REGIMENT -連隊-1
横浜遠征からニ週間後、俺は無事レベル3をクリアし、正式にエンドオブザワールドの一員となることができた。
現在のミッションでの課題は、アサミとリョウの位置を把握しながらバックアップしていくポジショニングである。
俺の援護にダイキがつき、横ラインを構築している。これは俺からパーティーに提案したポジショニングでスラムドッグスから学んだ戦闘バリエーションの追加に役立たせたかった。様々な状況の中、フォワード2人をとにかく前へ進めるために俺とダイキで走り回るこのバリエーションを幾つも持つことで、さらにスムーズなミッション進行が可能になると考えたのだ。不思議とダイキとは息が合った。お互いインカムなしでも状況に合わせたポジション取りをしている。そしてアサミとリョウのバランスを俺とダイキでコントロールできるようにもなりつつある。
我がパーティーのひとつの課題とも言うべき、アサミとリョウのバランスも俺とダイキで整えるのだ。
例えるならば、アサミが遅れればアサミの援護を行いつつ、リョウの進行を止めることもある。逆にリョウが進みすぎている時は、バックアップをせず進行の道を開かない。理想で言えば、リョウとアサミを交互に前進させていくポジショニングなのだが、そうはうまくいかない。
しかし殿からすべてを見渡せるヒデからの指示で、このポジションの完成度を上げていることは間違いない。ポイント的にもA級への昇格も近くなり、急速に進めなければいけない山積みの課題をひとつひとつクリアしていく作業に俺たちは必死に取り組んでいた。
そんな時、ヴァンダルハーツの【虐殺の門】へのトライ日程が決定した。
3日後の深夜、もちろん新宿ステーションでである。
なぜ深夜なのか。それは海外のプレイヤーを招聘したことに他ならない。
今回のトライはヴァンダルハーツの正規雇用メンバー3人の他に、イギリスのハイプレイヤーを2人正規雇用の形で構成している。正規雇用のメンバーが門をくぐらなければクリアにならないからだ。時差のある海外プレイヤーがダイブできる時間帯が、帝国時間の深夜帯になったのだ。
アキラが招聘したプレイヤーはウィリアム・ブラザーズという2人組の傭兵だ。一般的に傭兵とはソロであることがこの世界での常識であるが、ウィリアム・ブラザーズは常に2人で招聘を受ける。否、2人でしか招聘を受けないのだ。この2人は世界的にも結構有名な傭兵で、本当の兄弟であるらしい。主にトライアルを専門的に扱う傭兵としても有名だ。息の合ったアタック能力に、迅速な前衛殲滅がウリで、もとはどこかのS級パーティーに所属していたのだが、今は2人で行動している。
アバターサイズは2人ともS。
兄のマークのジョブはGREED。グリードはSサイズのハイプレイヤーに最も好まれているジョブで、すべてのステイタス上限値を平均的に上げる。Sサイズプレイヤーは、成長過程でスピード値は嫌でも上がっていくし、パーティーに属していればさらにスピード重視の成長を求められる。だからハイプレイヤーに上がるとそれ以外の能力値をこのグリードで補うプレイヤーが多いのだ。
弟のヒースのジョブはFALCON。逆にこのファルコンはSサイズのハイプレイヤーには人気のないジョブでる。命中率とフィジカル系統が飛躍的に上がるジョブだからだ。言いかえるならば、Sサイズに最も必要なスピード値は、ジョブによってまったく成長しないということだ。しかし前衛でスピードの次に必要な命中率と、アバターMのピグマリオほどではないがフィジカル系の強化はより確実に前進できるスキルといってもいい。メリットで考えるならば一番効率の良いジョブといえるだろう。
この2人をアキラは最終ステージのメンバーとして招き入れた。
ただこの2人の評判はよくない。もちろん腕は超一流であるが、作戦お構いなしに暴れまわる2人がトライアル専門であることが理解できる。通常のミッションであれば、組織的な動きやポイント稼ぎなどのパーティーでの動きが必要となる。しかしトライアルではコンプリートのみが必要で、ガンガン前に進んでいくこの2人の需要は高い。しかも熟練されたハイプレイヤーだ。場も慣れている。だが、これまで30パーティーほどのトライアルに招聘されているが、コンプリートはたったの2パーティーだけ。もちろんこの2人のせいではないのだろうが、成功率は低い。アキラが一番嫌いなタイプの2人である。しかもハルカから聞いたが、成功報酬は40%。2人合わせて80%だ。【虐殺の門】で獲られるコンプリートボーナスがどれだけのものかは不明である。なぜなら未だ受け取った者がいないからだ。しかしそれは莫大なポイントであることは想像できる。さらに付け加えると、この兄弟は【虐殺の門】の経験がない。これはかなり重要なことである。俺はてっきり【虐殺の門】を経験しているプレイヤーか、そのパーティーからプレイヤーをレンタルしてもらう方向でアキラは考えていると思っていた。そういう意味で『海外のプレイヤーも視野に入れて』と言ったんだと・・・。帝国で【虐殺の門】を経験しているプレイヤーは5人しかいない。だから海外の経験者を探しているものとばかり考えていた。ハルカもこの人選には困惑しているようである。アキラの意図に何があるのか?俺は足らない経験値の頭脳をフル回転させて、この戦いの行く末を想像していた。




