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8 仕事内容:クイズ


 出社し、伝達室に行くと、さっそく私たちの仕事が入っていました。


 六時ちょうど、館長室に二人で赴きます。

「いやあ、君たち、随分と有名人になったみたいじゃないか」


 館長の声は、随分と中世的な声でした。男性のような、女性のような、ハスキーな声です。にゃはは、と笑う館長に、私はどうも、という返事しかできませんでした。


「今日の仕事は、ま、腕試しだから。楽しんでやってみてちょーだい」


 館長は言います。奥から現れたいつもの女性から、私たちは紙を受けとりました。受け取り、目を通し、思わず眉をひそめて上崎君を見ると、彼も同じような表情でこちらを向いていました。


「仕事内容、クイズって……」

 私が言うと、はっはっはと館長は大げさなほどの笑い声をあげました。


「面白いでしょ? 最初からハードな仕事はどうかなーと思ったからさ。ま、二人で頑張って解いてみてよ。クイズの内容は、一度しか言わないからよく聞いてね」


 館長が、静かに足を組みます。


「黒路映画館は、どうして黒路映画館っていうんでしょうか」


 あっはっは、とまたも大げさな笑いです。私はますます顔をしかめてしまいました。

「黒路映画館という、理由?」

「そうそう。報酬はそこに書いてある通りだからね。明日の二十四時までに分かったら、君たちの仕事は成功ってことで。はいはい、退出退出」

「えっ、ちょっ」


 私が戸惑うのをよそに、上崎君は素直にぺこりと頭を下げました。

「初仕事、精いっぱいやらせていただきます。では。失礼します」


 その後、広間で私たちはもう一度渡された紙を読みました。


仕事内容:クイズ

期日:明日の二十四時まで

条件:二十番が使用できる施設のみ使用可能


 ここまでは、二人とも同じです。この後に書かれているのは報酬のみでした。私には、報酬としてお金が支払われることになっていました。


 上崎君は、報酬に選択肢がふたつありました。

 ひとつは私と同様、お金を貰えるというものでした。

 もうひとつは、犯罪資料庫の使用許可ポイント加算、と書かれていました。その文字を指し「どういうこと」と上崎君が訊ねます。


「二十番は、今、使用できる施設が限られているんだ。情報をほしい、と君はいったでしょ。そう願う人は多いの。図書館は誰でも使えるんだけど、犯罪資料庫みたいな施設は、たくさんの資金と労力をかけて作りだされた場所だから、それに見合った仕事をこなさないといけない」


「なるほど。それで、ポイントを貯めていく、ってことね」

「そゆこと。仕事の難易度によってポイントが異なるけど、館長のさじ加減だから、交渉すれば多くもらえることもあるよ」

「四番は、犯罪資料庫に入れるの」

「入れるよ」

「俺の探している情報、探してくれないって頼んだら?」

「やだ、勝手に探して」


 私の返答に、上崎君は先ほどの館長のような笑い声をあげました。

「何よ」

「最高、あーおもしろ」


 何が面白いのでしょう。失礼な人だな、と私は思いました。しかし、あまりに彼が楽しそうに笑うので、なんだか私も楽しくなってしまい、ふたりでころころと笑っていました。


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