SLUM DOGS-6
5
円卓の上に次々と料理が運ばれてきた。普段飲まないビールで少しフラッとしていた俺は本能的に料理を口に運んだ。何か腹に入れなければ潰れてしまいそうだったからだ。
辛い・・・!?しかし美味い!!!
最強に辛いその料理は、俺の舌を激しく刺激した。しかしそのあと襲ってくる高揚感は、この料理が至極美味であることを物語っており体中から噴出す汗の量などお構いなく箸が止まらない。この辛さを緩和すべくビールを口に流し込む。
美味い!?
今まで苦味しか感じなかったビールがこれほど美味いと感じたことはなかった。この辛い料理との相性が抜群なのだ。そしてこの流れる大量の汗が、体中のアルコールを体外に飛ばしてくれている。
『この店の料理は店名通り四川料理を専門としている。四川料理の特徴は辛さにあるが、この辛さがより素材の美味さを引き出し、やみつきになる。』
シゲも料理をほう張りながら、説明をしてくれた。辛い料理とビールの相性。世の中は広い。俺はいろいろな経験をしている。FRONTIERとの出会いが、俺に様々な世界を見せてくれているのだ。一通り、腹にご馳走を入れ満足感に浸っていたら、再び酔っ払いが誕生した。ヒュウガだ。昨日同様、ピッチの早いヒュウガは酔っ払って俺に絡みだした。
「シーナ、俺はさ・・・みんなから時間にルーズだの言われているだろ?」
俺は軽く頷く。
「冗談じゃねぇ!アキラたちは地元のステーションに通ってんじゃねえか!
俺は毎回神奈川から電車を乗り継いで新宿ステーションまで行ってたんだぜ!
そりゃたまには遅刻ぐらいするだろ?」
なるほど。ヒュウガの言うこともわかる。一人だけ他県からきているのだ。多少大目にみてやらねばかわいそうだ。
そこに一仕事終えたアツヒロが加わる。
「なにいってんだバカやろう!お前は横浜ステーションでだって遅刻すんじゃねえか!」
これには俺も苦笑いだ。しかしこのスラムドッグスの空気はすごくいい。部外者の俺にすら居心地の良さを感じる。
これはきっとヒュウガの人柄あってのものだろう。俺は隣に座るミオとの会話を楽しみながら、この場の雰囲気に酔いしれていた。
場が落ち着いたタイミングを見計らって俺は、そろそろ帰ると切り出した。なれない酒を飲んだせいで少し気分が悪くなってしまった。
「今日は本当にありがとうございました。また機会があったら呼んでください。次はもっと巧く戦えるように勉強してきます。」
深々と頭を下げた俺に、
「お前はいいプレイヤーになるよ。」
とヒュウガが労いの言葉をくれた。軽く手を挙げて応えるシゲ。
「今度は一緒にやろうぜ!」
とアツヒロ。俺が席を立つと、
「駅まで送るよ!」
とミオも席を立ち俺の手を引く。もう一度皆に礼をいいミオに牽引されながら店を出た。
ミオと一緒に中華街のメインストリートまで出てきたが、実はミオの気遣いはありがたく、一人で駅までたどり着けるか心配であった。
「ミオさん、今日はありがとう。何回も助けられたよ。」
俺の言葉に、
「だから、そういう堅苦しいのは無し!ミオでいいよ。さんとか付けられたら、気楽に話せないじゃん。」
とミオは明るく答えた。
「うん、わかったよミオ。」
俺の返答にミオは笑顔になった。ミオは携帯端末を取り出し俺に見せる。ナンバー交換しようって事だ。俺も端末を出し、赤外線で情報を交換した。
「シーナのタイミングでメールくれたらいいよ。
ほら、私のパーティーって年上ばっかじゃん。同年代でFRONTIERやってる友達いないからさ。
シーナと友達になれて嬉しいんだ。」
ミオの笑顔になんだか癒された気がした。
「うん、わかった。じゃあまた。」
駅の前に到着して手を振るミオの姿に応え、帝都に帰る電車に飛び乗った。
端末を開くと、
【ウィザード、トライアル失敗】の速報が流れていた。
イギリスの有力パーティーであるウィザードがR-SフィールドNo4【デッドタワー】に挑戦していたのだが、失敗に終わったようである。
これで当面、R-SフィールドNo1【虐殺の門】に挑戦できるのは、ヴァンダルハーツだけとなる。
世界で未だクリアされたことのないこのラストフィールドで、最初の名誉を勝ち取るのがヴァンダルハーツである可能性が高まる。
アキラは海外の有力プレイヤーにも声をかけ、準備を開始している。
残念ながら俺にできることはなにもないが、ただただ祈るだけだ。




