SLUM DOGS-1
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俺は一睡もできないまま朝を迎えた。ヒュウガに布団を占領されているからだ。酔い潰れたヒュウガを店から一番近い俺の部屋へと運んだ。そして大きなイビキを響かせるヒュウガを横目に端末をいじりながら朝日を待っていた。俺が最近使っているサイトはナイトメアというFRONTIERの情報交換の場で、大日本帝国人が運営している。やはり昨日のヴァンダルハーツのトライアルコンプリートに湧いていた。ヴァンダルハーツのスレッドの中には、【虐殺の門】への様々な考察や期待、野次、荒らしなどコメントが上げられていたが、それを見る限りヴァンダルハーツの人気が窺える。現在、大日本帝国唯一のS級パーティーへの憧れや嫉妬が垣間見れる内容だ。それを一通り覗き、ヒュウガを置いて朝飯を買いにコンビニへと向かった。
いくつか菓子パンを買い、コンビニから帰るとヒュウガが目を覚ましていた。
「よう、迷惑かけたな。」
すっかり酔いも醒めスッキリした顔のヒュウガ。俺は買ってきたパンを渡した。
「お前もFRONTIERプレイヤーだろ?」
ヒュウガの問いに
「ハイ」
と頷く。一気にパンを掻き込んだヒュウガは立ち上がり、
「一宿一飯の恩だ。お前にA級フィールドを見せてやる。」
と俺の腕を引っ張った。
A級フィールド!?
俺は初心者が踏むE級からC級を飛び越してB級で戦っている。それでも恵まれているのに、A級のステージを経験できるなんて最高だ。
しかし・・・、
「あの・・・俺レベル2なんですけど。」
A級なんてあまりにも早すぎる。俺の言葉に、
「知ってるよ。ヒデのパーティーに最近入った新人、エンドオブザワールドのパーティーページで確認した。
問題ないさ。それにB級よりも経験地を稼げるぜ?俺たちがフォローしてやる。
来いよ!」
ヒュウガが笑顔でさらに強く誘ってくる。
よし・・・!チャンスだ。
ここでの経験値はさらにレベルアップに繋がるだろう。
「それじゃあ、よろしくお願いします!」
頭を下げる俺に、
「ハルカの子供だからな。俺にも面倒みる責任がある。」
ヒュウガが意味深な言葉を吐いた。よく分からないが俺はヒュウガと共に部屋を出て、横浜のステーションへと向かった。
ヒュウガがヒデに電話をして、俺の招聘の許可を取った。ヒュウガは端末を俺に渡しそれを耳にあてる。
「シーナ、いい経験になる、がんばってこいよ。」
昨日、トライアルへリョウを送り出した時にメンバーで声をかけたが、ヒデはあの時のように俺を激励してくれる。
ヒデの言葉が嬉しく感じ、同時に気が引き締まる。俺の失態でヒデの顔に泥を塗ることになるからだ。横浜へ向かう電車の中で、ヒュウガが様々なミッションの話や、スラムドッグスの事を聞かせてくれた。
「リョウはいいな。素質が違う。アキラも狙っているみたいだが、うちにも欲しい。」
ヒュウガもリョウを絶賛している。俺はこの国を代表するプレイヤーたちから認められている我が師匠を誇りに思った。そんなヒュウガの言葉に俺は重要なことを思い出した。リョウに連絡しないといけない。今日の特訓の中止を告げなければならないのだ。
FRONTIERは1度ダイブしたら、帰還後20時間は再ダイブできない。脳への負担を考慮されてできた数少ない規制のひとつだ。今から横浜でダイブしたら、夕方にリョウとダイブできない。俺はすぐに端末を開き、リョウに長文のメールを送った。しばらくすると、
『了解。がんばってきなさい。』
と簡単な返事が送られてきた。俺は安心して端末をポケットにしまい、楽しそうに話すヒュウガの言葉に耳を傾けていた。ヒュウガの話は面白い。レイニーデイズの中でムードメーカーにあったに違いないヒュウガだが、その狙撃能力はこの国一だとリョウが言っていた。今日、この男からたくさん学んで帰ろう。俺は初招聘に期待を膨らませていた。




