に行け。」
ヒデがダイキにそういいながら
「これ高速代な」
と何枚か札を渡した。
「電車で帰れるから大丈夫だよ。」
というミオの手を引いてアサミがダダをこねる。笑顔でダイキが2人を誘導してスタバの出口へと向かっていった。
「シーナ!またメールするね!」
ミオはアサミに引っ張られる腕に身を任せながら俺にそう言って出口を抜けていった。
「じゃあ、行くか。」
ヒデが俺に言う。
「ええ、俺も急がないと。」
俺の言葉に、
「俺も一緒に行くんだよ。」
と、ヒデ。
不思議そうな俺の顔を見たヒデは、
「今日、アキラに呼ばれててな。なんか話があるみたいだ。俺もちょうどアキラに頼みがあったからちょうど良かった。ダイキのハイプレイヤー条件をヴァンダルハーツでクリアさせてもらいたいんだ。
それにお前の仕事振りも見てやる。ってなわけで一緒に行くぞ。」
と、俺の肩を叩きながら言った。
まさか今日!?
俺はそのアキラの話ってやつに心当たりがある。
いや、間違いなく『3パーティー連隊』の話だ。おそらくアホ面している俺に、
「どうした?いくぞ。」
とヒデが促す。
今日は金曜日だぞ・・・。客も混む・・・。
そんな中でこんなシビアな話をするのか!?
不安を全身から発した俺はヒデに続き、ヒデが止めたタクシーに乗り込んだ。
タクシーの中でヒデが言う。
「あのアキラがなぜかお前には心開いてるらしいな。ハルカが言ってたよ。そのうちヴァンダルハーツに招聘されるかもな。その時は迷わず行けよ。S級なんてなかなか経験できないからな。
それに経験値だってB級やA級に比べてそりゃ高い。レベルアップにもなる。アキラはああ見えて面倒見もいいから、きっとお前のことも気にかけてるはずだ。甘えるところは甘えて、迅速なレベルアップを頼むぞ。」
ヒデの言葉を半分で聞きながら、今日のアキラとヒデの話し合いがどうなるか心配だった。
心配っていっても2人が揉めることはない。だってエンドオブザワールドにとってはいい話なんだから。ようはどういう着地地点に収まるかってことが心配なんだ。だって、個人のレベルは上級パーティーであるヴァンダルハーツのミッションに参加させてもらえば迅速にレベルを上げれる。しかし、パーティーランクはエンドオブザワールドでミッションをコンプリートしていかなければならない。3パーティー連隊なんだから、エンドオブザワールドも迅速にS級に上がらなければ意味がないのだ。
しかしパーティーランクってなかなか上がらないものだ。個人のレベルの平均が9でパーティー自体はB級ってこともよく聞く話だ。このあたりをどう解決するのか・・・?
アキラはどんな考えがあるのか・・・。俺の心配は店に到着するまで続いた。




