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【40万PV達成❤️】絶望のFRONTIER  作者: 泉水遊馬
帝国最強の女
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帝国最強の女-5

「今日はワントップ(リョウ)、ダブルスナイパー(ヒデ、ダイキ)、ワンリベロ(ハルカ)でいく。シーナはハルカについてろ。」

ヒデの指示で、リョウが前衛に走り、ダイキがMG42を構える。ヒデもM1ガーランドを準備し、態勢を整えた。

「久しぶりのB級フィールドだわ。あなたは初めてのミッションフィールドでしょ?アバターSなのに後方って物足りなくない?」

ハルカはSRS99Dを右手に持ち、俺に問い掛けた。確かに俺のアバターサイズでこのポジションは有り得ない。もちろん俺自身はこのフィールドではミスキャスト以外何者でもなく、役不足甚だしい存在である。アバターSはスピード重視のアタック専門ポジションであるが、レベル1の俺はアバターLのヒデやハルカにも劣る。本来E級のプレイヤーである俺がハイプレイヤーのハルカと同じフィールドに並んで立っている事が奇跡なのだ。

「よし…ミッション開始だ!!」

ヒデの合図でダイキが連射を始め、リョウが動き出す。その直後、ハルカが俺の背中を押した。弾かれるように俺は前線へと走った。無意識の中、ダイキとヒデを追い越し、リョウ位置まで一気に出て、物陰に身を寄せた。

『ちょっと…!?勝手なことしないで!!』

リョウの怒号がインカムから聞こえてきた。

「いや…ハルカさんに押されて…」

俺の言い訳だ。これは半分本当で半分は嘘だ。後ろのポジションでハイプレイヤーの影に隠れてただ見ているだけでは自分が参加している意味はない。例えリタイアしたとしても自分のアバターSらしく前線で戦いたかった。そのジレンマの中、ハルカの後押しが、俺の背中だけではなく心まで前線に放ってくれた。

「とにかく下がって!!邪魔よ!!」

リョウの怒りにあふれた声に、俺は戸惑ったが直後にヒデの声がインカムから聞こえてきた。

『シーナ!その位置でリョウの援護!常にリョウの2メートル後ろにつけ!』

ヒデが俺の前線参加を認めてくれた指示だった。

「後でおぼえてなさい…」

リョウの声にビビりながら俺は迫るイーターに連射を放った。

R-BフィールドNO26は海岸沿いから内陸へと目指すルートが特徴のフィールドで、ノルマンディー上陸作戦を連想させる。俺はリョウの後ろにつき、連射をしながらイーターを倒していた。ミッションでは後方との連携が重要で、ダイキとヒデに呼吸を合わせてじっくり前へと進攻していく。リョウは自慢のスピードを武器に巧みに敵を引き付けルートを開き後方を誘導していく。

凄い…!!

ダイキが言っていた通り、リョウの動きは天才的だ。繊細な銃さばきでありながら、大胆に切り込んでいく強引さに思わず見とれてしまう。下位フィールドのイーターと違い、B級フィールドのイーターは強い。しかしリョウのアタックにダイキの巧みな援護射撃で海岸沿いから内地へと難無く侵入した俺達は、ジャングルへとフィールドチェンジした。この先にフラッグがあるのだが、リョウが動かずに俺もそれに従って立ち止まった。

『前のパーティーがまだフィールドチェンジしてないわ。ここで待機よ。』

リョウの言葉で一同身を潜めた。

「いつもはこんなに混雑するフィールドではないんだけどな。」

ダイキが俺に近づき言った。ダイキが言うには、このフィールドNO26はエンドオブザワールドがよく使うフィールドらしい。フィールドの広さがあまり大きくないため短時間でコンプリートでき、ダイブできるパーティー上限数も10パーティーと少なく時間帯を選べばスムーズに進む事ができる。経験値を稼げるイーターの数は他のフィールドに比べ少なめだがミッション・コンプリート時のボーナスを最大の目的とするならば使いやすいフィールドと言える。慣れているフィールドのため、海岸沿いの攻略をスムーズに行った事が納得できた。

「とにかくイーターを見たら撃ちまくれ。経験値をできるだけ稼いでおけよ。」

ヒデが俺に言った。そうだ…俺は自分の経験値だけでレベルを上げなくてはならない。っていう事はイーターを数多く倒さなくては経験値が獲られないのだ。

「ヒデ、あんたのパーティーいいメンバーよ。リョウの突破力にダイキの命中率の高さ、アサミちゃんもいい動きだし、新人くんも素質あるじゃない。あんた今楽しいでしょ?うらやましいわ…。」

ハルカがヒデに感慨深げに言った。有名なハイプレイヤーのひとりであるハルカの言葉に俺はテンションが上がった。我が国のFRONTIERの歴史で最強のパーティーと語り継がれているレイニーデイズと現在現役最強のヴァンダルハーツで名リベロとして活躍しているハルカに『素質』があると言われたのだ。ただリョウの後ろで無駄に乱射していた俺の何を見て素質を見たのかわからなかったが、一流の人に評価された事が純粋に嬉しかった。

「前のコリアンがなかなか進まないわね。追い抜く?」

突然ハルカがヒデに提案した。このジャングルを約200メートル先に行くとフラッグステージへとフィールドチェンジできる。フィールドチェンジ直前でコリアンパーティーが手間取っている様子である。

