UNDEAD -アンデッド--2
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学校が終わるとすぐに電気街へと電車で移動し、リョウと合流。ダイブしてレベルを上げる作業をする。
FRONTIERを始めてから1ヶ月半。すでに15回のミッション・コンプリートを経験した。そしてレベルは2になっていた。異例の早さである。実はこれにはカラクリがあった。普通のプレイヤーは、E級からスタートする。当然、一番下のランクである。しかし、俺はいきなりB級ステージでスタートして、ここでレベルを上げている。結論からいえば、獲られる経験値が何倍も違うのだ。地道に一番下から上がってくるプレイヤーとは違い、俺は所属したパーティーの力を借りて急速なレベルアップをしている。ヒデが俺にあたえたノルマである三ヶ月でレベル3とは、実は根拠のあるものであった。言い換えるなら『レベル3を達成できる』環境の中で試されているのだ。これでノルマを成し得なければ、素質がないって事だ。そしてリョウという実戦から学ばせる指導者を与える事が、急速に上げるレベルに『経験』を付加させる効果ももたらしていた。普通のプレイヤーは、一番下から上がる事によって『経験』を身につける。しかし俺には時間がない。パーティーとしてもフルパーティー体制を早く確立させたい事から、俺の1日も早いレベルアップを待っている。すべてヒデの思惑通りであった。自分でも成長を感じる事ができた。リロードもうまくできるようになったし、ミッションでもアサミの援護ポジションを任されている。なによりリョウから怒られる事が減った。すべてがうまく進んでいる。そう感じていた。
その日のミッションはR-BフィールドNO.10。ひたすら市街戦を進むこのフィールドはイーターが多い。俺はアサミの後方について、援護をしていた。しかし、このイーターの多さに欲を出した俺は、前衛の二人を追い抜かして先頭に出て乱射していた。
『シーナ!!下がりなさい!!』
リョウの声がインカムから聞こえてくるが、必死だった俺の意識には届かなかった。早くレベルを上げたい焦り。これが俺の失敗だろう。フィールドチェンジ手前で油断した俺は、複数のイーターに囲まれた。ダガーナイフで何度も刺され、その後ライフルで蜂の巣にされリタイア。ブースで目が覚めた俺は、リアルダメージがひどく全身激痛に襲われていた。FRONTIERは元々は軍事訓練システムであり、致命傷でなければリタイアできない。だから俺のように近距離で囲まれた時、リンチのようになぶり殺される。この場合、リアルダメージは、受けたダメージをすべて現実に持って帰るわけだから想像を絶する痛みが襲うのだ。なんとか体を起き上がらせ、足を引きずりながらブースを出た俺は、ステーションの一階ロビーで皆の帰還を待っていた。
エンドオブザワールドの待ち合わせ場所である喫煙ルームの前で、俺はへたり座っていた。しばらくするとアサミが俺に駆け寄ってきた。
「シーナ!!大丈夫?」
俺の事を本当に心配してくれているのが凄く伝わってきた。
「ごめん…本当にごめん。ミッションは?」
目を合わせることすらできない俺は、謝ることしかできなかった。
「うん。コンプリートしたよ。」
アサミの言葉に少し安心した。俺のせいでミッションすら失敗してしまったら、それこそ合わせる顔がない。アサミが手をかしてくれ、俺は立ち上がった。次の瞬間、鬼のような表情をしたリョウが俺をにらみつけながら近づいてくるのが目にはいった。これは殴られる…。覚悟した俺の前に立ったリョウは、
「あんた…クビ。」
と一言残しステーションの出口へと向かっていった。呆然とする俺と、あわてるアサミ。俺は足から砕けて、再びその場に座り込んだ。
「おお~シーナ~。派手に殺られたな~大丈夫か~?」
ヒデとダイキも帰還してきて、俺を立ち上がらせ、周りを見回した。
「リョウは?」
ダイキがアサミに聞く。アサミは一連の出来事を二人に話した。
「リョウ、退路ルートで、だいぶキレてたからね。」
ダイキも困った顔をしていた。
「本当にすいません…。」
謝ることしかできない俺に、
「大丈夫だよ。明日にはケロッとしてるさ。」
俺はヒデの言葉に少し安心した。その後、スタバへ場所を移す。今日のダメ出しは、俺の失態も含めたものであった。
「シーナも反省しているさ。」
ダイキのフォローにアサミが何度も頷く。
「別に責めちゃいないさ。あれぐらいアグレッシヴな方がいいとも思っている。シーナは控えめだからもっと攻めてもいいともね。」
ヒデはいつもの調子で話し始めた。
「でもな、今後のパーティー構成を考えるとやはりリョウとアサミのツートップがベストだ。シーナには前衛と後衛の中間で走り回ってもらわねばならない。スキッパーってポジションだ。シーナが前衛2人を上手に前へと誘導できるぐらいになって欲しいんだよ。ダイキは本当はもっと後ろのボランチの位置が適している。そのためには、やはりシーナは今の援護ポジションに徹底してもらわねばならん。そこで前衛にスペースを作り誘導してくれ。まぁ、すぐにじゃない。徐々に成長してくれ。な、シーナ。」
ヒデの言葉に俺は大きく頷いた。アサミの援護をしながら感じていたのだが、この役回りはとても俺向きである。アサミの意思を尊重しつつ、アタックできるスペースを見つけたらそちらにアサミを誘導したこともあった。実は1度リョウにも試したことがあり、そのときも俺の連射であけたスペースにリョウを進ませることができた。
スキッパー・・・。うん。このポジションを極めよう!俺の中の価値観がまた変化した。
ダメだしも終わり、俺は店へと急いだ。リョウの事は気がかりだったが、急がなくてはいけない理由があった。最近、ミッション続きで開店準備をハルカとナギサに押し付けてしまっている。今日は平日だからハルカ一人で仕込みをしているはず。(ナギサは専門学生だから平日は開店間際の出勤となる。)ハルカは
「気にせず自分の時間を大切にしなさい」
と言ってはくれているが、そんな訳にはいかない。拾ってくれた恩返しがしたかった。やれることはすべてやる!これは俺が施設を出たときに自分に決めたルールだ。
今日はだいぶ早く店に着きそうだから、ハルカには休憩してもらおう。そう思いながら店の扉を開いた。しかし思いもがけない光景が俺の視界に入ってきた。
「姉さん・・・。」
俺の姉 椎名 真冬 がカウンターに座り、ハルカと談笑していたのだ。




