VANDAL HEARTS -2
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新宿のステーションについた俺はロビーをうろうろしていた。奥へ進み天井にぶら下がるモニター群のエリアでタバコをくわえるアキラを見つけた。
「なんでお前がきてんだ?」
アキラが怪訝な顔で俺を睨む。
「そしてお前らもだ。」
俺の背後に向かってさらに言う。振り返るとヒデとダイキ、アサミといったエンドオブザワールドの面々が立っていた。
「いや…リョウの晴れ舞台だからな。」
ヒデが笑顔で答える。
「シーナの姿を見つけて3人でずっとつけてたのよ!」
アサミが楽しそうに言う。みんなもこの日を待っていたんだなと嬉しい気持ちになった。少し遅れて、
「こんにちは。」
と、ナギサが無表情で合流。
続いてリョウとハルカもやってきた。あとは、今日のビッグゲストであるヒュウガの到着を待つだけである。
「アイツは昔から時間にルーズだ。」
アキラがイライラを露にしていた。
「よう!みんな久しぶり!!」
突然、ボリュームが壊れたスピーカーのような大きな声がロビーを響かさせる。
「ヒュウガ…。変わらないわね。」
ハルカが感慨深そうに声を出す。
「遅い!!10分遅刻だ!!」
アキラの怒号に、軽く手を挙げ受け流すヒュウガ。高い身長はヒデと同じくらい。しかしその雰囲気はどっから見ても体育会系そのものである。
「よし!みんな気合いを入れて行くぞ!!」
遅刻したくせに一気に仕切り出すヒュウガ。
なるほど…これはアキラと合わないはずだ。本質的に系統が違う。このメンバーを束ねていたシュウの偉大さを痛感した。
俺は冷静に周りにいるメンバーを見渡した。これは凄い状況である。元レイニーデイズのメンバーが4人。大日本帝国で【虐殺の門】を経験している5人中の4人だ。それにナギサを加えてハイプレイヤーが5人。世界中のFRONTIERプレイヤーの1割にも満たないハイプレイヤーが5人もいる。周囲の人間はレイニーデイズの現実の姿を知らない。もしこの状況が知れわたれば、この場はパニック状態になるだろう。その輪の中に自分がいる状況に興奮が高まる。
「リョウ元気そうだな。なんだヒデ、今日は不参加か?」
ヒュウガが屈託のない顔で言う。
「リベロが二人もいるか!!」
答えるヒデも楽しそうだ。リョウは苦笑い。
「うるさい!!」
アキラがヒュウガに叫ぶ。その光景を見て微笑むハルカ。レイニーデイズはこんな雰囲気で毎回ミッションに望んでいたのか…。一番冷静なナギサが口を開く。
「で、今日はどのフィールドに入るの?」
ハッとしたアキラ。完全にヒュウガのペースに乗せられている。
「ちっ…。だからこのメンバーが揃うのは嫌なんだ…。今日はフィールドNO.3【絶望の橋】だ。とにかく迅速なコンプリートを心掛けろ。」
アキラの言葉にヒュウガが反応する。
「アチャ~!!【絶望の橋】か!?久しぶりのS級トライアルでまさかの【絶望の橋】!!お前のチョイスは絶妙だな~。」
「うるさい!!行くぞ!!」
アキラはうんざりした顔でヒュウガの腕を掴み歩いていった。
「リョウ。しっかりな。」
ヒデがリョウに声をかける。頷くリョウ。
「がんばれよリョウ。」とダイキ。
「リョウ、がんばれ~!!」
とアサミ。リョウの顔は引き締まっていた。
「リョウさん、信じてますよ。」
俺の言葉に、リョウは無言で俺の頭をグシャグシャと撫でた。
「私にはなにもないの?」
ハルカが俺に言う。膨れた顔をしているが、もちろんそれが冗談だとわかっている。
「ハルカさん、ナギサさん。俺の師匠をよろしくお願いします!!」
ハルカは頭を下げる俺の頭を、リョウ同様にグシャグシャ撫でる。ナギサは無言で頷いた。
「じゃあ行ってくるわ。」
ハルカの言葉にナギサも続き、戦場へ向かう5人の姿を見送った。




