帝国最強の女-2
FRONTIER
概要
第三次世界大戦の終戦後に世界15ヶ国で普及した仮想現実オンラインゲーム。大戦中、アメリカのコンピュータ開発のトップ企業マイクロシステム社が、政府から依頼された兵士育成プログラムを改良したものがFRONTIERの発端とされる。仮想世界の中で、あたかも現実の世界で戦争を繰り広げているようなリアルさが若者の間で大流行し、2117年現在、世界中で300万人のプレイヤーが登録をしている。
兵士育成プログラム
第三次世界大戦で、兵士の育成や作戦の組み立てを目的として、アメリカ政府が計画したのが兵士育成プログラムである。仮想世界へ兵士をダイブ(接続)させ、現実さながらの戦場で実際のミッションを行わせ訓練させる。仮想世界内は現実の戦場の地形や市街が忠実に再現されていて、当時アメリカ軍が採用していた実際の武器や兵器を操る事ができた。このプログラムを開発したのがマイクロシステム社。
150年前からコンピュータ分野で世界のトップに君臨し、アメリカを代表する大企業である。元々戦前から、マイクロシステム社が開発を進めていた仮想世界コミュニティをコンセプトとする『アナザーワールド・プロジェクト』が基礎となっており、政府の金銭的な支援はもちろん、世界中のあらゆる戦場データの提供が開発のスピードを早め運用まで到る事に成功した。
この米政府の介入により、マイクロシステム社は多数の兵士をダイブさせ、膨大なサンプルを取り、徐々に脳へのシンクロ率を高めていく。この兵士育成プログラムの最大の特徴は痛みを現実に持ち帰ると言う点である。
リアルダメージ
ダイブした兵士たちは仮想の戦場で、あらかじめ用意されたミッションを能えられ、本物の戦場さながらに戦闘を行う。戦場にはCGで作られた敵兵が、兵士達のミッションの邪魔をする。敵兵も様々な武器を装備しており、難易度の高いミッションではリタイアする者も多数でる。リタイアとは敵兵に撃たれて死ぬ事の意味であるが、もちろん仮想世界ではリタイアした兵士は現実へ強制的に帰還させられる。このリタイア時、敵兵の弾が体に命中した時の痛みがまさに本物そっくりの激痛なのだ。その痛みは一瞬で、すぐに現実世界で目を覚ますのだが、目を覚まして更に驚く。撃たれた箇所が青くアザになり、自分がどこを撃たれたのかハッキリ分かるのだ。痛みを感じた脳が体に指示を出し、仮想世界の痛みを現実世界へ持ち帰えらせるのである。このシステムは兵士達に様々な効果をもたらした。仮想世界の訓練だからといって、手を抜いたり適当にミッションに望む者がいなくなったのである。現実に近い痛みを、例え一瞬でも味わう事の辛さを意識と体に染み込ませたのだ。本番さながらの緊張感の中、兵士育成プログラムで訓練された米兵は本当の戦場でも大活躍を見せ、アメリカが支持した韓国側の勝利に大きく貢献した。
終戦後~FRONTIERへ
アメリカ政府のシステム権利をマイクロシステム社が買い取り、待望の商品化へと一気に加速。従来の計画であったアナザーワールドのコミュニティというコンセプトは消滅し、戦争をテーマとした仮想現実オンラインゲームとして計画が見直される事となる。これはアメリカ政府がマイクロシステム社に戦中に提供された膨大な戦場データやシステムをそのまま使い回す事でコストを抑える目的にあった。商品化に必要不可欠な端末接続場を連合各国の主要都市に建設することに莫大な費用が発生。後にステーションと呼ばれる端末接続場はこうして誕生した。そしてFRONTIERと命名され世界中でダイブされるヒット商品へと成長していった。
FRONTIERの問題点
運用を始めてプレイヤー数を順調に伸ばしていったFRONTIERだが、様々な問題点が浮き彫りになった。特に重要課題とされているのが、アンデッド問題である。
アンデッドは社会問題にもなっている事例。ダイブしたプレイヤーが目を覚まさず植物人間状態になってしまう大事故が世界中で起こっている。これは上位レベルのプレイヤーに限り確認されており、システム上に問題があるのではないかと調査が進められているが、今だに明確な原因は解明されてはいない。事態を重く見たマイクロシステム社は、各国に自営のホスピスを開き、アンデッド者を受け入れ治療を行っているが、目を覚ましたプレイヤーはいない。
(上記の問題で世界中のFRONTIERの運営に規制が入らないのは、マイクロシステム社の最大の後ろ盾であるアメリカ政府の圧力があるとも言われている。)
俺は携帯端末の画面に並ぶ文字をじっくり読み進めた。元々は軍事訓練用のシステムであったFRONTIER。本物の戦場データを基盤にプログラムされているフィールド。まさにリアルを体で感じるこのゲーム。しかし俺が疑問に思ったゲームの概念はまったく的外れである事がわかった。これはもうゲームなんて時限じゃない。戦争の擬似体験なのだ。いや…もしかすると『違う人生の擬似体験』なのかもしれない。こう考えると旧名アナザーワールドに納得してしまう。体はアバターでも脳は自分のもの。現実世界の臆病者は、仮想世界でも臆病者なのだ。そう考えるとダイキのような奉仕的なプレイヤーの存在にも納得できる。このFRONTIERはプレイヤーの人間性にも大きく関係してくるからだ。現実世界となんら変わらない。FRONTIERのフィールドで駆け回るアバター達は、人間そのものなのだ。個々に人生があり、アバターの数だけ今日まで生きてきた物語が存在している。俺は携帯端末を閉じポケットにしまった。自分はこのFRONTIERでどんな人生を作るのだろうか…。そんな事を思いながら施設へと帰路についた。