「あそこはガトリング部隊がいるから初見のパーティーは必ず足踏みするんだよ。」

ダイキの説明で初心者の俺にもこの先のフィールドが見えてきた。フラッグ前の最後の難関としてガトリングを撃ちまくる部隊が立ちはだかり、そこを越える事でフラッグへとたどり着ける。すなわちコリアンパーティーを追い越すって事は、ガトリング部隊を俺達が先に攻略するって事に他ならない。これはコリアンパーティーも一緒にフラッグステージへとフィールドチェンジする事を意味している。フィールドに点在する各難関は、攻略すると一定時間機能を停止する。この間に通過するわけだから、俺達が攻略すればその場にいる他のパーティーも一緒に抜ける事ができるのだ。しかし一緒に抜けフラッグへ到達してもコリアンパーティーと共闘する訳ではない。複数のパーティーが同時にダイブしているフィールドであっても、フラッグだけは1パーティーVSフラッグとなり、フラッグステージは別々にフィールドチェンジするようにシステムされている。


実際、この前のパーティーを追い越すという状況はけっして珍しくはない。複数のパーティーが難所に存在した場合、その場の一番レベルの高いパーティーが前に押し出されるのだ。これは意図的に下位のパーティーが身を引く状況もあれば、今の俺達のように痺れを切らして前に強引に出る場合と二通りある。この暗黙の状況判断を意識できるパーティーと、できないパーティーの差がキャリアであり、前者はその状況を利用して有利にミッションを進める武器にもなるが、逆に後者はその場の全パーティーへ悪影響を及ぼし兼ねない。決断を誤ると思いもがけない結果を迎える事になるのだ。そして今前方で苦戦しているコリアンパーティーは後者である可能性が高い。逆に追い越して背中を見せたが最後、プレイヤーキルにあうかもしれない。ガトリング部隊のように難所のイーターは経験値が高いのだ。その経験値を見逃すわけがない。このまま待機して前が空くのを待つか、経験値を獲るために突入するか。ヒデの言葉を待った。

少しの沈黙の後、ヒデは

「行こう。」

と小さく呟いた。なんだか躊躇が混じるその声に俺は違和感を覚えたが、その直後にインカムが壊れるぐらいの大きな声で指示が飛んだ。

『リョウとダイキがアタック(突破)しろ!俺は援護に回る!シーナはリョウから離れずとにかく前に撃って進め!今後も使うフィールドだから身体に叩き込め!慣れたミッションだからって気を抜くな。リタイアは許さん!いいな!』

ヒデの激に各自が動きを開始した。左右に別れたリョウとダイキ。俺は凄いスピードでジャングルを駆け進むリョウに必死でついていく。とにかくイーターが現れたら撃ちまくり進路をこじ開ける。俺の位置は右翼攻めのリョウと左翼攻めのダイキから10メートルぐらい後方で、二人の中間を狙って撃ち進む。気をつけるのは前にいるリョウやダイキに俺の弾が当たらない事。もししくじったら現実世界でリョウに殺されかねない。さらに俺の後方からはヒデが針の穴を通す程の精度でガーランドを撃ち放ち、ピンポイントでイーターを狙撃している。時間にして5分。ジャングルを駆け抜けた俺達の前に小さな橋が現れた。そこでは橋の対岸にいるガトリング部隊と、橋を渡れないコリアンパーティーとの激しい銃撃戦が繰り広げられていた。

別々の物陰に一旦身を隠した俺達は、ヒデのゴーサインを待っていた。橋の対岸では七機のガトリングが激しい機械音と乱射音を発しながらコリアンパーティー目掛けて放たれている。対するコリアンパーティーは物陰からアサルトライフルで応戦。だがよく見ると三人しか確認できない。突然、俺は背後に気配を感じ振り向くとダイキだった。

「なかなかいい動きだよシーナ。この一週間リョウのシゴキに耐えただけあるな。」

ダイキの言葉は俺にとってすごく嬉しいものだった。初めてのミッションで緊張していたが、ダイキと言う存在が援護をしてくれているという事だけで安心して前だけ見て進攻してこれたのだ。おそらく普段はダイキに噛み付くリョウも、この安心感の中で自由に攻め上がる事ができているのだろう。戦場で後ろを任せると言う事は信頼できる人間以外に成立しないのだ。

『ダイキ!あんまりお世辞を言わないで!調子に乗られると困るわ。たまに連射が不自然に止まるのはちゃんとリロードできてないからでしょ?本当にヘタクソなんだから!!』

インカムからリョウの悪態が聞こえてきたが、俺はこの先のフラッグとの初対面にテンションが上がっていた。俺の心の中でFRONTIERを楽しみ始めていたのだ。

ふと気づくとガトリング部隊の乱射音が消えていた。コリアンパーティーがいないのだ。撤退したのか?そんな疑問が浮かんだ瞬間、ヒデの号令が飛んだ。

『アタックだ!!』

挿絵(By みてみん)

まずリョウが連射をしてコリアンパーティーがいた物陰まで前進した。

「ついてこい!!」

ダイキが飛び出し、俺はそれに続いた。ダイキと俺は連射をしながら一気にガトリング部隊に一番近い物陰に入り一息入れた。

「リョウがアタックをかける、俺達は援護だ。いいかシーナ、ガトリングを狙うんじゃなくてそれを操るイーターを狙うんだ。」

ダイキの言葉に俺は頷きリロードを済ませた。ここからが早かった。ダイキと俺の連射にガトリング部隊のイーターは身を隠し撃つのを止めた。その間にリョウが素早く橋を渡りガトリング部隊の後方に回った。M16を腰にしまい、背中からニホントウを抜いてイーターを三体斬った。残りの四体はヒデの狙撃で消滅。辺りは静寂となった。

「いつもはアサミとリョウでアタックをかけるからもっとスムーズにいくんだよ」

ダイキの優しい声に俺は、ひとつの難関をクリアした安堵感が込み上げた。


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