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9 「君は彼を監視下に置いておきたかった」

「彼は今、とりつかれたように犯罪資料室を漁っています。そんな彼に一度、殺しとはどういうものかを、目で見てほしくて」

「それは君の正義のためだね、そうだろう。というかそもそも、彼を黒路映画館にいれたのも、君の正義があったからだ」

 言われ、私は正直に頷きました


「君は彼を監視下に置いておきたかった」

「そのとおりです」

 ふふ、と館長は笑いました。


「いいね、そういうの、大好きだよ」

 館長は独り言のようにそう言うと、仮面を左右に二三度、静かに揺らしました。


「提案だが、十三番さんと一緒の仕事でも構わないかな?」

「仕事があるんですか」

「偶然だけど、さっき入った仕事だ。おそらく十三番さんの正義対象だ」


 それは素晴らしい、と私は思いました。イチサンの正義の対象者は、イチサンを恨んでいる人です。人を恨んでいるときに、本人はどうなっているかを気がつくことができません。


 私もそうでした。そうです、そうなのです、上崎君を見ていると、私もこうだったのかしら、と思ってしまうのです。そうして、少しだけ寂しくなるのです。


 イチサンと共に行動すれば、人を恨んでいるとはどういうことかを客観的に見ることができるかもしれませんし、加えて人を殺すところを見ることもできるのです。さらには、万一上崎君が取り乱してしまった場合、ベテランのイチサンが彼をなだめてくれるでしょう。私も安心です。


「是非、同行させてください」

「分かった、手配しておくよ。しかし、あれだね」

 ふふ、ともう一度、館長は笑いました。


「二十番さん、取り乱してくれるといいね」

 私の心を読まれたような発言に、私はぎくりとしてしまいました。


「……人を殺すのは、楽しいことではありませんから」

「楽しい人もいるけどね」

「二十番が、そうでないことを祈っています」


 確かに、ふふ、と館長は言うと、じゃあと手をあげました。ありがとうございましたと深々と礼をし、私はその部屋を出ました。



 次の日、さっそく私たち三人は、一緒に仕事をすることになりました。上崎君と共に広間に行くと、イチサンはいつものように先に着き、暖炉の前で本を読んでいました。


 イチサンの口元には相変わらずうっすらとした笑みが浮かんでいましたが、対照的に上崎君はげっそりと口角を下げていました。


「体調平気?」

「精神は元気だけど身体がついていかないんだよね……参った。睡眠時間がもったいないよ」

「睡眠時間も大切な時間でしょ」

「そうだけど」


 私たちの話声に気がついたようで、イチサンは本を置くと、私たちに向かって手を振りました。私たちは同時に、軽く頭を下げて挨拶をしました。


「今日はよろしく」

 イチサンはまず、上崎君に手を伸ばしました。上崎君はしっかりときりかえ、真面目な表情で頷きました。


「共に仕事をするために、私の正義について話します」

 イチサンは言って、静かに上崎君の手を離しました。


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