13 イチサン
上崎君は、その後「この会社の役にたつことが正義なのだ」と言い切り、早々にこの会社にずっと仕えることを館長に誓いました。
館長は手を叩いて喜び、いつか彼にすてきな番号をあげることを約束しました。
私たちは、一緒に登校し、一緒に仕事をする、という、さほど変わらない生活を、今も送っています。
月に一度、イチサンのお墓に行くのが、私の習慣になっています。上崎君は行くのを拒みましたが、行けない代わりにと、なぜか毎回私にプレゼントをくれるようになりました。そのため、イチサンの月命日は、上崎君が私にプレゼントをくれる日になってしまいました。
相変わらずつきあっているんでしょうの攻撃は避けられませんでしたが、私たちの関係はどんどんよく分からないものになっているのは間違いありませんでした。それでいいよね、と私たちは日々笑いあっています。
私はよく、イチサンの夢を見ます。それはいつでも、カフェで向かいあって話している夢なのです。その会話があまりにもとりとめのない会話なので、最近では本当に、夢の中に出てきて私を見守ってくれているのではないかと思うようになりました。
夢の最後に、イチサンはいつも言うのです。
「私を忘れないでくださいね。それはつまり、死を忘れないことに繋がります」
私が「メメント・モリですね」と返すと、彼は嬉しそうに頷き、ではまたと言って席を立つのです。
イチサンの背中を見つめながら、私は今日も目を覚ましました。
窓の外に、飛行機雲が見えました。なんだか、幸せな気分です。
私は枕元に置いてある、血に濡れた仮面にキスをしました。
「おはようございます、イチサン」
血がきらりと光り、まるで返事をされたような気持になって、私は嬉しくなりました。
End.
あとがき
「ただの終わりのひとつ」を読んでいただき、本当にありがとうございました。 筆者の村咲アリミエと申します。
ただただ、感謝の気持ちでいっぱいです。
読んでいただかなければ、私の作品はただの文字の羅列です。本当にありがとうございました。
読んでよかったと思っていただけたのなら、これ以上の幸せはございません。
またどこかでお会いできましたら、そのときはどうぞ、よろしくお願い致します。
2月某日 村咲アリミエ
ヨーちゃんのさらなる幸せを祈って。




