THE END OF THE WORLD-1
2110年
中学の卒業式の後、仲間と電気街に遊びにきた。そして迷彩服を着た四人組にカツアゲをされた。仲間は一目散に逃げ、俺一人がボコボコにされ、有り金すべても奪われた。あの迷彩四人組はFRONTIERのプレイヤーでパーティーだ。お揃いの迷彩に『BLACK EMPEROR』の刺繍。よく組んだばかりの初心者パーティーがやるスタイルだ。鼻血を垂れ流し、顔を腫らした俺に、長身髭面ボサボサ頭の男が声を掛けてきた。明らかにさっきの迷彩パーティーよりも怖い風貌の男。
「もう…お金ありませんから!!」
俺は思わず叫んでいた。ヒデと名乗ったこの男は、俺の腕を掴み起き上がらせた。
「どこからきた?なにがあった?」
俺に現状を説明させるヒデと言う名の男。まさか私服の警察か?
俺はとりあえず事情を説明した。
「よしわかった。」
ヒデはそう言うと、後ろにいた仲間らしき男に、
「おいダイキ。ここまで車回せ。」
と指示を出した。ダイキと言われたメガネの男は、少し笑みを浮かべ軽く手を挙げその場を去った。金もなく、途方に暮れるしかなかった俺は、この素性もわからない胡散臭い男に従う他に術がなく、ダイキの運転するボコボコの軽自動車に乗った。
4ドアの後部座席で震える俺にお構いなく、ヒデとダイキは『今日のミッション』について語っていた。なぜこの人たちは町でボコられたガキを保護して送ってくれるのだろう?大きな疑問を思案しながら約40分のドライブが続いた。徐々に見慣れた風景が目に入り、無事に施設の前に車は止まった。安心した俺は急いで礼だけ言い車を降りようとしたが、ヒデが呼び止める。
「明日、俺の端末に連絡してこい。お前を襲った奴らを探して回収してやるからな。」
そう言うとヒデは端末ナンバーを紙切れに殴り書きして俺に渡した。
「ところでおまえ名前は?」
ヒデの問いに、
「椎名真琴です。」
と答え施設に飛び込んだ。
2
翌朝、施設の電話の前で俺は悩んでいた。ヒデの端末ナンバーの書いた紙切れを何度も確認しながら。だがその作業も20分程で、打ち切られた。
「お客さんだけど。」
職員が俺を呼びにきたのだ。今までこの施設に俺を訪ねてきた人間は、政府の福祉課と姉だけだ。
玄関に行くとロングの髪を真っ赤に染め上げ、タンクトップから出た肩に翼の生えた青い羽根のタトゥー、そしてボロボロのブラックジーンズをまとった若い女が立っていた。
「えっと、あなたは誰ですか?」
戸惑いを見せる俺に、その女は少し笑みを見せ、俺の手を引っ張った。
「私はアサミ。ヒデが待ってる。行こっ!」
女は甘ったるい声で言うと、さらに力を強めた。
「ヒデ!?」
焦る俺を女は容赦なくさらに引っ張っる。すると女の後方から一人の男が駆け寄ってきた。ダイキだった。
ダイキは女の手を掴み、少し強い口調で言った。
「おい!?アサミ!!手荒な事をしてはダメだ。ここは現実でFRONTIERじゃないんだぞ!」
だが目は笑っている。なるほど…この女もヒデの仲間か。俺はダイキの顔を疑視した。
「いや、驚かせてしまったね。」
ダイキは楽しそうに言う。黒縁メガネで黒い真ん中分けした髪型に優しそうなあっさり顔。
「早く支度をしてくれ。僕とアサミは車で待っているから。」
「支度ってどこへ!?」
「電気街さ。昨日キミからカツアゲした奴らを見つけた。今ヒデともう一人の仲間で張ってる。」
「そんな事言われても…」
躊躇する俺にダイキは少し厳しい視線を送った。
「悔しくないか?」
ダイキが放ったこの一言が、俺の感情に火をつけた。
「悔しいに決まってるじゃないですか!!」
俺は今まで感情を殺して生きてきた。戦争遺児はやっかまれる。悔しい思いや侮辱にまみれた差別にずっと我慢をしてきた。
俺の大きな声に、ダイキは再び笑顔に戻った。
「だったら取り戻しにいこう。キミが無くした金とプライドをね。」
ダイキの優しい声に俺は我に帰り、なにかを吹っ切れた感じが沸き上がった。
もうどうにでもなれ。
俺は部屋に戻り、身支度を整えダイキの車に乗った。
「帝都大学!?」
車の中でダイキの素性を知った。国立帝都大学の生物学部にいるのだと言う。帝都大学は、この大日本帝国一の天才大学であり、卒業生は必ず将来、その分野の要職が約束されている。
「これしか取り柄がなくてね。」
ダイキははにかんだが取り柄で帝都大学に行けるなら、それは才能でしかない。
なぜこんな男が電気街をうろうろしているのだろうか?そして赤毛のアサミはタバコをふかして音楽を聞いていた。イヤホンから漏れる音は、聞いたことのない英語の歌だった。




